涙が止まらなかった。ずっとずっと止まらなかった。
それは。自分に重なるからなのか。私は杏ほど大変なことがあったわけじゃないけど。杏ほど傷があるわけじゃないけど。それでも共感できるのは自分にも似た部分があるからなのかな。
幸せになることを望みながら、幸せになることを恐れて。大好きな人が幸せになることを心から願い、その幸せに自分が必要なことに気付かないで。
求めて。逃げて。
逃げて。求めて。
「どうしたいのか」「何がしたいのか」なんて、自分が一番分からなくて。人が見たらただの「からまわり」で。自分で見たって「からまわり」で。カラカラカラカラ。クルクルクルクル。
どこまで回れば良いのか。どれだけ回り続ければ良いのか。
だれか教えて。だれか答えて。
自分が弱いことを知っているから。それを認めたくなくて強がって笑ってがんばって。
がんばって。がんばって。がんばって。がんばり続けてもっとがんばって。休むことが怖くて。
がんばらないと。がんばり続けないと「自分」がなくなってしまうようで。がんばってがんばってがんばって。疲れたことに気付かないふりをして笑ってがんばって。
「泣くな」といわれた。
「幸せになれ」といわれた。
泣かない。もう。泣かない。泣かないようにがんばる。がんばることが増える。泣かないようにがんばる。幸せになれるようにがんばる。がんばってがんばってがんばってがんばって。
がんばって。がんばって。がんばって。ばんばって。
がんばる理由がなくなったとき。どうしたら良い?
杏は「がんばる」ことに「がんばりすぎて」、周りが見えなくなっていたのかもしれない。大切な人を利用して。傷つけて。さらに自分も傷ついて。良いことなんてヒトツも無いのに。だけど進むためにはそうするしかなくて。
傷つけて傷ついて。泣いて。泣いて。泣いて。
一番してはいけないことをしてしまったときに、初めて回りが見えた。真っ白になったときに初めて気付いた。
「自分」という存在。
気付けたから意味がある。気付いたから意味がある。
がんばらないと辛い。がんばり続けないと怖い。
「明日の自分」の存在理由が欲しい。そこに居る「意味」が必要で。
「幸せにして」と言われた。
「絶対、幸せにする」と言った。
それが今のがんばる「理由」。
がんばって。
負けないで。
でも、無理しないでね。
少し休んだら、またがんばって。
ひとりじゃないから。ね。
「がんばっているふり」はもう疲れたから「がんばらないように、がんばる」ことにした。
涙が止まらなかった。泣きつづけて疲れたけど、出会えてよかった。
久しぶりに心から、読んで良かったと思えた作品。
登場人物全てが「良い人」だから全員の幸せを願います。