砂時計 全10巻

 涙が止まらなかった。ずっとずっと止まらなかった。

 それは。自分に重なるからなのか。私は杏ほど大変なことがあったわけじゃないけど。杏ほど傷があるわけじゃないけど。それでも共感できるのは自分にも似た部分があるからなのかな。


 幸せになることを望みながら、幸せになることを恐れて。大好きな人が幸せになることを心から願い、その幸せに自分が必要なことに気付かないで。

 求めて。逃げて。

 逃げて。求めて。

 「どうしたいのか」「何がしたいのか」なんて、自分が一番分からなくて。人が見たらただの「からまわり」で。自分で見たって「からまわり」で。カラカラカラカラ。クルクルクルクル。
 どこまで回れば良いのか。どれだけ回り続ければ良いのか。

 だれか教えて。だれか答えて。

 
 自分が弱いことを知っているから。それを認めたくなくて強がって笑ってがんばって。
 がんばって。がんばって。がんばって。がんばり続けてもっとがんばって。休むことが怖くて。
 がんばらないと。がんばり続けないと「自分」がなくなってしまうようで。がんばってがんばってがんばって。疲れたことに気付かないふりをして笑ってがんばって。

 「泣くな」といわれた。

 「幸せになれ」といわれた。


 泣かない。もう。泣かない。泣かないようにがんばる。がんばることが増える。泣かないようにがんばる。幸せになれるようにがんばる。がんばってがんばってがんばってがんばって。


 がんばって。がんばって。がんばって。ばんばって。


 がんばる理由がなくなったとき。どうしたら良い?


 杏は「がんばる」ことに「がんばりすぎて」、周りが見えなくなっていたのかもしれない。大切な人を利用して。傷つけて。さらに自分も傷ついて。良いことなんてヒトツも無いのに。だけど進むためにはそうするしかなくて。
 傷つけて傷ついて。泣いて。泣いて。泣いて。

 
 一番してはいけないことをしてしまったときに、初めて回りが見えた。真っ白になったときに初めて気付いた。

 「自分」という存在。


 気付けたから意味がある。気付いたから意味がある。


 がんばらないと辛い。がんばり続けないと怖い。
 「明日の自分」の存在理由が欲しい。そこに居る「意味」が必要で。


 「幸せにして」と言われた。

 「絶対、幸せにする」と言った。


 それが今のがんばる「理由」。




 がんばって。

 負けないで。

 でも、無理しないでね。

 少し休んだら、またがんばって。


 ひとりじゃないから。ね。

 
 「がんばっているふり」はもう疲れたから「がんばらないように、がんばる」ことにした。

 涙が止まらなかった。泣きつづけて疲れたけど、出会えてよかった。
 久しぶりに心から、読んで良かったと思えた作品。


 登場人物全てが「良い人」だから全員の幸せを願います。

2007年04月21日(土)
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