桐蔭学園グラウンドで齊藤さんにあった数日後、茨城の水戸短大付属高校へ行ってきました。高校通算40HR、春田剛の取材です。
水短に向かうまで、かなりドキドキしていました…。というのも、昨年秋からチームを率いる仁井田意(にいだ・こころ)監督とは以前、仕事を一緒にさせて頂いていたことがあり、面識があったため。ぼくはその仕事場を辞めてしまった人間なので、またお会いすることに、心のどこかで複雑な気持ちがありました。
で、水短に到着し、仁井田監督に、「ご無沙汰しております」と名刺を差し出すと、「なんだよ〜! 何でここにいるんだよ? すげぇ〜びっくりしたわ! 連絡くれよ〜」とほんとにびっくりされた様子。でも、その話し方がとても明るかったので、ホッと一安心。複雑な気持ちは一気に吹き飛びました。
仁井田監督。なかなかすごい経歴を持っています。 明徳義塾高校から専修大を経て、東京ガスに入社。専修大では1部リーグで打率2位を2度。東京ガスでは東芝府中の補強選手として都市対抗に出場し、アトランタ五輪の代表候補に選ばれたこともあるそう。現役引退後は鹿児島実業などでコーチ修行をし、03年春から水短のコーチに。04年秋から監督に就任されました。
色々とお話を聞いた中で面白いなと思ったのが、監督として臨んだ初日の練習日に試みたこと。それまでは「何時から○○」と練習メニューをすべて張り出していたのを、一切やめて、選手たちで考えさせるようにしたそうです。初日は30分間、選手は何をしていいか分からずボ〜ッとしていたそうですが、30分後、「監督、今日は何をすればいいですか?」と主将である春田が聞きにきたとか。 そこで、「野球をやるのはお前らなんだから、好きなことをやれ。休みたかったら休んでいいぞ」みたいなことを言ったそうです。 そういわれて、ほんとに休んでしまう高校生はなかなかいない。以来、春田が中心となって練習メニューを考えてくるようになった。冬場も、「こっちがびっくりした」と仁井田監督が言うほどのハードなメニューを、選手自身が考え、こなしていったとのこと。
同じことを中学生に求めるのは難しいかもしれないが…。 取材に行くと、練習中に「先生、次は何をすればいいですか?」という言葉を時折聞くことがある。(自分たちで何をやりたいのか。欠けているものがあれば、それを補うためにこういう練習がしたいとか、先生に主張をすればいいのになぁ…)と、こういう言葉を耳にするたびに思ってしまう。
仁井田監督は、ゴミ拾いや挨拶も徹底させたという。さらに授業中での居眠りが発覚したり、テストで赤点があると、メンバーを外す決まりも作ったとか。高校の監督から、こういった話を聞くのは新鮮だった。 春田はこういうことが当たり前にできるようになってから、「いままで引っ張り専門だったのが、逆方向に流したりチームバッティングができるようになった」と仁井田監督。 中学校の先生からもよく聞く話だが、ゴミ拾いや挨拶ができるようになると、周りに気を遣えるようになる。視野も広がる。そもそも視野が狭いと、こういうことはできない。佐相先生がよく言っていたが、「ゴミを拾う前に、ゴミが落ちていることに気づくことからスタート。それに気づかない子が多い」と。
春田。礼儀正しい、好青年だった。 練習終了後、わざわざ監督室をノックし、「今日はどうもありがとうございました」と挨拶をしにきた。こんなことって初めてかも。 さらに、「ほんとに高校生?」と思うぐらい、しっかりしていたのがマネージャーの友部くん。挨拶などの礼儀はもちろん、フリーバッティングを眺めていると、「右端にいる○○はいいバッターです」など、解説もしてくれた(笑)。 同行した編集者が、「東都一部の主務ぐらいしっかりしている」と話していたが、まさに同感! 友部くんのお陰で気持ちよく取材をすることができました。ありがとう!
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