日々あんだら
DiaryINDEX|past|will
恩田陸『茶と黒の幻想』を読んだ。
実は僕、慢性的に屋久島行きたい病なんですが、最近ちょっとその症状が強くなってきていて。 フルマラソンにエントリーしてなかったら、11月の3連休に有給くっつけて屋久島行こうかと思ってました。
そんなところに、『茶と黒の幻想』。 読み始めて4ページ目に気づいた。これ、舞台は屋久島やん!! もうそこから、頭の中は「屋久島行きたい!」「ええなー、こいつら屋久島行けて…」「来年は絶対に行ってやる!」 でいっぱい。(笑) 話が入って来るまでにしばらく読み進めないといけませんでしたとさ。(笑)
*
とは言え、この小説は相当おもしろかった。 恩田陸作品を読むたびに思うんやけど、この人の作品は登場人物が少なければ少ないほど、 舞台が限定されていればいるほど、おもしろい。 これも、主要登場人物は4人だけ。 そこに回想や会話で出て来る人が何人か。重要なのはその内2人。 なのにすんごい深い。
ストーリーは学生時代の友人男女4人でY島(と作中では表現される)へ旅をする話。 それぞれの過去の謎を持ち寄って、森の中を歩きながらその謎に迫って行く。 って書いたら、間違ったことは書いてないけどなんか違う!なんか違うぞおれ!! なんというか、おれの文章力でかいつまんで書けるほど浅いお話ではなかったです。 これ、映画にしたらおもしろいやろうなぁ。 上手く映像化できたら、ものすごく上質なロードムービーになりそう。 でも、半分が回想シーンと心の声で占められそう。(笑)
この物語は、恩田陸の短編集『三月は深き紅の淵を』の作中作としてタイトルだけ出て来るお話なんやけど、 ぶっちゃけ『三月は〜』よりこっちの方が面白かった。 この前に同じく『三月は〜』の作中作として出て来る『麦の海に沈む果実』も読んだんやけど、 この三作品が奇妙に絡まり合ってて読んでてちょっと混乱した。 関連してるのか、関連してないのか、同じ名前の登場人物が出て来るんやけど、それは同一人物なのか、 単なる記号として同じ名前にしてるだけなのか。 完全に繋がった一連の物語、というよりも、それぞれが独立したパラレルワールドの物語、って印象かなぁ。 それをこういう手法で創造するってすごいと思う。 (良くわからん表現でごめんなさい。でも読もうと思う人がいたら、ネタばれはできひんし…^^;)
あと、この『茶と黒の幻想』は4つの章から成っているんだけど、 それぞれが4人の主要登場人物の一人称で書かれている。 これがまた面白い。 ある1人について、他の3人が見ている人物像が微妙に違ったり、 その3人の人物像とは全然違うことを本人は考えてたり。 ああ、こういう感じって現実の人間関係でもあるんやろうなぁ…って思うんやけど、 現実世界ではそれを確かめる術がない。 結局、人は他人(どんなに親しい相手でも)を理解していると誤解しているだけなのだ。 いや、ちょっと違うか。 人は自分から見える部分、認識できる部分でしか他人を理解できないのだ。 そして、それはきっと自分自身についても同じなのだと思う。 これもまたパラレルワールドと言ってもいいんじゃないだろうか。
なんてことを考えながら、最後の方は屋久島行きたい!!って意識を忘れて読みふけってしまった。 最後に屋久島を去る場面で「やっぱり行きたい!!」って思ったけど。(笑)
まあとにかく面白かったです。 今度屋久島に行く時にはこの2冊(上下巻)を持って行こう。 そして屋久島の森の中で読んでみよう。^^
|