嗚呼!米国駐在員。
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2005年08月03日(水) (中国) 物乞いの理由

中国では物乞いが集まってくる。


物乞いといえば元祖、インドに何回か行っているので、自分では物乞いについては慣れているほうだ、と思う。

忘れもしない、インドへ出張して初めて朝を迎えたとき。
ホテルの周りの海辺を散歩しようと、ホテルを一歩出た時の事だ。子供を脇に抱えたやせ細った女性の集団があたり一面から現れて、四方から一気に自分めがけて突進してきた。その光景は今でも忘れられない。まさにゾンビであった。抱えられた子供は、寝ているんだか起きているんだか、そもそも子供なのか人形なのかも分からない。女性は口々に何か叫びながら口の中を指指す。腹減った、食い物を買う金をくれ、とでもいいたいのだろう。

そのうち、口の中を指していた指で自分に触ろうとしてくる。
あっという間に周りを囲まれてしまい、振り切るようにホテルに逃げ込んだ。

その後も、車で移動した際に信号で止まるたびに寄って来る物乞いたち。腕がない人、足がない人、全身やけどの人、顔がつぶれた人。しかも、車のガラスにへばりついてくるからたちが悪い。そして、信号が青になると、フロントガラスに人がくっついていても無視して車を走らせるインド人ドライバー。彼らからすれば日常の光景。


中国でみる物乞いはここまでひどくないようだ。
彼らの集まる場所は限定されているように思える。ホテルの前、レストランの前、歩道橋。外国人や金持ちが集まる場所が多い。

しかも、もちろん個人で物乞いをやっていることもあるのだが、ほとんどが組織的にやっているようだ。親が子供を利用している場合が多い。小さな子供が汚い服を着ていたり泣いたりして哀れみを買う。あるいは子供がずーっと土下座して頭を下げ頼み続ける、という違う同情の誘い方もよくある。

先月に上海に行った際、取引先の日本人の方と街を歩いていたのだが、背後からぼろぼろの服を着た小さな男の子がやってきた。そのうち、取引先の人の足にコアラのようにしがみついて離れなくなった。「絶対に物乞いに金は渡さない」と言っていたその取引先の男性も、しぶしぶ金を差し出すと、すごい勢いで男の子はそれをひっつかんで、道端のおばさんの所に行ってそれを渡していた。子供を使って金をかせぐのは、よくあるパターンのようだ。

子供もノルマがあるのかよく分からないが、泣きながら金をせびる女の子もいた。それが、嘘なきでもなんでもなく、本当に切羽詰った感じで泣いているので、あまりにも不憫で金を出してしまった事もある。

中国人の知り合いに聞くと、こうして少しずつ集めるお金が意外に結構な金額になるようである。そして、こうして物乞いに「使われる」子供達は、安い値段で農村から買われてくる事も多いようだ。同情をひくために、中には子供の目が潰されていたり、足や足が折られていたりという悲惨なこともあるという。

そして、親が実の子供の身体を傷つけることもあるという。


組織的、戦略的にやっているとしても、そうせざるを得ない現実。モノが満ち足りた日本のすぐ隣の国で起きている現実。多すぎる国民と救いのない貧民。

こんな物乞いにどう対処するか。
日本人からすると、そんな子供を目にすることは耐えられないけども、職業と割り切っている人も多いからきっぱりとノーと言えばいい話である。結局は何の解決にもならないから、お金は一切渡すべきではないのかもしれない。


それにしても、人間の尊厳も認められないようなこんな国で、本当にオリンピックや万博が開催されるのだろうか。うまく飲み込めない現実である。



Kyosuke