子の年齢:5歳10ヶ月
その日はお通夜があったので、ちーちゃんに200円渡しておいた。 「このお金でばーちゃんとお風呂に行って、アイスクリーム食べなさい」
幼児の入浴料は69円、アイスクリームは120円なので、合計180円である。
ところが父が飲酒していたため、結局二人で銭湯に行くことになった。 その200円はそのまま。
するとちーちゃんは、200円で本当にお風呂に入って、アイスクリームが食べられるのか不安でたまらなくなった。 「ねー、100円2枚しかないがに、アイスクリーム買えんよ。」 「買えるちゃよ。」 「だって2個しかないよ。」 「いいからやってみられ。」 「何でけ?教えてよ。」 「やってみればわかるから。」 「イヤだ。」 「じゃあ、お風呂に入らんが?」 「入るけど。」
「どっちみち券買わんな入れんやろ」 「イヤだ!」
ちーちゃんは銭湯の玄関で、どたーとひっくりかえった。 はああ、久しぶりに見たな。来年小学生なのに、もう勝手にしてくれ。
放置して女湯に入ろうとすると、追いかけてきて泣く。
「券買わんと入れんよ。」
しぶしぶ200円を入れて、60円の入浴券を買う。
「おつりは?」 「おつりない。」 「ないわけないでしょ!」
じゃらじゃら出てきたおつりを、手のひらに載せて
「数えてごらん」 「イヤだ。」 「数えてごらん!」 「イヤだ」
またも自販機の前で、どたー、とひっくりかえった。 もうイヤだこんな5歳。
なんとか女湯まで連れて行って、お金を見せた。 「100円が1枚と10円が4枚。アイスクリームはいくらですか?」 「100円1枚と10円2枚。」 「じゃあアイスクリーム買えますか?」 「買える!」
ちーちゃんは途端に嬉しそうな顔になった。
今まで10円10枚で100円って解ってなかったんだな〜。 でもこれで本当に解ったのかな?
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