「子供服のショップからお誕生日プレゼントをあげるってハガキがきてるから」 「今日は吉祥寺」 「りんごのスクール水着も買わなきゃなんないし」
はー,そうですか。 で,アナタ,僕にその計画を話す前に下のムスメに言いましたね。 もうすっかりその気じゃないですか。 僕は今日1日ゆっくり…。 そうだ。ここは出不精の上のムスメを利用させていただこう。 ムスメよ,おとうさんといっしょにお留守番…
「お昼はまぐろ人だって。ぐふふ」
しまった。こっちにも手が回っていたのか。
「まーまー,天気もそこそこだし,井の頭公園の動物園にでも」 「平日だし,すいてるよー」
動物園か。 たしかにすいているかもしれないな。 公園もしばらく行ってないしな。 動物園か…。 よし,ここは思い切って出かけるとするか。
公園に行くとなると車は無理ですね。バスで行きましょう。
「えっ?バス…」
あからさまに士気が下がる妻。 しかし,時すでに遅し,だ。 ムスメ達はもうすっかりその気ですからね。 自分の術中にはまったな。わはは。
と,いろいろありながらも吉祥寺へ。 バスの中で, 「アナタはいちごと公園ね。私はりんご連れてまず買い物」
下のムスメの受け持ち…。 ま,まあいいでしょう。町中で買い物するよりはましだ。
妻達はひとつ手前のバス停で降り,僕たちは駅から公園へと向かう。 早速携帯がなる。
「ちょっとお,3回目なんだけど。なんでさっさと出ないのよ」 「なんのための携帯かわからないわよねえ」
そ,それはすみませんねえ。で,ご用件は。
「アンタがカード持ってっちゃったから,りんごの水着が割引にならないんだよ」 「カード取りに行こうと思ったのに,もう公園につくくらいでしょ」
それは申し訳ない。
「もういいよ。あとで私が1人で行けばいいんでしょ」 「仕方ないなあ。1人で行かないとなあ」
なんかイヤな予感がする…。
が,気を取り直して,公園から動物園に向かう。 外だと下のムスメも機嫌がよくてかわいいなあ。 しかし…。
動物園は休みだった…。
妻に電話をする。
出ない。
再度挑戦。
出ない。
3度目。
「もしもしい」
上のムスメの間の抜けた声。 さっきの仕返しか?
一応ムスメに事情を説明した。 折り返し電話。 まず昼を食べることになった。
待ち合わせは,そうですね。 下のムスメを連れているから15分くらいかかるので, 11時10分に店の前で。
しかし,待ち合わせ時間に妻は現れない。 何をしているんだ。 ま,まあ,もう少し待つか。
…来ない。
電話。 どこにいらっしゃるんでしょうか。
「えー,待ち合わせって15分じゃなかったっけ」
人の話を何も聞いてないな。 15分かかるから,待ち合わせは11時10分だっ。 そして今はもう13分だっ。
「3分…。けちくさい…」
なにをっ。 い,いやいやここで怒ってはいけない。 それでは短気な男と言われてしまう。 僕は穏やかで温厚なのだから。
昼食後は,妻が買い物,僕はムスメ2人を連れてふたたび公園へ。
「用事だけすますからー。りんごの水着だけだからー」
はいはい。とっとと行ってとっとと公園に来てくださいね。
「大丈夫ー。もうやりたいことないしー」
はいはい。拝聴いたしました。
しかし,公園でムスメ達が狂ったように鯉にえさをやってやってやりつくしても, 妻は現れない。 とうとうムスメ達は,ボートに乗りたいと言い出した。
妻に電話。
「えっとお,りんごのファイルがいるのを思い出して」 「でも,もうこれで用事は終わりだから」
はいはい。でも,今からボートに乗るので30分くらいは別に構いませんよ。
「うん,でももうやりたいことないから」
ほほお。
しかし,妻が現れたのはまさにボートから降りる頃だった。 しかも,なぜか手荷物満載だ。 いったいその姿は…。
「んー?りんごの水着と,りんごのファイルと…ごにょごにょ」
ごにょごにょってアナタ。
まあいい。 妻をここで野放しにしたら,こうなるのはわかっていたことだ。 想定の範囲内だ。 僕がどうしても許せないのは,その袋の数だ。 なぜ袋を断らない? なぜ1つ1つ別の袋に入っているんだ。 それがどうしても許せん!
しかも帰宅してからそのたくさんの袋をしばってしまっていたら,
「あっ。そのしまい方やめてよっ」 「こうやってちゃんと折ってからしまわないとかさばるんだからっ」
ってアナタ,そんなとこだけ妙に細かい…。
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