2003年12月05日(金) |
木口小平は死んでもラッパを離しませんでした |
子の年齢:妊娠35週 読んでいる本:『無痛文明論』(森岡正博著 トランスビュー)
イラクで殺害された外交官の遺体が帰国したニュースの取り扱いを見ていると、「木口小平は死んでもラッパを離しませんでした」というフレーズが浮かんできた。 「お国のために滅私奉公した英雄。」そういう取り扱いだ。 生前の業績にケチをつけるつもりは毛頭ないが、平和の使者たるべき外交官が、アメリカの戦後統治の手先にされて殺された、という事実を隠蔽するために、「死んだ人は偉かった」というのは話がおかしいと思う。 奥大使の奥様には川口外相のむなぐらをつかんで、「こんな目に遭わせるのは、夫で最後にしてください」と言ってもらいたかったもんである(実際には「夫の仕事を誇りに思う」と言ったそうだ)。
このままネオ・ナショナリズムが無意識下で浸透していけば、国民の総意で平和憲法が改正されてしまうに違いない。
話は変わるが、今年は結婚したばかりにも拘わらず、沢山本を読んだ気がする。 結婚して2月ほど経ったある晩、「このままでは脳が腐る」と思い立って(夜9時頃だったと思うが)、近くの大きな書店で2時間ぐらい平積みの本を買い漁って読み始めたのがキッカケだった。 折角沢山読んだので、印象に残った本を5冊程挙げてみたい。
1.冒される日本人の脳―ある神経病理学者の遺言 白木 博次 (著) 2.失われる子育ての時間―少子化社会脱出への道 池本 美香 (著) 3.ルネッサンス ― 再生への挑戦 カルロス・ゴーン (著), 中川 治子 (翻訳) 4.サラリーマンでも「大家さん」になれる46の秘訣 藤山 勇司 (著) 5.百万分の一の歯車! 松浦 元男 (著)
『冒される日本人の脳』はタイトルどおり、白木博次氏の広汎な業績と残された課題について書かれている。まるで『白い巨塔』の里見助教授みたいに高潔な人物のようだ。そしてタイトルの「冒される日本人の脳」というのは、全ての日本人が軽度の水俣病になっている、という意味である。 『失われる子育ての時間』はタイトルと中身があまり一致していない気がするが、日本では親が子を教育する権利が充分補償されておらず、女性の働く権利を保障すると銘打って保育園の整備をすすめているが、実は世の母親をうまくおだてて所得税収入を増やそうとしているにすぎない、といったことが書いてある。 そう言われてみればそんな気もする。少なくともそういう考え方があってもいい。働く母親が必ずしも全ての女性の理想ではないはずだ。 『ルネッサンス』にはカルロス・ゴーンの半生記が書かれていて面白かった。ピーター・ドラッカーなんか読むより明日の糧になる。 『サラリーマンでも「大家さん」になれる46の秘訣』これはハウツー本なんだけど、こういう生き方もアリか、という点で面白かった。因みに著者は兼業大家さんを始めた数年後、勤めていた会社が倒産したため、現在は専業大家さんをしているということである。 『百万分の一の歯車!』はオヤジの自慢話と会社の宣伝の臭いがプンプンする本だ。でも、若者を信用しろ、とか経営者はゴルフの練習などしている暇があったら勉強しろ、という主張には頷かされる。
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