その日は朝から妻がうるさかった。
「今日は忙しいんだよー」 「まず車屋によっておかあさんの分の携帯受け取ってお金はらって届けて〜」 「絵付けの生地を仕入れてから、美容院に行って〜」 「また車屋によって今度は自分の携帯をピックアップさ」
んー。 なんだかなんでそんな無駄の多そうなスケジュールなんでしょうか。 ムリに今日携帯を受け取らなくてもよいのでは。
「えー。だってここまで何日待ったと思ってんの」 「手際が悪いのは車屋だよっ」
まー、そうとも言えなくもないですが、 手に入るからといってムリムリ今日すぐ今!というアナタの姿勢にも問題が。
そして、結局このムリなスケジュールで人に迷惑をかける妻。
まずは、行ってみたら携帯の用意ができていなかったらしい。
「ちゃんとできてるっていうから行ったのにっ」
まー、これはアナタだけの責任ではありませんね。 仕事としてそれはいかがなものか。 結局車屋がお義母さんの家に届けることで決着したらしいが、 実際にはお義父さんが取りに行ったらしい。 そのへんのいきさつはよくわからない。 なにせ、妻の実家の人々は、この妻と血のつながりのある人たちですから。 ミラクルなんですよ。
「そいでさっ」 「私の取りに来てんだけど、データの移すのに半端じゃなく時間がかかってるのよ」
そう聞いたのは、いつもの最寄り駅とは違うほうの駅についた、とメールした直後。
「りんごの迎えに間に合わないから、行ってくれる?」
いやー、ここから歩いて家にもどって迎えに行くんですよ? 間に合わないでしょう。 アナタのほうが近いじゃないですか。 さすがの僕もむっとして答えると、
「あ、そう」 「じゃなんとかするからいい」
と電話は切れた。 しかし、不安だ。なんとかってどうするんだ。
急いで家に帰ると、妻が戻った気配はない。 そのまま自転車で上のムスメを迎えに行く。 暗い道を自転車すっ飛ばして走る。 相変わらずぼーっとしているムスメの姿を確認してほっとしたところに、 ムスメの携帯に妻から着信。
「んー?おとうさん、もう来てるしぃー」 とムスメ。
おかあさん、なんだって?
「お父さんが行くまで、そこにいなさいって」
なんで僕が行くってわかったんだ。 何とかするって言ったのはこういうことなのか。
ふっ。 たかが機種変、されど機種変。 迷惑を被るのはいつも僕。 ま、他人に迷惑をかけるよりはいいですかね…。
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