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2004年07月11日(日) 「好きだよ」


「お邪魔しま〜す」

「お〜、いらっしゃい」

1ヶ月ぶりに見る、彼の顔。

変わってるとか変わってないとか以前に
「あぁ、こんな顔してたんだよね」
という感じでした。

つい最近まで、ものすごく愛してた人だ。

今見ても、Tは私にとって、世界一カッコいい。


カバンを床に置き、とりあえず座る。

「久しぶり〜〜♪」

後ろから、Tに抱きしめられた。

「久しぶりだねぇ〜〜♪」

そう言って、Tの頭をポンポンする。

“男”というよりは、まるでネコみたいで
突き放すことはできなかった。

彼も、元カノ,,,というよりは、
お姉さんか、飼い主のようにしか思っていないだろう。


そう思って、ひっつく事は拒否しなかった。


だけど・・・

ちょっとひっつきすぎ!

「もうっ、あんまりこういう事したらダメでしょっ!」

「だって〜〜、淋しかったんだもん〜」

「淋しくても、別れてるんだからケジメはつけないとダメなの!」

それでも言う事を聞かないT。


「はいはい、淋しかったんだねぇ〜」

仕方がないから、頭を撫で撫でしてあげた。


ほんと、ネコみたい・・・・。

カワイイなぁ(*´∀`)

『きみはペット』の、スミレちゃんの気持ちがわかるかも・・♪



そんなふうに、油断していた時。



Tが顔を近づける。


「あっ!? そ、それはだめっ!」

「なんでぇ〜〜〜??
 キスしたいぃ〜〜〜」



それからしばらくTの ちゅー♥攻撃をかわすハメに・・・。

あまりにも私がうまく逃げ続けたもんだから、
Tはむきになり、ついに腕力で無理矢理ちゅーをした。


顔をそむけようとすれば、顔を抑えられ、
Tの胸を押して逃れようとしても、Tは動かない。

それに・・・・長い! 長いぞ!!!


ようやく唇が離れたあと、なんだか気まずかった。

Tは嬉しそうにしていたけれど。

拒否していた私は、どんな顔をしていいのやら・・・。



それからも、Tはちゅー♥を狙った。

たまに、捕まった。


そして、Tから甘い台詞のオンパレード。

「今日は、何時までいてくれるの?」

「yuuに会えるの、すっごく楽しみにしてたんだよ」

「俺の事、もう嫌いになった・・・?」

「こんなこと、yuuにしかしないよ」

「好きだから、したいって思うんじゃん」

「やっぱり好き」

「もう一回、付き合う・・・・?」

「どうしたら、好きだって信じてくれるの?」


私は、別れる前に裏切られたと思っていた時の心境を話した。

「あまり会えないと、冷めちゃう時ってあるじゃん。
 あの時は、そう思えたから・・・。
 今、yuuを目の前にしたら、やっぱり好きだって思った」


「でも、私が帰ったら、また冷めちゃうんじゃないの?」

「そんな事無いよ!」

「たぶんTは、淋しかった時に、今も嫌いじゃない元カノと
 久しぶりに会って、それでそんな錯覚を起こしてるだけなんだよ」


「錯覚じゃないよっ! ほんとに好きだよ!」

「手近にそういう相手がいるから、そこに甘えたくなっちゃった
 だけなんだと思うよ? 落ち着いてよく考えて!」


「落ち着いてるって!」


だめだ、私が何か言えば言うほど、Tは冷静じゃなくなってくる。





だけど・・・・



ここまで言うのなら、本気なのかなぁ、とも思った。


もしTが本気なら、私はどうしたいだろう?


本当にそこまで想われてるのなら、戻るのが幸せかもしれない。



・・・・いや、だめだ。

今はまだ、Tが本気だか何なのかわからない。

もしかしたら、ちゅー♪の先に進みたいための、
うまい口説き文句なのかもしれない。

きっと、この子は淋しいだけなんだ。

もし今、目の前にいるのが私じゃなくても
Tは同じ事をしてるかもしれない。


今は、何がなんでも「戻ろう」と言ってはいけない。



結局、なんだか曖昧なままだった。


それから、バス停近くの店に、夕飯を食べに行く事にした。

Tがぎこちなく手を繋ぐ。

店に入り、談笑しながら食事。

ちょっと居酒屋風で、楽しかったな・・・♪


食事が終わって、そのままバス停へ。

建物の陰に腰を下ろし、バスを待った。

2人で、寄り添いながら。


バスが来ると、Tは私に、短いキスをした。

「じゃぁ、バイバイ」

「・・・もう一回」

そしてまた、バイバイのキス。



Tは、何を考えているのだろう?

私は、どうしたいんだろう?


Tに「好き」と言われた時・・・いや、
Tと会う前日から、それまで好きだと言っていた
社長さんのことは、頭から消えていた。

バスの中でも、電車の中でも、想うのはTのことばかり。

まるで、社長さんの存在で堰き止めていた気持ちが
少しずつ溢れてきているようだった。

正直、ハグハグとかキスを求められる事を
期待していなかったといえば嘘になる。

実際にされても、全然嫌なんかじゃない、嬉しかった。

ただ、別れている、という事実が、私にそれを拒否させた。

簡単に受け入れていては、別れた意味がない・・・・。

そんな“チョロイ女”になってはいけない。それが盾だった。

けれど、Tへの気持ちが、その盾を案外容易く壊してしまった。



家に帰って 「今日は楽しかった。ありがとう♪」とメールをした。

Tからも、すぐに「俺も楽しかったよ〜!」と返事がくる。

そして、私は部屋に置いてきたものを、何一つ
持って帰っていないことに気がつく。

それをTに言うと

「またおいで♪」

との返事。

「うん」と返信すると、「じゃぁまたね」


あらら・・・・・つれない返事。

会ってた時とは、えらい違いね。


それから10分後、勇気を出して

「私、まだTの事好きかもしれない。
 Tがもう落ち着いてるんなら、聞き流しといて!」


そうメールをした。








返事は、来ない。







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