江草 乗の言いたい放題
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2022年03月04日(金) 大阪府立高校入試について        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan





 大阪府の公立高校の願書受付が締め切られた。もともと大阪府立高校は10学区に分かれていて、それぞれの学区内の公立高校を受験するという仕組みだったために受験生はそれぞれの公立高校に分散し、結果としてあまり不合格者の出ない仕組みとなっていた。私立高校は「専願」という形で公立高校を受験しない生徒を囲い込む以外は、「併願」受験の生徒が受験した公立高校を不合格になった場合に「すべり止め」として私立高校に入学してくれるという形で生徒を確保できたのである。併願合格の受験生が公立を不合格になって私立に来てくれるのは10%程度であった。それは公立高校の平均の競争率が1.1倍程度だったことと一致する。「受験した公立高校にちゃんと合格させる」というのが中学校側の進路指導でとても大切なことだった。

 かつて大阪府知事だった黒田了一は「十五の春は泣かせない」と大量の公立高校を新設した。一学年12学級という巨大な規模の公立高校が交通不便な山の中とかに作られた。18歳人口が200万人くらいあったわけだからそれは必要なことだっただろう。しかし黒田知事は選挙で敗北し、後任の岸昌知事は公立高校の新設をストップして私立高校に補助金を増やしてクラス数の増加を依頼した。同時に公立高校では1クラスの生徒数の上限を拡大した。府立高校の生徒数はその後緩やかに減少していき、1クラスの人数も減り、公立高校の規模は45×12学級という大規模校から、40人✕8学級程度に縮小して行った。しかし、府全体を9学区に分けるという仕組みは維持されていた。

 1990年頃から少子化が著しく進行し、従来の学区区分では定員割れする高校などが出るようになったため、2007年にそれまでの9学区は4学区に統合され、さらに2014年度入試からは学区制そのものが完全撤廃され、大阪府下の公立高校はどこを受験してもよいことになった。例えば大阪府南端の岬町に居住する生徒が北端の能勢高校を受験できることになったのである。

 学区制の撤廃は果たしてよいことだろうか。9学区制の頃は中学の進路指導というのはかなりきちっと数字を読むことができたのであまり不合格者を出さずに済んだ。しかし、受験する高校が広がるようになり、実際に入試が終わるまで合否の予想ができない状況になるとかなりの中学校が進路指導を放棄することとなった。かつては不人気校にまでうまく生徒を割り振って不合格が出ないようにしていたのが、不人気校は本当に受験を敬遠されるようになってしまったのである。

 不人気校になる理由は、駅から遠くて通学が不便であるとか、受験生の入学試験の偏差値が低く、大学進学者が少ないなどということである。もちろんツッパリたちが集まってるためにガラが悪いとか、周辺地域からの評判が悪いということもあるだろう。そういう高校は結果的に本当に生徒が集まらなくなって定員割れの末に廃校に追い込まれることとなったのである。

「どこでも好きな高校を受験できる」というのは一見よいことのように感じられる。確かに大阪府下に住む誰でも北野高校を受験できるのはよいことかも知れない。大阪を3つに分けた時にもっとも民度が低いと言われる大和川の南の地域からも北野高校を受験できるのである。その結果として起きることは、公立高校全体としての難関校合格者の減少である。結果的に東大京大に入れる受験生は減ってしまうのである。

 これはどういうことなのか説明しよう。たとえば大阪府には現役で東大や京大に入れるような秀才が500人いるとしよう。そのうち6割の300人が中学受験の段階で私立中学に入ってしまうとして、残りの200人を22人ずつ9学区のトップ校に振り分ければその生徒たちは周囲の生徒に良い影響を与え、阪大や神戸大、大阪市立大などに進む受験生たちを生み出してくれるのだ。核となってくれる22人が存在することで、その影響を受けた何倍もの優秀な生徒が生まれるのである。進学校というのは教員の努力だけで結果を出せるのではなく。周囲に影響を与える優秀な生徒の存在が欠かせないのである。9学区制の時代はその9学区すべてのトップ校から現役で東大京大に進学する生徒がいたのだ。

 しかし、学区制を撤廃した結果どうなったのか。その200人のうち100人以上が府内トップの北野高校に取られてしまうのである。一部の高校に優秀な生徒が集中する結果どうなるかというと、かつての学区トップ校であっても最初から核となる優秀な生徒がほとんどいないという現象が起きるのだ。オレはある年に自分の出身校から京都大学に一人も合格出来なかったのを知って愕然としたのである。ひどいじゃないか。

 教育の機会均等を実現するためには、貧しい家庭に生まれた者でも公立高校から難関校を目指せる環境が不可欠である。学区制の撤廃はその環境をぶち壊したのである。北野高校に入る競争が激化した結果、小学生の頃から塾通い出来る裕福な家庭の子弟しか入学できなくなったのである。 

教育の機会均等が保証されなければどうなるか。貧富の差がどんどん拡大し、階級が固定化されるのである。大阪府の教育行政は格差拡大の方向にどんどん進んでいく。公立高校を統廃合でどんどん減らして「公教育」の役割を放棄している今の流れはどう考えても間違っている。教育の素人集団である政治家が恣意的に教育に介入した結果はろくなことにならないのである。維新の会が導入した公募校長の多くがパワハラ事件などを起こしてクビになってることからもそれははっきりしている。


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