みのるの「野球日記」
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2005年07月31日(日) 東林中、6年ぶりに神奈川を制す!

 7月28日から31日まで小田原球場などで開催された神奈川県中学校軟式野球大会で、相模原市立東林中が6年ぶりの県制覇を成し遂げた。
(詳細は神奈川県中学校体育連盟 軟式野球専門部HPへ)
http://www5f.biglobe.ne.jp/%7Ehomata/index.htm


「疲れました…。プレッシャーしかなかったです」
 優勝を決めたあと、東林中の川尻浩之先生は安堵の表情を浮かべていた。嬉しい気持ちよりも、ホッとした。表情から、そんな感情が窺い知れた。
 東林中を2度の全国大会に導くなど、強豪校に育て上げた佐相眞澄先生が今年4月1日から、神奈川県立川崎北高校へ異動。後任に就いたのが大卒1年目、若干22歳の川尻先生だった。

「外国に来たみたいだった」
 川尻先生は、赴任当初の心境をこう語る。
「全国制覇、日本一…。普通にそんな言葉が出ていて、みなさん、日本語を喋っているんだけど、ぼくには全く分からない。次元の違う世界に来てしまったなぁ、というのが正直な思いでした」
 3月下旬の金沢交歓会には、川尻先生も参加した。全国をリードする指導者と会い、「次元の違う世界」に触れた。

 川尻先生は名古屋出身。愛知の県立高校で野球をやっていた。大学進学後は、学生コーチとして地元の中学野球を指導。「中学野球を教えたい。部活動を持ちたい」という思いで、採用試験に通った相模原市にやってきた。
「中学野球を教えたい、と思っていたけど、名古屋で教えていた中学とはほんとに次元が違う。世界が違う。野球が違う…」
 戸惑いの連続だった。

 戸惑ったのは新監督だけはない。
 主将の小嶋勇一は言う。
「佐相先生が高校へ移ると聞いたのは、金沢に出発する初日。バスに乗る前でした。みんな、『え〜!』って感じで。ショックで、しばらく立ち直れないやつもいたぐらいです」
 金沢交歓会最終日の試合後には、東林中の選手で佐相先生を胴上げした。
「みんな、泣きじゃくって号泣でしたよ」

 4月からは東林中の監督は川尻先生に代わった。
「佐相先生がいなくなって、気の緩みが出た」と小嶋だけでなく、2年生からレギュラーで出ていたキャッチャーで1番を打つ井上雄貴も言う。
 そして、日が経ち、試合をやるごとによって、選手の不満もたまってきた。
サインを出すタイミングや仕掛けるタイミングが、佐相先生とは違う。もっとこうして欲しい、という思いがどんどんたまっていったという。
こういった選手たちの相談を持ちかけられていたのが、東林中OBの早川遥だ。早川は筑川利希也(ホンダ)と同期で、97年の全中でベスト8に入ったときのメンバーだ。いまはサポート的な立場で東林中を見ている。川尻先生とは同い年ということもあり、遠慮なく言いたいことを言い合える関係でもある。
早川は選手たちに言った。
「思っていることがあえば、先生と話し合え」

 夏の相模原市大会の3位決定戦で新町中に逆転負けを食らった翌週、選手と川尻先生との間で話し合いがもたれた。
「この継投は間違っています!」
 そんなストレートな考えも、選手から飛び出したという。文字通り「腹を割って」、選手は川尻先生に思いのたけをぶつけた。
「ここから、チームがひとつになって、県大会は頑張ってやろう! という思いになれました」とは小島の言葉だ。
 その後、東林中は県北大会で優勝を果たし、県大会も制覇。6年ぶりに神奈川の頂点に立った。

 試合後、安堵の表情を浮かべていた川尻先生は、ホッと一息ついたあと、「でも、まだまだです」と言った。
「目標は全国制覇。今日の朝も言いました。『県で優勝するのはまだ通過点に過ぎない』」
 「外国にいるみたいだった」と感じた4ヶ月前の川尻先生とは、もう違う。躊躇なく、『全国制覇』と言い切った。
「この夏はこの子たちの人生が懸かっている。だから、負けるわけにはいきません」

 そして、主将の小島。
「佐相先生にいい報告ができます。でも、ぼくたちが佐相先生を喜ばすには全国制覇しかない」

 8月7日から始まる関東大会。東林中は神奈川第一代表として出場する。初戦は8日。相手は千葉・富津市立大貫中――。


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