日々あんだら
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今、福島原発がえらいことになっているんだけど、この事態が落ち着いたら、 まず間違いなく「原発不要論」が出てくるだろう。 なので先に書いておこうと思う。
僕は10年くらい前から誰かに聞かれたらいつも「必要悪」だと答えてきた。 「原発が」ではなく、「電気が」である。 なぜなら、環境に負荷を与えずに発電できる方法を人類はまだ持っていないからだ。
わかりやすいように細かい話を抜きにして書くと、 火力発電は二酸化炭素を大量に放出し、地球温暖化を加速してしまう。 原子力発電は普段は二酸化炭素もほとんど出さないし環境負荷は低いけど、 万一の場合にはどうなるか、現状を見てもらえればわかる通りだ。 そして、現在の日本では、この2通りの発電方式で、発電量全体の90%を占めている。(2009年実績)
話を原子力発電に絞ると、日本全体では発電量全体の約29%。 原子力比率が一番高い関西電力だと全体の約45%に達する。(→ここの5ページ目) この数字を見れば原子力発電を無くしてしまっては、現在の生活や経済活動を維持できないのは明らかだ。
電力消費量を3割減らす、というのがどういうことか。 家庭で使う電力を3割減らしたらいい、という話ではない。 全消費量の内、家庭で消費する電力量などほんの一部でしかない。 大部分は経済活動(工場とかオフィスとか電車とか)で消費されている。 極論だけれども、電力消費量を3割減らすということは、経済活動も3割減らすということなのだ。 身の回りにある全ての工業製品(食品も衣類も車も電化製品も家具も書籍や新聞もなにもかも)が3割減る、 電車の本数も3割減る、乱暴に言うとそういうこと。 その生活に耐えられますか? エコバックやマイ箸を使って満足しているようなレベルの話ではないんですよ。 日本のGDPも3割近く減ることになる。
じゃあ、他の発電方法に置き換えたらいいじゃないか、という意見もあるだろう。 でも、火力発電は二酸化炭素を排出するから国の方針としてあまり作らない方向に行っている。 水力発電は、流れが急で水量が少ない日本の川にはあまり向いていない。 風力発電や太陽光発電は、エネルギー密度が小さすぎて原子力の代替エネルギーには(現状)なりえない。
2000年頃の話なんだけど、1つの例として。 愛媛県に四国電力の伊方原子力発電所がある。1・2・3号と3基の原発が並んでいる。 その3基の発電量を風力発電で補おうと思ったら、松山市全体に風車を立ててやっとなんとかなるくらい。 当時の太陽光発電であれば、愛媛県全体にパネルを敷き詰めてやっとトントン。 しかも、風が吹かなかったり、曇りや夜間にはもちろん全く発電しない。 (もちろん現状では、特に太陽光パネルの性能が上がっているのでもうちょっとマシだと思うけど、 それでも現実的な代替策ではないというのは理解してもらえると思う) (太陽光発電パネルなんて、数年前まで「製造時に必要な電力量>製品寿命の間に発電する総電力量」 だったのだ。つまり、設置すればするほど二酸化炭素を排出してたってこと。最近逆転したみたいですが)
ということで、なにが言いたいかと言うと、原発不要論が出てくるのは当然だし主張するのはいいと思う。 (特に、今回の事故で避難している方々の苦痛や、他の原発の近くに住んでいる方々の不安は想像もできない) でも、その主張をする時には、それに頼らなければやっていけない現在の生活があるのだ、 ということを頭の片隅でいいから置いといて欲しい。 事実の一面だけを見て非難したり賞賛したりするのは良くないと思うので。
結局、人間は環境を傷つけながらじゃないと生きていけない生き物なのだ、 なんて言ってしまうと悲観的すぎるかもしれないけど。(笑)
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