加藤のメモ的日記
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2012年08月17日(金) 北朝鮮革命前夜

〈北朝鮮は、大国の仲間入りをすると言っておきながら、まったく状況が好転しません。平壌市民は「金正日が、人民を餓えさせる以外に何をしたのか」、「金正恩が後継者になり、さらに生活が苦しくなったのではないか」と露骨に口にしています〉

民族衣装を着て楽しそうに踊る人々、金正恩第一書記の姿を見て万歳をする軍人、軍事パレードを誇らしげに眺める民衆……。世界各国で放映された北朝鮮の「太陽節」の映像を見ると、経済情勢、食糧事情がどれだけ厳しくとも、この国の人民たちは正恩大将のもと、一丸となっていると錯覚してしまう。

だが、実情は違う。本誌は韓国の情報機関が作成した。最近平壌から逃げ出してきたという脱北者男性の証言をまとめた資料を入手した。冒頭で紹介したのは、その証言の一部だが、これを読むと北朝鮮国内で指導者将に対する不満が高まり、いまにも”革命の狼煙”が上がらんばかりの緊迫感に包まれている様子が伝わってくるのだ。

〈大きな変化が起こり始めたのは、昨年の2月ごろからです。平壌の中心部から10�劼曚瀕イ譴針�景台いうところに、故、金日成主席の生家が保存されているのですが、この生家の扉が何者かによって盗まれるという事件が発生したのです〉〈国内各地にはさまざまなモニュメントが建てられていますが、昨年4月には労働党創立を記念して建てられた党の一部が破壊され、さらに同年10月には金日成主席の妻・金正淑の銅像に破損が見つかるという事件が起こったようです。自然にできた破損ではなく、鈍器のようなもので傷つけられた跡があったとのことです〉

言うまでもなく、北朝鮮において金一族を冒涜することは最大の罪である。しかし、一族を侮蔑するような”反動的行為”がいくつも確認されている、というのだ。さらに証言は続く。〈平壌市内で、現体制を批判するような落書きも見つかっています。大学通りと市場通りの道路で、昨年の9月には『世襲は社会主義の理念に反する行為だ』『金正恩を打倒しよう!』という落書きが発見されました〉 

今年初頭には、韓国の民間団体「拉致脱北人権連帯」が北朝鮮最大級の製鉄所で金正恩を中傷するビラが見つかったと発表したが、北朝鮮国内の至る所で、こうした批判や中傷が行なわれているのかもしれない。そんなことを思わせる証言だ。〈昨年より、平壌市内では繁雑に停電が起こっています。平壌市民の間では、「電気も自由に使えない状態でなにが『2012年には大国の仲間入りを目指す』だ」と指導部層に対する不満が高まっています。昨年7月ごろには、平壌市民が電力不足に集団で抗議して、それを取り締まろうとする保安院との間で衝突が起きました〉

北朝鮮住民の怒りは、まさに爆発寸前なのである。こうした状況に焦りを感じた正恩第一書記は、人民の関心を買うための指示を次々と出している。「今年初頭、『平壌の人民を飢えさせてはいけない』と配給用の食料調達を支持したのを皮切りに、太陽節の直前には学生らに制服をプレゼントするなど、配給を強化している。さらに『太陽節には平壌市内で停電が起こらないようにせよ』と号令を出し、実際太陽節の一時期には、停電が解消されたようだ」(韓国国防部関係者)しかしこの程度の対策では、「焼け石に水」というものだろう。

訪中の日が「Xデー」か

さらに、人民の間だけでなく、軍部内でも不満がくすぶり始めているのではないかと明かすのは、北朝鮮情勢の分析を行なっている中国外商部の関係者だ。「最近接触した人民軍の幹部から、世界情勢に敏感なエリート層や軍の若い層の一部で『現在の指導部は石頭の連中ばかりで、これでは我が国の未来に希望が持てない』『チャンスがあれば何とか海外に逃亡したいものだ』といった声が上がっている、と聞いた。不満の直接の原因は、軍部に支給される物資が減少してきていること。それまでは”小遣い稼ぎ”として黙認されてきた物資の密輸入に、上層部が厳しい目を光らせるようになったことだ」

故・金正日総書記は、軍部内で不満が高まっていることを察知すると、幹部らに高価な贈り物をしてその不満を収めていた。しかし、泣きっ面に蜂といべきか、父に倣って不満分子に贈り物をしようにも、正恩第一書記の懐には十分な資金がないのだという。「贈り物の購入には金一族が握る『官房機密費』のようなものがあてられていたのだが、相次ぐ経済制裁によってこの資金が不足し、満足に贈り物を渡せない状態になっている。焦った金正恩は、『外貨を稼ぐために、労働者をもっと多く海外に派遣せよ!』と指示を出したようだ。

現在も北朝鮮は世界各地に3万人ほどの労働者を派遣しているが、さらに1万人ほどの派遣を検討しているという。新たに大勢の労働者が派遣されれば、海外の空気に触れた労働者が現体制に不満を持ち、揺さぶりをかけるような行動に出るだろう」(韓国国防部関係者)”体制維持”のための労働者派遣が、逆に現体制を揺さぶることにつながるかもしれないとは、なんとも皮肉である。

金正恩は経済援助を求めて、年内にも中国を訪問する予定だと囁かれている。実現すれば新指導者となってから初めての海外訪問であり、大変な注目を集めるのは間違いない。しかし、国内情勢が不安定な状況で国を空ければ、その瞬間にも平壌市内で”革命の火”が上がる可能性があるのだ。「北ア朝鮮崩壊Xデー」のカウントダウンは、すでに始まっている。



『週刊現代』5/26


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