日々あんだら
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2005年11月02日(水) 選択





問題)
あなたは道を歩いているとY字路に差し掛かりました。
右の道を行けば1000円落ちています。
左の道を行けば100円落ちています。

あなたは右の道を進み、1000円を拾いました。

さて、あなたはいくらの利益を得たのでしょうか?



大学1年の春、『経済原論』の2回目の授業の時に出された問題である。
もちろん「1000円拾った後、引き返して左の道を進み100円も拾う」というセコイ回答や、
そもそも「それはネコババじゃないですか?」という正論を吐いてはならない。


答えは1000円、ではない。
あなたは右の道を進むことで1000円を拾った代わりに、
左の道を進んでいれば拾えていたはずの100円を捨てたのだ。

差し引きで、正解は900円の利益。
もちろん、もし左の道を進んでいれば、-900円の利益。即ち900円の損失である。
経済学の基礎の基礎。
こんなもの、わざわざ教科書に書くほどのものでもないかもしれない。



しかし、この問題の答えを聞いた時、僕は目から鱗が落ちる思いがした。
「なにかを選ぶ」ということは「選ばなかった他のなにかを棄てる」ことだということに、
19歳と8ヶ月にして初めて気付いたのだった。
それまで、そんなことなんか考えもせずに生きてきていたのだ。




意識するしないに関わらず、僕たちは毎日毎時毎分毎秒、選択を積み重ねて生きている。

あの時、あの言葉を言わなければ。
あの時、あんなことをしなければ。
「僕も参加しまっす!」というメールを思い切って送っていなければ。
あの本を買わずに、隣の本を手に取っていたら。
「大阪に行くか?」と言われた時、「はい」と答えていなかったら。
カメラをもっと本格的にやってみたいなぁと思わなければ。
あの結婚式の招待を断っていれば。
あの時、今の会社を選ばずにもう1つの方を選んでいれば。
あの時、勇気を出してあの言葉を言ってなかったら。
あの時、勇気を出してあの言葉を言っていれば。
あの大学を選ばなければ。
あの高校を選ばなければ。
野球をやってなかったら。
彼を許してなかったら。
あの時、謝っていれば。

…きっと今の僕はいなくて、全然違う人生を歩んでいるんだろう。



きっと自分でもわかっていないところで、僕は無数の分かれ道を選んでここまで来たのだろう。
その裏に、その何倍もの選ばれなかった分かれ道が落ちているんだろう。
これから先も今まで以上の分かれ道が待ち構えているんだろう。
その大部分を、それが分かれ道だと意識もせずに通り過ぎてしまうんだろうな。
1分1秒たりとも気を抜いちゃいけないんだ、きっと。


『流星ワゴン』という文庫本を読みながら、そう思った。
数年ぶりに、あの経済原論の授業を思い出した。




明日は、最近出産した友達へのお祝いを、別の友達と買いに行く。
僕の人生を変えるようなことはないだろうけど、
彼と彼女とその息子が喜んでくれるような選択をしないとね。^^


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