加藤のメモ的日記
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2023年09月25日(月) |
三船敏郎 多機能不全 認知症 |
認知症でも、大きなカンペを見て演じた
名優・三船敏郎さん(‘97年没)が体調を悪くしたのは、71歳で海外映画に出演した後だった。「三船さんはフランス人監督に請われ、イヌイットの部族長を演じました。ですが、アラスカの地での足掛け2年の撮影で体力を激しく消耗し、そこから弱ってしまったのです」(松田道子さん)
蝕まれたのは身体だけではなかった。徐々に物忘れが激しくなり、親しかった人々の顔すら、忘れてしまう日が増えていった。ある時、ずっと別居を続けてきた妻・幸子さんと20年ぶりに再会したが、その顔を認識できなかったという。だが、それでもなお変わらないこともあった。
若いころからの几帳面な性格、そして意図せずとも醸し出される唯一無二の風格だ「三船さんは気遣いの人で、認知症になってからも、人に迷惑をかけないよう、身の回りのことは自分で行っていました」映画界は三船さんの深く年輪の刻まれた風貌、たたずまいを必要とし、三船さんもそれに応えようとした。
74歳だった1994年には、ハワイの日系人の苛烈な生き様を描いた映画『ピクチャープライド』に活動弁士の役で出演する。「数分の出番ながら、三船さんは1週間前に現地に入ると、ホテルと大きなカンペを作り、史郎さんとともに懸命にセリフを覚えたのです」三船さんは人に頼るのことを嫌い、生涯、付き人もマネージャーもつけなかった。しかし、老いてくるとどうしても周囲の手を借りざるを得ない。
年々、体力は低下し、体の各所にも強い痛みが出て、家族のケアを受けるようになった。1995年には、自力での食事すらできなくなり、病院に入院、多機能不全も重なり、医師からは「もう長くない」と言われたが三船さんはそこから5年も生きた。若き日の精悍な印象と違わない強靭な生命力が、三船さんの肉体には宿っていた。
『週刊現代』7.10
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