加藤のメモ的日記
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2023年11月14日(火) |
認知症は、薬より介護が治療の根幹 |
認知症には、代表的なものだけでもアルツハイマー型、血管性、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、混合型など多くの種類がありますが、そのうち約/割を占めるのがアルツハイマー型認知症です。このアルツハイマー型認知症にÞ買われる薬として、現在四つの薬に健康保険が適用されています。そのうちの3割は「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」と呼ばれるタイプ。脳内のアセチルコリンという神経伝達物質が減少することで記憶障害や、判断力の低下が起きると考えられることから、これを増やす作用を持たせた薬剤です。
アセチルコリンを増やす作用を持つ薬には、日本では1999年に初めて承認されたアリセプト(1日1回服用)2011年に承認されたレミニール(1日2回服用)リバスタッチバッチ、イクセロンバッチがあります。この3剤は同種同効薬なので、併用されることは有りません。
一方、アルツハイマー型認知症では過剰に放出されたグルタミン酸が神経細胞を傷害し記憶の低下を妨げることから、このグルタミン酸が部位をブロックするメマリーという薬も2011年に承認を得ています。これは中等度から高度のアルツハイマー型認知症に対して、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬に加える形で処方されます。
つまり現状においてアルツハイマー型認知症の薬物治療の基本は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬を単体で使用するか、比較的症状の進んだ人に対してアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の中の一剤として、メマリーを服用する、のいずれかになるのです。以上のことを念頭に置いたうえで、アルツハイマー型認知症の治療には、「四か条」があります。それは「量は少なく」「数も少なく」「副作用がなければ使うべき」そして「薬より介護」の4つです。
「量は少なく」は薬の用量のこと、高齢者は代謝機能が低いので、投与量は慎重に見極める必要があります。軽度の中程度の認知症にアリセプトを使う場合、最初は3ミリグラムから始めて、副作用がなければ通常量の5ミリグラムに上げる。高度障害は10ミリグラムに上げることもありますが、副作用が出たら5ミリグラムや3ミリグラムに下げる。常に「少なめ」を意識することが重要なのです。
「数も少なく」は、基本となる服薬セット以外の薬のこと。前述のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の3剤は、同効薬ではあるものの、微妙に副作用の違いがあります。胃部不快感などの消化器症状やイライラ、怒りっぽくなるといった副作用出現の割合も薬によって異なり、また薬との相性により個人差もあります。
ここで重要なのは、副作用を抑えるためとして、上乗せで消化器系薬剤や。精神科系薬剤を安易に使用しないことです。特に、コントンミンやウィンタミンといった抗精神病薬は鎮静効果(ボーっとしてしまう)が強く、歩行障害なども出やすいので、処方されても服用しないほうがいいでしょう、
抗精神病薬を認知症高齢者で使用すると、死亡率を高めるリスクもあるという 米国食品医薬品局(FDA)の警告もあります。精神科系薬剤を「加える」のではなく、症状を引き起こしている薬を「減らす」、または、別のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に「替える」のいずれかにすべきなのです。
周囲の理解が必要
三つ目の「副作用がなければ使うべき」はまさにその通り。これらの薬を使わなければ、アルツハイマー型などの進行性の神経変性疾患は徐々に悪化していきます。現在臨床で使用されている認知症型治療薬は進行を遅らせるもの」であって「根治を目指すものではありません。しかし、使わなければ確実に病気は進んでいくので、副作用がないなら薬を使うべきなのです。第一条に挙げた「量は少なく」は、この第3条のベースとして不可欠になります。
そして最後の「薬より介護」とは、認知症治療の根幹をなすもの。どんなに薬物治療が奏功しいても、介護がうまくできていなければ、治療の効果はあり得ない、ということです。
『文芸春秋』7月号 P140
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