2005年04月03日(日) |
「トニー滝谷」「永遠のハバナ」 |
◆トニー滝谷 [日本/2004年/75分]
監督・脚本:市川準 原作:村上春樹 音楽:坂本龍一 撮影:広川泰士 出演:イッセー尾形、宮沢りえ、 西島秀俊(ナレーション)
村上春樹は特に好きではなかったが、デビュー作から「ノルウェイの森」まで長短編、ほぼリアルタイムで読んできた。あまり良い読者ではないものの、そのエッセンスだけは受け取っているかもと思う。 で、この市川準監督映画は初めて観たが、こんなに村上春樹ワールドを具現化しちまうとは!・・だ。よく言われる現実からの浮遊感・喪失感・孤独感を内包したさらりとした空白の多いイメージの文章が、そのまま映像になった感あり。 冒頭、エピソードごとに長廻しのワンカットを繋げていくあたり、日本古来の絵巻物の手法を取り入れたのか、その美意識が素敵。
ずっと孤独と共にありながらそれと気づかず、愛を失って初めてその孤独という存在を実感する男を演じたイッセー尾形が素晴らしく好みだ。 彼のたたずまいもさることながら、ビジュアル的に後ろ姿、背筋が相当好み。大学生姿はつらかったけど。 彼の映画は「ヤンヤン夏の思い出」@エドワード・ヤンしか見ていないが、やはり静謐で端正なたたずまいが印象に残る。 イッセー尾形といえば、今年のベルリン映画祭で上映されたというソクーロフの「太陽」。 昭和天皇・人間ヒロヒトを演じる彼が楽しみで楽しみで観たくてしょうがないのだが、はたして日本で上映されるのだろうか? それにしても、いいなぁ〜、イッセー尾形。
また、宮沢りえが素晴らしいのは言うに及ばず、西島秀俊のナレーションも良いなぁ〜。
(4/3 at ユーロスペース)
◆ 永遠のハバナ Suite Habana [キューバ・スペイン/2003年/84分] 監督:フェルナンド・ペレス
キューバのハバナに住む市井の人々の一日を追ったセミドキュメンタリー。 愛さずにはいられない映画だ〜♪
ナレーションやセリフを一切排除し、一部音楽が使われているが、聞こえてくるのはほとんどが街の音・メインとなる12人の登場人物の生活の音。 語り口は淡々としていて派手さとは無縁だが、退屈さとも無縁。 映像と音は軽やかなリズムに溢れ、テンポよくそれぞれの生活が綴られる。
ダウン症の少年、昼は家業を手伝いながらもバレエダンサーを夢見る少年、病院勤務の青年の夜はドラッグクイーン、ピエロのバイト(ボランティア?)の医師、街角のピーナッツ売りの老女・・等々、それぞれの昼と夜とが描き出される。
ここで描かれるハバナは、お気楽な側面から見た一部の姿ではあるかもしれないけれども、名もない彼らひとりひとりによって形成されるハバナという都市のひとつの真実の姿だ。
言葉も話せないのに、発作的にハバナに移住したくなってしまう。
(4/3 at ユーロスペース)
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