甘えた関係

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2004年05月27日(木)
2002/05/11(土) 10:18

『こんなの弾けるの?学校の音楽知識なんて、全然だ。』
楽譜をパラパラを開きながら、このあたしが聞いているとでも確信しているように背を向けたままあなたは言う。
そう言いながら不器用に打たれたピアノの音が、溜められたように甘いだなんて、知りたくなかった。
あたしを大人扱いしないで。
《おまえは、他じゃなくて相手にもっと甘える必要があると思うよ。》
いつか貰った助言を思い出して顔をあげる。
けれど、あたしは実行できない。
怖いんじゃない。厭だからだ。
あたしというものの背景を説明する作業を、別にしなくてもいいと思いたい。
でも、早くしなくちゃ無くなってしまう。
このまましなかったあとの答えと、したあとの答えは解かっている。
したあとの答えをあたしは望んでいるのに、今しているのはしなかったときの式。
式は留まらない時間にどんどん解かれていって、形は答えが同じのまま解かれる度に変化をしていくだけ。
「何か弾ける?」
『いいえ。』
「じゃぁね、今あたしが弾いたげる。」
なるべく譜面が黒くて楽譜が厚いのを選ぶ。
「横に立たないで。あっちにでも座っていて。」
弾き終えて間があいて、それをほうっておいたら、口を開いた。
『なんて感想を言えばいいんだろう?』
「別になんでも。好きなように言って。」
『じゃぁ、すごいと思った。』
「他には?」
何でもいいから、背を向けているあたしへもっと誉めてそれを聞かせて。
全て、解かれていくのを感じながら。

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