加藤のメモ的日記
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2013年04月06日(土) 末期ガンに勝った人々

なぜ奇跡は起きたのか 手術をせずに助かった人々

ステージ�犬離�ンの場合、5年生存率が10%を切ることも多い。つまり90%いじょうがしにいたる。だが、「末期ガン=死」ではない。そこから生還した人々には奇跡を起こした理由があった。

進行ガンを経験した道中さん(66歳大阪)が口の中に違和感を覚えたのは2008年の夏のこと。「下の左奥にチクチクする痛みを感じた」という。口内炎だろうと思って放っておいたが、そのうち食事も呑み込むのも辛くなり、夜も痛みで眼が覚めてしまうようになった。検査を受けると、すでに頸部のリンパ節にも転移があり、病期はステージ��a。ガンのステージは4段階あり�犬郎任眇覆鵑西�態だ。進行の度合いによりaとbに分かれる。

「どこの病院でも舌の3分の2を畿らなあかんと。顎の骨もリンパ節も取る必要があるといわれました。切ったあとは食べられない、話せない、よだれが出っぱなしで、うまく飲み込めないからしょっちゅう誤嚥性肺炎を起こすことになると。肺炎だって一歩間違えば命取りになるし、舌を切っても再発はあり得ると聞いた。そこまでして生きていても……と思い、手術は絶対にしないと決めたんです」

妻の浩子さんもそんな夫の気持ちに理解を示した。「壮絶な闘病の現実を知り、この人はその前に自殺するんじゃないかと心配になりました。それならば治療をせず、スーッと逝きたいんやろうなと思ったんです」そんなとき、夫妻に一筋の光が射した。サードオピニオンを受けた先で「陽子線で切らずに治す治療をする医師がいる」と聞いたのだ。それが食道ガンや進行舌ガンの治療のパイオニアである南東北ガン陽子線治療センター(福島県郡山市)の不破信和医師(現・兵庫県立粒子線医療センター院長)だった。

ガンの痛みで話すのが困難だった夫に代わり、浩子さんが翌朝電話をかけた。「泣きながら『先制こんな状態なんですけど、助かるでしょうか』と言うたら、全部話を聞いて『僕は舌だけでなく、命も守りたい』言ってくださったんです。その一言で心をきめて主人と郡山へ向かいました」不破医師が行なっているのは、抗がん剤と放射線、陽子線という強力な放射線を組み合わせた独自の治療法だ。大きな特徴は、こめかみの動脈からカテーテルを挿入して抗がん剤を舌だけに流し、同時に青脈から副作用を抑える中和剤も注入する「動注治療」。これによって吐き気などが抑えられ、腎臓機能が悪く治療を諦めていた人や高齢者でも治療が可能になる。

陽子線は通常の放射線より威力があり、ピンポイントで照射できるのが長所である。治療は、点滴の抗がん剤→通常の放射線→動注と陽子線の順に行なう。現在、進行舌ガンに対してこの方法を行なうところは、日本でここ以外にない。動注治療20年の経験を持つ不破医師が道中さんのCT画像を見て気になったのは、舌に移る黒い影だった。「深い潰瘍を示すもので、動脈から出血が起きるのは時間の問題でした」処置が遅れれば、血液が肺に入って窒息死する危険があるという。実際それは数日後に起こった。

「一番辛かったのがこの治療法でした。突然舌の奥から血がドクドク出てきて止まらなくなった。それを知った不破先生が飛んできて、私の口に指を突っ込んで2時間近くじっと抑えて止血してくださったんです」その後に動注治療を始め、出血は無事収まり、病状は徐々に回復に向かった。「希望と諦めで気持ちが揺れる中、動注治療が始まったら痛みが少しマシになったんです。ひょっとしたら助かるのかなと思った。陽子線の治療が半分ほど進んだ時に、先生が『道中さん、もう大丈夫や』とおっしゃったんです。専門的なことはわからなくても、熱心な先生にそういわれたら、少々痛くても頑張れました」

すべての治療は2ヶ月で終了。抗がん剤の影響で無数の口内炎ができ、一ヶ月は食事に難儀したが、なくなっていた味覚も数が月で戻った。舌ガンは「2年以内の再発が多いため3年が一つの目安になる」(不破医師)というが、道中さんは、再発もなく治療から4年が経過した。「唾が出にくいので、水を飲みながらですが、だいぶ話せるようになりました。舌を切らずに治ったといっても回りは信じないんですよ。誤診やったんちゃうんって(笑)」

最高レベルの技術と心を備え持つ医師に巡り合えたこの幸運が命をつないだことは間違いない、とくに道中さんは自暴自棄にならずに治療先を探した懸命な努力がその運を手繰り寄せた。だが、厳しいガンは決して患者一人では乗り越えられない。家族や周りが明るく温かく根気よく支えなければ、現在の回復はあり得なかっただろう。



『週刊現代』12.29


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