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2005年07月19日(火)
『東アジア共同体』谷口誠

『東アジア共同体』岩波新書 谷口誠
《東アジアに地域統合が必要な理由、そしてその問題点》
2000年のシンガポールとのEPA(経済連携協定)まではGATT(関税および貿易に関する一般協定)が原則であった。しかし、FTA(自由貿易協定)が世界の流れの中で日本は現状認識を欠いていた。米国グロバリゼーション下での地域化はGATTの理念と大きくかけ離れている。現在東アジアにあるのはAFTA(ASEAN自由貿易協定)である。アジア通貨危機後の協力関係から今はASEAN+3(日本、中国、韓国)という関係になっている。しかしまだこの三国間のFTAは結ばれていない。「こうしてみると、世界で地域化が拡大し、深化していく中で、北東アジアではこの地域のみポッカリ穴があいたような印象を受ける。」

こういう問題意識で書かれた本書は、日中韓の関係改善の阻害要因になっているのは『歴史認識問題』であるとずばりといって見せる。他にも『日本のアジア外交が行き当たりばったりの対症療法的で長期戦略に欠ける』ともいっている。その通りだと思う。現在の日韓、日中関係はその克服以外には展望が無いと私も思う。しかし、そのための著者が示した処方箋は薬局の「風薬」ぐらいの効果しかないのではないか。

東アジアでの貿易シェアは世界のそれの中ではまだ小さいが、しかし地域統合を達成していないのにもかかわらず、ずっと伸張してきている。その力をさらに活かす道を「本気」で探らない今の政府は、やはり『無能』だといえよう。民間が出来ることはなにか。政府の『歴史認識』を正し、民間レベルの(特に文化面での)交流を急速に発展させることだろう。
(05.05.03記入)