日々あんだら
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2005年07月28日(木) 無駄ノススメ





3歳になった1週間後から保育園に入り、大学を卒業するまでたくさんの先生にお世話になって来たが、
『恩師』と呼べる人はそれほど多くない。
せいぜい片手くらいか。
その恩師の方々とは今でも年賀状のやりとりだけは続けさせてもらっている。


そんな中で、一番好きな先生は大学のゼミの教授である。
触れ合った回数は多分一番少なかったんだけど。

元々は1年生の時に300人くらい入る教室で「経済原論」の授業を教えてもらったのが始まりなんだけど、
わけのわからん経済学の理論を穏やかな口調とわかりやすい平易な言葉にユーモアを混ぜて教えてくれたのが印象に残った。
(とか言いながら、授業はほとんど出てなかったんですけど…汗)
見た目もタヌキみたいで愛嬌のあるおじさんだった。(笑)

で、3回生になる時にゼミを選ばなくてはならなくて、その印象だけで先生のゼミを選んでしまったのだ。
まあ、簡単に選んだ割には今にして思えば大正解だった。
(僕はそういう星の元に生まれてるらしい。進路はいつも結構適当に決めちゃうけど、いつも人には恵まれる。←お金には恵まれない)


その先生、ゼミに入るまでは知らなかったんだけど、学部の中ではかなり重鎮だった。
だけど、すごく気さくな人で。何を聞いても「そんなことも知らんのか」とニコニコしながら教えてくれた。
モットーは「腰は低く、志は高く」。
「学者っていうたらちょっとえらなると偉そうにしてるのが多いんや。そんなんではあかん。
研究室でふんぞり返ってるんじゃなくて、その辺の八百屋や魚屋のおっちゃんと景気の話ができるくらいじゃないと」っていつも言ってたなぁ。

そんなことを言う割に、学者の例に漏れず自慢話をするのが好きだった。(笑)
「先日政府の○○審議会に出席してきまして、僕はそこの委員なんだけどね…」とか、
「昨日の日経に載った『やさしい経済教室』に書いたことなんだけどね…」とか、そんな具合に。
そのあと15分くらい自慢話が続くのだった。(笑)
でもそれが全然嫌味じゃなくて、「かわいいなぁ」と思いながら聞いていたもんだ。(こっちの方が偉そう。笑)
自慢話が始まった時に周りの友達の顔を見ると、みんな僕と同じ表情を浮かべていたので、
きっとみんなそう思ってたんだと思う。^^

その先生の判断基準は、何事に関しても「おもしろいかどうか」。
「君ら学生と話をしてておもしろいなぁと思うのは、スポーツでも芸術でもギャンブルでも、
どんな分野のことでもええ、僕の知らない話をしてくれた時なんです」
「30分話してて僕の知らんことが1つも出てこんかった時にはつまらんやっちゃなぁ、って思うんだよ」
ってよく言ってたなぁ。
幸運にも僕のたどった経歴は先生の知らない世界だったらしく(野球に詳しかったり、昔競馬にはまってたり、高校時代に船通学してたり、オカンがおもろかったり)、結構興味を持って聞いてくれてたようだった。(笑)

論文を書く時にも「経済学の理論のことやったら、君らが僕の知識に敵うわけがないんだから、学生らしく自由で、僕らが思いもつかないような発想で書きなさい」と言って、少々現実味のない発想でも斬新だったら評価をつけてくれてたもんだ。
今まで、過去数十年分の広島新聞に掲載されたカープの記事の切抜きを元に、
『広島カープの成績と広島経済との相関関係』って論文を書いた広島出身の先輩がいたりとか、
某人気ラーメン店でバイトしていた先輩は『ラーメン屋における最適な座席数』について論文を書いたりとか
してたらしい。
生真面目な教授のゼミでは決して認められないテーマだと思う。
そのせいか、ウチのゼミ生の書いた論文は、学部の懸賞論文ではいつもメタメタな成績だった。(笑)


そんな先生も、今はウチの大学にはいない。
「僕もこの大学では重鎮でね、だいたいなんでもやりたいことをやりたいようにできるようになったんだけど、そうなるとおもしろくないんですよ」とか言って、僕が卒業した2年後に放送大学に移ってしまった。
「放送大学、おもろそうやろ?」ってニヤリと笑いながら。
時々夜中にテレビをつけると、いきなり先生がどアップで出てきたりして軽く仰け反ってしまうんだけど、
やっぱり平易な語り口で、学生時代全然勉強しなかった僕が数年ぶりに経済学の話を聞いてもわかりやすくておもしろい。



そんな先生が、僕らが卒業する時に贈ってくれた言葉がある。

 阪神大震災の時に、阪神高速の高架が繋がったままで倒れたやろ?ウチの近所でもあったんですが。
 あれ、もっと大きな地震にも耐えられるような設計だったそうです。
 でも縦揺れに対しては完璧やったけど、横揺れは想定してなかったらしい。無駄がなかったんですな。
 人間も一緒やで。無駄のない人間、無駄なことをしてきてない人間は
 なにか想定外のことがあった時にコロっといきます。
 君らの中にもいるけどな、なんの挫折もなく歩んで来たエリート、ああいうのが一番もろいんや。

 山を登るのに、まっすぐ登る道もある。
 あっち行ったりこっち行ったり、くねくねしながら登って行く道もある。
 早く山頂に着くのはまっすぐ登る方やけど、
 いろんなものを見たり聞いたりできるのはくねくね登って行く方の道や。

 だから君らは、もっと無駄なことをしなさい。
 周りからどんなに「無駄や」って言われても、やってる最中に自分でも「無駄や」って思えても、
 後から見たらそれは絶対無駄にはならん。
 無駄なことをいっぱいやって、もっと幅のある人間になってください。



…で、今の僕があるわけで。(笑)

写真も、無駄といえばものっそ無駄。
別にそれでお金を稼げるわけではないし、しなかったからと言ってなにか困るわけではない。
大量に出した写真を受け取って支払いをする時とか、今まで買ったカメラ関係の機材代(フィルム代・現像代除く)の合計が7桁に到達していることに気付いて軽く卒倒しそうになる時とか、アルバムの重みで本棚が抜けた時とか、時々「趣味にこんなに金と時間と労力をかけて、無駄ちゃうんか?」と思うこともある。
なにかあるとすぐ東京まで遊びに行ってしまうのだって、お金の無駄だと言えば無駄だ。

でもその度に「無駄なことをいっぱいやって、もっと幅のある人間になってください」という先生の声が
頭の中でこだまする。
今しかできないことを経験してるんだ、無駄なことなんてないんだ、と自然に思えるようになっている。


というわけで、今僕が慢性金欠症な原因の何分の1かは、先生にあるのだった。
今年の秋のOB会の時にでも、「先生のせいですよー!」と抗議しようと思っている。(笑)



…と、ここまで書いてて思い出したんだけど、今年のOB会の幹事ってウチの学年じゃなかったか?
しかも、学年幹事は僕じゃなかったか?

なーんにもしてませんけど…てか、なんの話も出てきてませんけど。。。(滝汗)

だ、誰か動いてる?(でも僕が音頭取らずに動くような連中じゃないよなぁ…。脂汗)


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