加藤のメモ的日記
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| 2012年08月08日(水) |
米が北朝鮮を攻撃しない理由 |
アメリカのブッシュ大統領がイラク、イラン、北朝鮮の三国を「悪の枢軸国」と呼んだのは‘02年のこと。この10年の間に、イラクはブッシュ政権によって倒され、イランはオバマ政権とにらみ合いを続け、いつ戦争状態に突入してもおかしくない状態となっている。翻って北朝鮮だけは無傷のままだ。核の力を背景に「恫喝外交」をくり返してきた北朝鮮。アメリカが手を出してこないのをいいことに、この国は世界一の「ならず者国家」と相成った。
‘94年の6月にクリントン大統領は、北朝鮮の攻撃に移る前に「各施設を叩いて北朝鮮と全面戦争になった場合、どんな事態が想定されるか」をシュミレートするよう各方面に指示した。ところがシュミレーションの結果は、アメリカにとって全く予期していないものだった。そしてこの結果こそが、今もってアメリカが北朝鮮攻撃を躊躇する、最大の理由となっているのだ。
「ペンタゴンから出されたシュミレーション結果は、開戦から90日で米軍に5万2000人を超える人的被害が出て、さらに韓国軍にも40万人もの死傷者が出るだろう、というものでした。民間の被害者も加えれば、もとっとひどい数字が出るのは言うまでもありません。無論、最終的にはアメリカが勝つという結果ですが、戦費は1000億ドルを超えるだろう、という予測も出た。あまりにも被害とコストが大きすぎるため、計画は白紙にせざるを得なかったのです」(辺真一氏)
北朝鮮人民軍の装備の大半は、中国製やロシア製の旧式ばかり。世界最高の軍事力を誇るアメリカが、なぜ北朝鮮との戦闘でこれだけの被害を出す、という結果が出たのか。軍事問題に詳しい青山独立総合研究所社長が解説する。「戦車部隊や空軍といった『正規軍』に限った戦闘を考えれば、アメリカの圧勝となります。しかし、北朝鮮には暗殺や破壊工作を専門とした特殊部隊が存在します。この特殊部隊との戦闘を想定すると、『死傷者の数はアンカウンタブル』という結果が出たのです。
VXガスやサリンといった化学兵器を使用してくることを考えればこれに対抗する手段を持たないアメリカ軍は、想像以上に脆弱だということです。アメリカが北朝鮮を攻撃しない最大の理由は、ここにあるのです」現在、北朝鮮は核を保有している。アメリカと北朝鮮が全面戦争を行ない、万が一にも北朝鮮が核による反撃に出れば、シュミレーション以上の悲惨な結果が出るのは目に見えている。
ニクシュ氏は「今の北朝鮮を鑑みると、アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、局地的な戦闘ではなく、全面戦争、それこそ『第二次朝鮮戦争』の幕開けとなるでしょう。北朝鮮はソウルを攻撃するためのミサイルやロケット、大砲を数多く持っています。じつはソウルに住んでいるアメリカ人の人口は、オールバニ(ニューヨーク州の州都)に住んでいるアメリカ人の人口よりも多いのです。ですから、ソウルが攻撃されれば、多くのアメリカ人が死傷する可能性があるのです。そのために、アメリカは容易に攻撃できないのです」金正恩をひっ捕らえようとして北朝鮮を攻撃すれば、自国も甚大な被害を被ることになる。いわば、アメリカは北朝鮮に人質を取られているようなもの。自国民を危険にさらしてまで、北朝鮮を攻撃する必要はないと判断しているようだ。
中国参戦の可能性
さらにニクシュ氏は「もう一つ、アメリカが攻撃を躊躇する要因は中国にある」と指摘する。「現状では中国は、北朝鮮を抑え込むように努力していますが、しかし、もしアメリカが北朝鮮を攻撃すれば、中国がどう出るのかは、かなり不透明なのです」実は、中国と北朝鮮の間では、アメリカに侵攻されたことを想定したある条約が結ばれている。1961年周恩来と金日成の間で締結された「中朝友好協力相互援助条約」がそれだ。朝鮮戦争で中国が北朝鮮に義勇兵を派遣して共闘したことがきっかけとなり、『もし、中国が北朝鮮の一方が侵略を受けた場合には、互いに軍事援助を行なう』という約束が交わされたのだ。
50年も前のこの条約がいまだに生きているのかについては、専門家の間でも意見が分かれている。前出の青山氏が北京で会談した中国人民解放軍幹部は、こう述べたという。「北朝鮮がアメリカの攻撃を受けた場合、中国共産党がなんと言おうとも、それが中国への攻撃にならない限り人民解放軍は絶対に介入しない」‘94年に行なわれたシュミレーションでも、中国が参戦する可能性は考慮されなかったという。しかし、辺真一氏は、まったく反対の見方を示す。
「この条約は『自動介入』が前提です。つまり、北朝鮮が中国が他国から攻撃されれば、『無条件に介入する』ということです。昨年、同条約の成立50周年の記念式典が北京と平壌で行なわれた時にも、『自動介入』の条項は取り払われなかった。ロシアも北朝鮮との間で同様の条約を結んでいたのですが、エリツィン政権のときに『自動介入』の条項を外しました。中国も自動介入条項を外すことはできたのですが、そうはしなかった。1300�劼發旅餠�を共有する中国と北朝鮮は、いわば、へその緒でつながっているのです」
北朝鮮と事を構えると、中国との戦争も視野に入れなければならない。アメリカにとってどれだけリスクの高い選択かは論を俟たないだろう。「北朝鮮と中国は、アメリカが北朝鮮を攻撃できないような状況をうまく作り上げることに成功した、というわけです。そして北朝鮮は絶妙なバランスの上に立って、『恫喝外交』『瀬戸際外交』を行なってきたのです。「世界の警察」を気取っていても、実際は核兵器一つ保有されただけで何も手を出せなくなる。そんな国際社会の厳しい現実が、米朝関係を通じて見えてくるのだ。
『週刊現代』5/26
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