加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will


2013年12月14日(土) メガバンクの責任の取り方 ��

リーマンショック後、最高益だそうだ。その3メガバンクが、ほぼ同時に暴力団への融資の存在を明らかにした。それでいて居丈高なトップたち。この妙な感じは何なのか。銀行の非常識に迫る。

元役員はカネを返せるの?

ところで、過去にさかのぼって報酬の返還を求められている元役員はこの処分をどう受け止めているのか。彼らも高給取りだったことは間違いないが、ある日突然「昔の不祥事が発覚したから、当時の役員はみんなカネを返してください」といわれて納得できるだろうか。カネを返還すれば老後の計画も大きく狂う。

本誌は元堀本頭取を訪ねた。問題融資が発覚した当時の頭取である。みずほ銀行の第三者委員会が作成した報告書によれば、彼は反社会勢力チェックのレベルを上げるよう支持したものの、東日本大震災後に起きたシステム障害の責任をとる形で退任。「後任の塚本氏への引き継ぎがなされなかった」とされ、A級戦犯扱いされている。現在、無報酬でみずほFGの顧問に就いている。西堀本頭取はセーターに綿のパンツ、スニーカーというラフないでたちで、どこか諦観したような、寂しげな表情でこう話した。「僕はもうお話しすることはありませんから、会社に聞いてください」

役員たちの報酬はすでに返上・返還されているのか。そのカネはどう処理しているのか。総額はいくらなのか。みずほ銀行広報室は本誌にこう回答した。「現役役員の報酬の一部返上に関しましては、すでに開始しております。役員OBの自主返上につきましては説明の上、全員からご了承を頂いた段階です」ただし、返上・返還された報酬の額やどのように会計処理するかについては「回答は差し控えさせていただきます」とかわした。

「(新聞の投書など)厳しいご指摘を頂戴していることもよく承知しておりますが、そうしたご指摘を重く受け止め、反社会勢力の徹底的排除に向け、改善対応策を遅滞いなく実行し、着実に成果に結びつけて参りたいと考えております」(同広報室)一方、みずほと同様の問題が発覚した三菱東京UFJ
銀行と三井住友銀行。こちらも「責任の取り方」という意味では、みずほと似たり寄ったりだ。

「各メガバンクが『うちも問題の融資がありました』と会見で認めたのは、佐藤頭取の国会招致の前日、2日目。ほとんど横並びでした。みんなでごめんなさいをすれば、ニュースにならないからです。ホテルや百貨店の食材偽装の謝罪会見と同じ構図です」(大宅氏)実際、2行が暴力団への融資を発表した翌日の新聞を見ても、みずほのときとは比べものにならないほど小さい扱いがほとんどだ。ただし、11月14日に行なわれた三菱UFJ銀行の平野頭取の会見は紛糾した。

平野頭取は、暴力団関係者との取引があったことは認めたものの、融資件数や金額などについては「回答を差し控えさせていただきます」と口を閉ざしたまま。反社会勢力への融資について聞かれても「取引が存在することを否定するものではない」などと、役人のような答弁で返した。「なぜ答えられないのか?」と記者が気色ばんだのである。「お上が答えさせなかったのです」と暴露するのは金融庁キャリアだ。

「実は10月末、決算会見の場で『反社への融資がみつかった』と金融庁に無断で発表した大手行があったのです。畑中長官は激怒して銀行第一課長銀行と監督管理官を長官室に呼びつけ、『この大事なときに勝手なことをやるな!』と怒鳴りあげた。銀行第一課長は直ちに全銀協会長で三井住友銀行頭取の國部氏を通じ、『反社との取引については一切、プレスリリースしないでいただきたい』と全国の銀行に伝達させた。だから三菱東京も三井もみずほも、決算会見で問題融資の中身を隠したのです」

人を見る目がないから

世の中は銀行と反社との取引そのものを問題視している。にもかかわらず、金融庁は自分たちに火の粉が降りかかると困るから黙っていろと、いうのである。銀行が銀行なら、金融庁も金融庁。何ともアホらしい”共犯関係”だが、指導は行き届いているらしく、頭取会見が紛糾した三菱東京UFJの関係者はこう開き直るのだった。

「反社への融資が見つかったことを受けて、『担当者を処分するのか?』とマスコミはいうけれど、質問がおかしい。みずほは問題融資を放置したから金融庁に業務改善命令を出されたのであって、審査の際の反社チェックが甘かったからではない。我々には処分される要素がないんです」国民から見れば目くそ鼻くそだが、この点、三井住友関係者の主張も全く同じなのだ。みずほ銀行OBで作家の江上氏によるt、昔の銀行員は今とは違っていたという。

「私が現役の銀行マンだった1990年代は、頭取の自宅の庭に猫の死体が投げ込まれたり、行員の家に脅迫状が届くことも珍しくありませんでした。その頃は、上司から反社への融資を引き上げろと命じられたら、部下は必死で回収に回ったものです」ところが1994年に起きた住友銀行名古屋支店長射殺事件を機に、銀行員の足がすくんでしまう。「こうなると上層部も無理強いできない。警察が全行員の警備をするなんて、物理的にできないわけですから」(江上氏)

もちろん、誰だって暴力団を相手にするのは恐ろしい。面と向かってしまえば、融資を断りきれなかったという銀行員がいても不思議はない。だが、みずほ銀行だけで230件もの問題融資があったのだから、これは組織的にタガが緩んでいたとしかいいようがない。「一番行けないのは、銀行員に人を見る目がないということ」というのは経済ジャーナリストの荻原博子氏だ「いま、反社は銀行をターゲットにしていますよ。自分たちを排除するノウハウが全く薄っぺらであることをよく知っているからです。データ紹介をするだけならコンピューターで十分。人の裏が見えないようではバンカーとは言えない」

人を見る目がないから、融資相手が暴力団関係者がどうかを見抜けず、社内処分が世間の普通の大人からどう受け止められるかも見誤ってしまう。『同和と銀行』の著書でノンフィクション作家の森功氏が語る。「反社を見抜けないのは仕方ない、と言わんばかりの銀行の態度はあまりにも無責任で傲慢。いってみれば正体不明の人間に融資をしているわけで、恥ずべきことでしょう。バンカーとしての倫理観が欠如していると言わざるを得ない。返上・返還された報酬を税金として国庫に納めるぐらいのことがなぜできないのか」いま、銀行に最も求められているもの。それはごく当たり前の「世の常識」なのではないか。




『週刊現代』12.7


加藤  |MAIL