加藤のメモ的日記
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2013年10月29日(火) 放射能汚染水の実情

世界的科学者が目撃した原発汚染水の海域と、放射能汚染の実情

今この瞬間も汚染水は海へと漏れ続けている。海はどれほど汚染されているのか。魚は食べていいのか。他にいかなる悪影響を及ぼすのか、いまだ未知数だ。事態を究明するために世界の力を借りよう。


とても深刻な調査結果

「私たちのチームはこれまで4度来日し、原発から1�劼里箸海蹐泙廼瓩鼎い導た紊覆匹猟敢困鬚靴討い泙垢�、汚染水は漏れ続けています。いくら海水で薄まっても、魚がいる場所としては、福島の沿岸は最悪の場所です。残念ながらいくつかのシーフードについては、食べられるレベルではありません」世界最大規模の独立系研究所である、米国のウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー博士は福島近海の汚染状況についてこう語った。

福島第一原発の汚染水は、コントロールされるどころか、日々新たな問題が見つかっている。10月に入ってからも、高濃度の放射性物質を含む雨水がタンクから流れ出る事故があったばかりか、原子炉を冷やす為に使用した汚染水が新たに漏れていたことがわかるなど、次々と問題が発覚している。

こうした福島の現状は、世界から不安の目で見られているが、福島第一原発事故直後から、一貫してこの汚染水問題の調査にあたってきたのが、ベッセラ−氏だ。ベッセラ−氏は研究者としてのキャリアの大半を、海洋中における放射性物質の研究に費やしてきた世界的学者。チェルノヴィリ原発事故の際にも、黒海の放射性物質の影響を調査・研究している。

福島原発事故でも事故直後の2011年4月、他の日本人研究者と連名で「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という論文をまとめた。この論文は、世界で最も権威のある『ネイチャー』への掲載も決まっていた。ところが、日本の気象庁がベッセラー氏の記述は、風評を煽るとして削除を求めた経緯がある。つまり、ベッセラー氏は日本の役所が隠したい内容でも、科学者の良心に従って、その危険性を説いてきた反骨の科学者といえる。同氏は言う。

「私たちは研究所以外のどこからもお金をもらっていません。政府から独立した研究機関が調査することが重要です。日本政府はもっと海洋調査を真剣にやるべきだと思います」その後もベッセラー氏は、東京大学大気海洋研究所の西川教授や、ストーニーブルック大学教授で、海洋汚染の専門家であるニコラス・フィッシャー教授らとチームを組んで福島原発事故による海洋汚染の調査を続けており、直近では今年9月8日から14日まで、福島近海の海水サンプルの採取を行なったばかりだ。

一口に海洋汚染の調査というが、この作業は長期間にわたる地道なサンプルの採取と、分析のための莫大な時間を必要とする。ベッセラー氏は海水と海底の沈殿物の調査を担当している。「今回の調査では、異なった海域の海水のサンプルを100カ所で採りました。一つのサンプルにつき20リットルなので合計2トンです」20リットルでやっとセシウムのアイソトープ(原子)一つを検出するのに十分な量になる。一方、海水の沈殿物はあちこちの海底にチューブを差し込んで採取します。これは300箇所で集めました。今回は一週間、船に泊まり込んで作業しました。時には36時間ぶっ通しで働き、少し眠って、また8時間働くといったペースでした」

魚から放射能が出ている

調査の費用も、日本やアメリカの政府が出しているわけではない。彼ら研究者が自ら調達して行なっている。これも調査に伴う大きな苦労の一つだ。「海洋汚染の調査には、とにかく大変な時間と費用がかかります。今回のクルーズだけでも10万ドルはかかっている。さらに、一つのサンプルの分析につき数百ドルかかりますが、その分析が何百もあるんです」

試料は高感度のゲルマニュウム検出器で調べられるが、検出器の価格は、1台6万ドル。また、一つの資料のセシウムの方型を特定するのに24時間かかる。検出が難しいストロンチュウムなどはそれよりも時間がかかるという。そのため、資料が得られたらすぐ分析・評価とはならない。しかも調査は被曝の危険と隣り合わせだ。

「船では、ガイガーカウンターを常に携帯しています。サンプルを集めるときに、自分たちが安全かどうかを確認するには、常に放射能量をモニターしつつ作業する必要があります。危険は避けたいですから」分析結果は来年2月末の科学会議で発表する予定だと語るベッセラー氏は、「原発汚染水の海域」についてこう語る。「海洋汚染はコントロールされているという安倍首相の発言は理解できません。私から見れば、まったくコントロールされているようには見えない。海洋汚染自体は、人体へのリスクという観点から言えば、水泳しても大丈夫でしょう。しかし、魚介類の汚染は、魚にガイガーカウンターを当てるだけで検知できるほど高いレベルです。これは、食べても安全とはとても言えないと考えています」

では、その魚介類の放射能汚染の実情はどうなっているのか。魚介類の調査を行なっているフィッシャー氏は次のように言う。「魚の種類によってはかなり汚染度が高いと思われます。すでに海底の堆積物はいろいろな放射性物質で汚染されていることがわかっています。我々は5月と9月に福島近海で魚などを採取しましたが、今はまだ5月に採取した魚などを分析しているところ。9月に採取したものはさらに先になるでしょう。ただし、魚の放射能汚染は急に汚染濃度が下がることもなければ上がることもありません」ちなみに水産庁の最新データ(9月9日付)によると、福島ではアイナメ、イカナゴ、スズキ、ヒラメ、カサゴなどに出荷制限がかかっている。

政府の調査は信用できない

世界的な科学者チームが汚染水問題を調査してくれるとなれば、日本政府がバックアップするのが当然のように見えるが、それがないため、彼らの調査の方法は驚くほど原始的だ。「魚の採取は私の大学の研究生が行ないます。非常にローテクな方法です。つまり、毎日20時間、いろいろな場所でひたすら釣り糸を垂れるのです。こうして得られたサンプルを、今度はガンマ線検出器にかけるためにすり身に加工します。これに2週間。それで、やっと検出器にかけるわけですが、魚一匹を厳重に分析するのに5時間はかかるのです。

この機械は非常に高価で、我々が使えるのはわずか5台しかありません。予算がないので台数も限られているからです。研究は非常にスローで地味なもの。もし機械がもっとあれば早く分析して発表できるのですが…」(フィッシャー氏)

調査に手間がかかるうえ、予算が限られているために、時間も余計にかかってしまう。プランクトンの汚染を調べている西川氏も時間がかかるのは仕方ないと語る。「簡易的な検査ならそれほど時間はかからないでしょうが、ストチウムなどは時間がかかります。濃度が低い場合は、科学的に信頼できる値を得るまでにさらに長い時間がかかるのです。私は主に動物プランクトンに蓄積した放射性核種を調べていますが、現在の濃度レベルでは測定に時間がかかるのもやむをえません」

ただ、科学者たちが海水や魚、プランクトンの分析を慎重に進める一方で、9月25日から福島北部沖で試験漁が3カ月ぶりに再会した、という現実がある。タコやイカなど約5トンの漁獲物が水揚げされ、これらのうち、検査で「安全」とされたものは、東京・築地市場などにすでに出荷され、我々の食卓にのぼっている。この場合の「安全」とは一体どういった根拠に基づくのか。水産庁魚場資源課の担当者に話を聞いた。

「検査はまず、サンプルの魚のうち、人の口に入る部分を全てミンチ状にして、ゲルマニウム検出器などに入れます。分析にかかる時間は水産庁が委託している機関では、1キログラムを1時間ほどで測っています」この方法だとなぜ短時間で検査結果が得られるのかというと、セシウムの量だけを調べているからだ。それだけなら1〜2時間で結果が出せる。科学的には厳密といえないが、そもそもその魚が食べられるかどうかを調べるのに、何カ月もかけるわけにもいかず、セシウムの基準値以下なら人体に影響はないという厚労省の判断に頼るしかないのが実情だ。

しかし、ベッセラー氏は次のような懸念を明かす。「セシウムよりもストロンチウムの方が心配です。ストロンチウムは骨の中に入り、長期間にわたって残り続けます。2011年に比べて海洋のセシウムは減っていますが、ストロンチウムの量は50倍になっています」現に、タンクからの汚染水漏出事故では、ストロンチウムの量は50倍になっています」

タンクからの汚染水漏出事故ではストロンチウムが大量に海に流れ出たことが確実になっている。現在、市場に並ぶ福島近海の魚介類はすべてセシウム検査をクリアしたものだが、ストロンチウムは大丈夫なのかという不安を持つのは当然だろう。そうした不安を払拭するためにも日本はもっと柔軟になるべきだと、ベッセラ−氏は言う。「最も重要なことは、国際グループによる調査体制の構築です。世界各地にいるそれぞれの専門家の協力を得てチームを作る。日本だけでは解決は無理です。私も協力を惜しみません」政府はこの世界的科学者の声に耳を傾けるべきではないだろうか。


『週刊現代』10.19


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