表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2003年11月08日(土) 「10ミニッツ・オールダー」人生のメビウス&イデアの森

オムニバスではなく、まさにコンピレーションと呼ぶのがふさわしい。
作家性の強い監督15人による10分間づつのフィルム集合体。

◆「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」@シアターコクーン
  Ten Minutes Older: The Trumpet
 大好きな監督揃い!
 それぞれの監督の持ち味・個性が笑えるほど見事に表現されていました!

 ○アキ・カウリスマキ「結婚は10分間で決める」Dogs have no hell
  カウリスマキ作品常連のカティ・オウティネンとマルック・ペルトラの
  コンビによる一本。
  さすらいの男が、かつての女の職場へ立ち寄り、「お前はオレのただ一人
  の女だ、結婚しよう」とプロポーズ、電車(汽車と言おう)でシベリアへ
  旅立つまでの10分間。
  「をいをいをい・・・お願いですから、もうちょっと早くして下さい!
  急いで下さい!」と懇願したくなる観客には頓着せず、しみじみと流れる
  カウリスマキ時間。たまらぬです。
 ○ビクトル・エリセ 「ライフライン」
  眠り続ける赤ちゃんの10分間。
  が、赤ちゃんの腹部から衣服に沁み出す不吉な血!
  しかし午後のゆうるりとした時間は流れ、産後間もない母は眠り、子供
  達・男達・老人達も変わらぬ時を過ごし、吹く風もやさしい何の変哲も
  ないいつもの午後。
  美しくゆったりとした映像、事の重大さを知るのは我々観客のみ。
  事なきを得る結末まで感心の一本。
 ○ヴェルナー・ヘルツォーク「失われた一万年」Ten Thousand Years Older   きゃぁ?!ヘルツォーク!あまりにもヘルツォーク!うれしいぃ♪
  一万年近く(嘘)も独自の道を歩んできた未開の部族が、初めて文明
  と接触したがために、単なる風邪ウィルスや水疱瘡に冒され大半が亡くな
  り、残った者も文明という名のウィルスに冒され輝きを失ってしまった・・。
  ドキュメンタリータッチで進むこの物語、しかしヘルツォーク、勝手な
  部族を編みだしちゃってるでしょう?いわゆるモキュメンタリー(?)
  文明批判を込めつつ、やりたいことをやってます!
 ○ジム・ジャームッシュ「女優のブレイクタイム」Int. Trailer Night
  撮影途中の女優(クロエ・セヴィニー)のトレイラー休憩の10分間。
  煙草をくわえ、真っ先にかけたCDは、ゴールドベルグ変奏曲。
  神経を休めるはずの休憩時間、携帯はのべつ、ヘアメイクやらADやら
  音響やらが入れ替わり立ち替わり訪れ、そこはかとなく可笑しい。
 ○ヴィム・ヴェンダース「トローナからの12マイル」12 Miles to Trona
  最初、ただならぬ事情で車を走らせているらしい・・から始まり、徐々に
  事情が見えてくる時の快感。病院まで緊迫の10分間のドライブ。
  ロードムービーで名を馳せたヴェンダース、お手の物の世界でした。
  エンドロールで「Docter1 Wim Wenders」の名を発見。ちゃっかり出演して
  いたとは、お茶目さん。
 ○スパイク・リー「ゴア VS ブッシュ」We Wuz Robbed
  マイアミ州に おける大統領指名選について、不正が行われたことは今や
  公然の事実として知られていますが、それに関してのゴア側からの検証。
  敗北宣言をするかしないかの場面の証言は迫力あり。
  本で知った投票用紙のからくりなど映像として目で見ると説得力あり。
  もしあの時ゴアが勝利していれば、今頃世界はもそっとだけ平和の方に
  動こうとする意志が働いていたかもしれないと、再度思うのであった。
 ○チェン・カイコー「夢幻百花」
  中国の都会は今、空前の建築ブームで町中ビルの工事だらけ。昔ながら
  の中庭を囲んだ四角い典型的な中国の家が無くなりつつあるという。
  チェン・カイコーがここで美しい記憶として残そうとしているものは
  中国の昔ながらの家、それに付随する大切なものなのでしょう。
  私としては、最近のチェン・カイコーはいかがなものかと思う部分も
  少なからずあるのですが、この小品では彼の美意識と表現とがうまく
  折り合って生きているような気がします。CGちゃっちいけど。

◆「10ミニッツ・オールダー イデアの森」@シアターコクーン
  Ten Minutes Older: The Cello
 こちらは皆、観念的な作品揃い。
 興味深くは見ましたが、「・・・で?」って感じですの。

 ○ベルナルド・ベルトリッチ「水の寓話」Histoire d'eaux
  我々東洋人には案外なじみの深い、胡蝶の夢や杜子春的哲学話。
  キアヌが仏陀になったりした東洋三部作で、東洋哲学に通じたベルトリッチ。
 ○マイク・フィギス「時代×4」About Time 2
  ますまる実験的手法にはまるマイク・フィギス。
  彼の「リービング・ラスベガス」は、我が心の一本です。
 ○イジー・メンツェル「老優の一瞬」One Moment
  馴染みのないチェコの監督。「スィートスィート・ビレッジ」も未見。
 ○イシュトヴァン・サボー「10分後」Ten Minutes After
  つい最近では「太陽の雫」のハンガリー監督
 ○クレール・ドゥニ「ジャン=リュック・ナンシーとの対話」Vers Nancy
  「ネネットとボニ」「ガーゴイル」
 ○フォルカー・シュレンドルフ「啓示されし者」The Enlightenment
  「ブリキの太鼓」「魔王」
 ○マイケル・ラドフォード「星に魅せられて」Addicted to the Stars
  「1984」「イル・ポスティーノ」
 ○ジャン=リュック・ゴダール「時間の闇の中で」Dans le noir du temps
  私の最近のお気に入り、エストニアの作曲家アルヴォ・ペルトの曲が全体に
  フューチャーされており、それだけで満足。
 「これについては蓮見さんあたりにおかませしましょ」とは一緒に見た友人の弁。
  確かに!


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