日々あんだら
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2008年09月09日(火) 最近読んだ本




この1週間で読んだ本。



空の中   有川浩著 角川文庫
この人の本は初めて読んだ。というか、今まで名前も知らなかった。
本屋で表紙とタイトルに惹かれて手に取って、最初の3行を読んで購入。
だいたい最初の1〜3行くらいで自分に合う著者かどうかがわかる。あまり外れない。
今回も当りだった。^^

物語は冒頭でいきなり、民間の試験機と自衛隊機が同じ空域で続けて謎の事故に合うところから始まる。
途中までは「現代を舞台にしたSFか?」と思いながら読んでいたんだけど、とても深い人間ドラマだった。
自衛官の父親を事故で亡くした高校生の男の子と、事故の調査を命じられた若い技術者。
男の子の幼馴染の女の子や、後見人がわりの川漁師。自衛隊機の事故で生き残った女性パイロット。
2人の主人公と彼らの周りを固める人々が、みんなキャラが立っていてとても魅力的だ。
どんどん物語に引き込まれる。

そしてなにより、結末が上質だ。
単純なハッピーエンドではないと(少なくとも僕は)思うんだけど、でもとても後味がいい。
何年か後にもう一度読みたいなと思える1冊だった。

ちなみに登場人物の中では宮じいが一番好き。
将来は宮じいみたいなジジイになりたい。(いらんこと喋りすぎるから無理)



トワイライト   重松清著 文春文庫
この人の作品は前から好き。
『流星ワゴン』『熱球』の2冊は僕の中では「泣ける本」のTOP10に悠々とランクインしている。
その2冊には及ばないけど、この本も面白かった。
日曜日に買って、昨日からの出張の移動中の暇潰しのつもりだったのに、
勢いがついてしまってホテルで読み終えた。(笑)

舞台は東京郊外のさびれていく古いニュータウン。
40歳目前になり、小学校卒業の前に埋めたタイムカプセルを掘り起こすために
26年ぶりに同級生たちが集まるところから物語が始まる。
その集まりをきっかけに、それまでバラバラに送って来たそれぞれの人生が急速に絡まり合い、動き始める。

この人の書く物語は子供を描いていても、大人を主人公にしていても、いつもダークだ。
平凡に日々を過ごして来た人たちに降りかかる離婚、リストラ、いじめ、病気 etc.
この社会の中に溢れていると頭ではわかっていても、まさか自分には降りかかってこないだろうと思っている
不幸(そう言うのが妥当でなかったら、苦労)がてんこ盛り。
ラストも、それが解決して終わるわけではない。
状況が好転しないまま終わることが多い。

でも、彼の作品はどれも「ハッピーエンド」だと思う。
状況は悪いままなんだけど、前向きな終わり方なのだ。
「もしかしたら、この後…」と読者が希望を感じるようなラストシーン。
だから、彼の作品もとても後味が良い。
これも例外ではなく、読み終わって気分の良い物語だった。

ラストは、もう一度タイムカプセルを埋めて終わる。
小学生のように単純ではなく、38歳のそれぞれにとって、10年後の自分に残したいもの。
僕にとってはなんだろう?
そう考えてすぐに答えが出なかったことが、いいことなのか、悪いことなのか。


あれ?そう言えばおれらも小学生の頃にタイムカプセル埋めんかったっけ???



ユージニア   恩田陸著 角川文庫
これは、今日の出張帰りの駅で、帰り道の暇潰しに。
羽田からのモノレールの中できっちり読み終えた。(笑)

この人の作品も何冊か読んだことがある。『夜のピクニック』とか『六番目の小夜子』とか。
この人の世界は少し不思議だ。常に何か小さな違和感がある。
その舞台の設定だったり(例えば学校の行事や風習とか!)、登場人物の性格だったり。
でもその違和感は決して不快ではなくて、隠し味的な非現実感が心地よかったりするんだけど。
この人も最近(ここ2年くらい)好きな作家の1人。

この物語はある地方都市(街の名前はイニシャルでしか出て来ないけど、一発でどこかわかる。笑)
を舞台にしたミステリー。
20年以上前に起きた、集団毒殺事件を中心に話が進む。
当時の関係者を、ある誰か(誰だかは最後の方までわからない)がインタビューして回っている、
そのインタビューの語り口が大部分を占める。

ある1つの謎めいた事件について、たくさんの人物が自分の立場から見た事実を語って行く。
最初はそれが誰だかわからないし、読めば読むほど糸がこんがらがってしまうんだけど、
中盤あたりから断片的だったパズルのピースが少しずつ噛み合い始める。
そうしたらもう止まらない。

はっきり言って、犯人が誰かだなんて、第一章から確信できるのだ。
でも、「どうして?」「どうなって?」「なにがあったの?」という頭の中の「?」が
読み進めるに従って1つずつ消えて行くのが楽しい。

ラストは誰も幸せにならずに終わってしまうんだけど、それでも。




さてさて、まだ僕の部屋に読んでいない文庫本が2冊ある。
どっちから読もうかな。

読書の秋ですなー。^^


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