2002年05月01日(水) |
図書館の便利さに複雑な思い |
3月4日の日記『小説中毒』の中で、「最近小説にはまっている」と書いた。以降も週に2、3冊のペースで小説を読んでいる。 小説を読む回数に比例し、古本屋に行く回数も増えた。できるだけ安く購入したいので、書店では買わない。ハードカバーを読むとなれば、プロ野球の外野席と同じぐらいの値段もする。本は読みたいけれど、手痛い出費となる。
昨日、2ヶ月ぶりに図書館に行った。目的は、新聞と週刊誌のバックナンバーをチェックすることだ。それが終わると、スポーツノンフィクションが並んでいる棚に向かった。 だいたい、これが図書館に行ったときの私のパターンだ。新聞で調べ物が終わると、スポーツノンフィクション、特に野球関係の本で面白そうなものを何冊か借りて帰る。昨日も2冊借りた。織田淳太郎氏「巨人軍に葬られた男たち」。海老沢泰久氏「巨人がプロ野球をダメにした」。まだ織田氏の本しか読んでいないが、私の知らない巨人の「陰」が詳細に書かれており、大変興味深い作品だった。
野球関係の本を見終わり、受付に本を持っていこうとすると、『日本文学』という文字が目に入った。そのとき、ふと思った。今まで微塵も考えつかなかったことだが、「図書館で小説を借りれば良いんだ。古本屋で買うより安い」。安いというか、タダだ! さっそく、棚の前に行くと、ハードカバーがずらりと並んでいた。古本屋で探し続けていて、読みたくてたまらなかった宮部みゆき『理由』、東野圭吾『秘密』も当然のようにあった。「ラッキー!」と思い、野球の本と合わせ、合計4冊を借りた。 けれど、「ラッキー!」と思うと同時に、これが作家の立場を考えると、素直に喜べないなと思った。もし私が将来何かのきっかけで本を出版することになったとすると、自分の本が図書館でタダで回し読みされていたら、経済的につらいだろう。仮に定価が1500円だとする。それを100人が図書館で読む。この100人が図書館で借りるのではなく、書店で購入するとなると・・・。印税でかなりの差が出る。 そんなことを思っていたら、昨日(4月30日)の朝日新聞の文化総合面に『図書館の「無料貸本屋」論争 ルール作りへまず一歩』という記事が掲載されていた。要約すると、図書館を利用する市民は「新刊ベストセラーを早く読みたい。だからたくさん揃えて欲しい」。一方の著作者・出版社側は「何らかのガイドラインを作って欲しい。ベストセラーはせめて1点1冊だけにして」という思いがあるそうだ。 記事によれば、世界的なブームを巻き起こした『ハリー・ポッターと賢者の石』は東京区内7館で80冊所蔵で、30回の貸し出し実績があったという。区内の図書館だけで2400回読まれ、図書館が購入した分を除けば、著者や出版社は2320冊分の利益が失われたことになる。
今は利用者である身の私が、こんな心配をするのはバカげているが、物書きを目指す人間として、生活に密接に関わってくる問題である。何十年後か、本当に切実にこのような悩みにあたれば、それもまた幸せなのだろうけど。
最後に・・・、『理由』を二日で読み終わりました。日記を読んで下さっているかたで、「この作者の小説面白い!」というのがありましたら、ぜひ教えてください。それと、お薦めの野球小説ありませんか? この前、伊集院静氏の『受け月』読みました。作品を読んだあと、余韻に浸っていたいような、幸せな気分になれました。
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