甘えた関係

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2002年07月20日(土)
暑中見舞い申し上げます。
暑中見舞い申し上げます。
いつもの事ながら、たらたらと室内で生きております。

今日の外は、抹殺的だったらしくって、水辺で人がポコポコと死んでいったらしいです。
ラジオがそう流しています。
水辺で死んだら、三途の川があるかどうか解からなくて、せっかくの機会が台無しだと思いました。
たらたらと生きるのはとても具合がよくて、心静かになれます。
自室で、クーラーとラジオをつけて、ベッドの上で体育座りをして、2冊の本を広げます。
クーラーは24℃の「弱」で、ラジオは77.8を音量小さくかけます。
なんで2冊なのかというと、どっちに今の自分が合うか解からないから。
だから、合う方がくるまで、1ページずつ代わる代わるに読んでいきます。
頭のなかを二つに分けて、1つ1つ選ってしまっていく作業は、とても楽しいと思えます。
目に見えないから想像をして、想像をしながらその作業をしていきます。
どちらかが疎かになったら、あたしの負けです。
けれど、途中で疲れてしまって、いつも、ヒザコゾウに頬をすりつけて眠ってしまいます。
起きたらまた繰り返します。
お腹がすいたら冷蔵庫にあるものを食べます。
調理をするのがめんどくさいので、スイカやグレープフルーツやレイシを食べています。
日に2回オフロに入ります。
1回目はシャワーで、2回目はきちんとバスタブに湯をためてはいります。
内は涼しいのですが外は暑そうなので、シャワーのときもオフロのときも、お湯はいつもなまぬるいカンジになります。
飲み物は甜茶です。
お茶の少し甘い味で、あたしはとても気に入っています。
けれど、好き嫌いの両派に分かれるモノらしくて、家のなかでそれを飲むのはあたしだけです。
可笑しいコトに、「好き」だけのときも「嫌い」だけのときも、無いのですね。
そんな思いつきをしては、ベッドの上で体育座りをして、クスクスと笑っています。
一日だいたい2回、夕方と深夜に、恋人から電話がかかってきます。
今日思ったコトを言ってみて、あったコトを話してみて、切ります。
深夜になると、ベッドから離れて、机の前の椅子に座り、ネットにつなげます。
ベッドから離れるときは、ずっと座っていたせいか、いつも、少し寒く感じます。
今日はお昼に、少し違うコトをしました。
冷蔵庫を開けたら、頭だけになった烏賊を4つも発見したのです。
たぶん、昨日のおとーさんが、切り分けた後の残骸だと思います。
1つの頭には目が2こもついています。
戸棚から小さくてけれど装飾のない綺麗なガラス器を出して、そのなかに1つ入れてみました。
目の上まで器を持ち上げて、下から見てみたら、烏賊の黒い目が2つだけ目立っていて、頭自体は無いように見えました。
とうに使われていない裁縫道具の箱から針とピンセットを、そしてテーブルの上にある広告を、両方をいっぺんに右手で持ちました。
少しそれは難しくて、手のひらからこぼれ落ちてしまいそうになりました。
「右向け右」
小学校のときを思い出しながら、間違えないように慎重にしました。
目の前には庭の前のガラス戸があります。
一日で6人も死んでいった今日の外は、さんさんと日が照っていて、眺めると眉間にシワが出来てしまいます。
ガラス戸の前に広告を敷き、その上にガラス器を置きました。
置くときに、なかにはいっている烏賊の頭がテロンと揺れて、夏だなぁと思いました。
ピンセットで目の端を押さえ、針でその周りを刺していきます。
なかなか弾力があるそれは、ツルンツルンと器のなかを動いてしまいます。
15分くらいしてやっと、烏賊の目を刳りぬくコトに成功をしたあたしは、ピンセットを床に置きました。
針を持ち直し息を止めて、刳り貫いたその目をプツンと刺してみました。
中からは海の匂いのする黒い液体がどんどん流れ出してきました。
プツンプツンと何度も刺しているうちに、丸くてプルンとしていた目は、グナリと空気の抜けた風船みたいになり、やがて、脱いだあとの服のようになりました。
台所でガラス器と針とピンセットを洗剤で洗いました。
布巾で拭くのもいいのですが、今日はとても暑い日だから、庭のレンガの上に3つを並べて置きました。

そろそろ、あたしはとても静かな生き物だと思います、と言ってもいい頃合いでしょうか。
生きていますか?
あたしは今日も生きてそしています。

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