「天の夜曲」宮本輝がやっぱり面白い。 面白いという表現は正しくないな。。。凄い。。。 この小説は彼の自伝的な小説で、主人公の松坂熊吾というのは彼の父親である。
熊吾は9歳の息子伸仁に色々な事を語って聞かせる。 中には子供には難しいと思われることも、頭の片隅にでも残っていればいつか思い出すときもあるだろうと。
熊吾はこれまでに教えた「これが大事だ」という言葉を暗誦してみろと睨みつけた。 「約束は守らにゃあいけん」と伸仁は眩しそうに空を見ながら言った。 「うん。そうじゃ」 「丁寧な言葉を正しく喋れにゃあいけん」 「うん。それも大切なことじゃ」 「弱いものをいじめちゃあいけん」 「よし」 「自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」 「えらい!忘れんと覚えちょったか」
この後もいくつか話は続くのだけれども、今回のこの小説では「自尊心よりも大切なものを持つ」ということが一つのテーマとして流れている。
小説の中で、釈迦が弟子の中でも優秀で頭の良く才気にも優れていたが内に邪悪な野心を持っているダイバダッタを「汝は愚人なり。人の唾を喰らうものなり」と人々の前で辱める。その後自尊心をひどく傷つけられたダイバダッタは釈迦に反旗を翻す。というエピソードについて熊吾が考える。
なぜ釈迦のような立派な人が、わざわざ自尊心を傷つけるやり方をとったのか?ダイバダッタにこっそりと一人のときに諭してやれば良かったのではないか?
そうして一つの結論に辿り着き、息子に、そして自分自身への言葉として 「自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」 という言葉を繰り返す。
ところで 昨日居酒屋で子連れの奥様グループが来ていて、子供達が店の備品をガタガタと動かしても知らん顔。 店の人が優しく「だめだよー」としかってもしばらくするとまだ続ける。 「やめなさい」と冷たい視線で怒ったのは、オレですよ。 子供もびびってやめましたよw
こういう本を世の奥様達も読んでほしいっすよ。
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