加藤のメモ的日記
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……翌朝になっても事態にまだ変化はない。私は相変わらず黒海艦艇の基地セバストポリに入れずに、ヤルタで待機しているしかなかった。そこであいている早朝を使い、ヤルタからセバストポリに向かって車で40分ほどの、ファロスにあるゴルバチョフのの別荘に取材に出かけた。91年8月19日の保守派によるクーデターの折に、彼が夫人とともに軟禁されていた場所だ。
ファロスはクリミア半島の最南端にあって風光明媚なクリミア半島黒海沿岸でもひときわ美しい海岸線を持っている。ゴルバチョフはこの海岸を1�匐瓩�も占有し、宮殿のような邸宅、ゲストハウスなど数棟の家屋を所有していた。もちろん自分の金で買ったわけではない。国民の税金で建てたものだ。そこで働く料理人から警備員まで約300人の人員も、国民の税金で賄われていた。
私はこのチャウチェスク宮殿にも匹敵する別荘を見ていて、彼に抱いていた一片の同情を捨てた。たしかにゴルバチョフはペレストロイカによって民主化への道を開いた。しかし彼は権力によってツァーへの道を歩み始めていたとみたられても仕方ないだろう。かってアレキサンドル・ヤコブレフがゴルバチョフのもとを去るにあたって、「権力は人を腐敗させてしまう」と語った。
ゴルバチョフの別荘を見て、私はこのヤコブレフの言葉を思い出さざるをえなかった。ゴルバチョフは国民に捨てられるべくして捨てられたのだ。そんなゴルバチョフを日本に呼んで接待狂いする意義がどこにあるのか。4月11日に来日した元ソ連大統領ゴルバチョフを巡る、日本の政界・大新聞のハシャギぶりは目に余るものがあった。
この愚かなまでの興奮ぶりほど、今日の日本の危うい状態を正しく物語っているものはなかった。ゴルバチョフが行なったペレストロイカという歴史的な功績と、その後の彼の政治的堕落はきちんと分けて評価しなければならない。日本人特有のセンチメンタルさといい加減さが、致命的なまでに外交を誤らせようとしているのだ。
プラウダは「日本の朝日新聞と読売新聞が50万ドル(約6500万円)ずつ出してゴルバチョフを呼んだ。また創価学会も池田名誉会長の会見のために多額の謝礼を支払った」と報じ非難している。私の調べたところでは、それらの金の振込先はロンドンである。こうした日本の外交がロシア国民にバカにされていることはいうまでもない。もはやゴルバチョフは国内に支持基盤がないのだ。
ゴルバチョフもそうした情勢は充分に理解している。イズベスチャ紙によれば、彼はアメリカのフロリダに密かに別荘を購入したという。彼はもはやロシアにとどまれないと自分の将来を見越したのだろう。だから、この華麗なクリミアの別荘は、相変わらずKGBによって厳重に警備されているが、もはやゴルバチョフがここに戻ってくることはない。私は彼の当時の権力者ぶりを知るために邸内の取材を申し込んだが、すげなく断られてしまった。管理はウクライナ共和国ではなく、まだモスクワのKGBが行なっているという。
『赤い帝国の罠』
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