子の年齢:妊娠32週 読んでいる本:なし
会社の旅行会で雅楽倶に行った。メンバーは同期の女子3人。全国の温泉を紹介する番組などでも取り上げられる人気スポットらしい。 久しぶりの好天に恵まれ、散り始めた街路樹の落ち葉を巻き上げて車で約40分。着いたところは、以前湧き水を汲みに来たところのすぐ横だった。 斜面の前のこぢんまりした建物に、どっしりした石の扉がついている。車をどこに停めたものかと迷っていると、小紋の女性が手招きする。若女将といった風情だ。 着物も帯もそんなに高価なものではなさそうなのだけれど、とてもよく馴染んでいた。 北陸の温泉旅館などに行くと、女将やら仲居さんやらは過度に丁重だが、反面妙なプライドが見え隠れしていて、こちらも気張ってお金を使わなければならない感じがするが、この女性には全くそういった無駄がない。 さて、シンドバットが見つけた石窟のようなドアを抜けると、そこはまるで「コンランショップ」のソファー館のようだった。ダム湖に向かって全面窓が取られていて、赤やら白やらの形もさまざまなソファやらカウチやらが各々コーヒーテーブルを囲んで配置されている。これがロビーなのだ。そしてフロントにせよ、ロビーにせよ、続く廊下の幅にせよ、全てがこぢんまりとまとまっていて、完成されていた。 全てがデザイナーの計算どおり、劇的ビフォアーアフターのアフターといった感じだ。音の響き方や、明るさに至るまで計算しつくされているに違いない。 さて、わたし達は小広間で昼食コースをいただくことになっている。畳敷きの掘りゴタツ式のなかに一枚板のテーブルがあって、これは「とんねるずのみなさんのおかげです」の「食わず嫌い対決」の会場のようだ。 食事の前に温泉に入る。浴室もまた完成されている。岩で作られた露天風呂からはやはりダム湖が見える。暖かい日差しの中で温泉につかる心地はまさに「小原庄助さん」だ。 よく、入浴中に胎動を感じる、と聞くが、お風呂ではちーちゃんはあまり動かない。わたしの体の血行が悪いからなんだろうか?なでたり話しかけたりするのだが、あまり反応がない。そのくせ、湯上りにぼーっと鏡を見ていると、べこっ、と足が出て来たりする。 さて、お食事は1皿づつ出てくる懐石料理。普段ギョーザやらカレーやらを食べているお口では上品過ぎて味がわからない。アワビの石焼が旨かったのが印象に残った。 最後にアロママッサージ。またしても計算しつくされた瞑想的ほの暗さの中でピロピロ音楽とアロマオイルとマッサージで癒されていく。折角お風呂に入ったのに、顔にオイルのべたつきが残ったのちょっと嫌だったけど、あんなにソフトタッチでマッサージされたのは初めてだった。 いや、まだ最後があった。それはお茶。これぞビフォアーアフターみたいな洋風茶室でお抹茶をいただく。どうして茶室まで洋風にする必要があるのか、なんてことは考えちゃいかん。 件の若女将が季節の和菓子(菊花のあんきり)の後、お抹茶を持ってくる。茶道の心得がないので、不調法だ。茶碗をどう持つんだったか。回すんだったっけ?何回で飲むんだっけ?とにかくいろいろ悩む。顔にハテナマークが浮かんでいたに違いない。
以上てんこもりコースで3時半。 どうして半日でここまでやるかといえば、会社の補助金を使い切らなくてはいけないから。 年に1回こんな贅沢する気になるのも、会社のおかげだ。
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