2016年11月05日(土) |
クルマで徘徊する認知症老人という凶器 |
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クルマは動く凶器である。いつでも無差別に歩行者を殺傷できるだけの能力を備えているのだ。だからこそ飲酒運転には厳罰が科せられるのであり、所有者には車検時に必ず自賠責保険の加入が義務づけられているのである。
横浜で87歳の老人が暴走させた軽トラックが小学生を死なせるという事故があった。その87歳の老人は、前日からクルマで徘徊していたこともわかった。どこをどう走ったのか、自分がなぜそこにいるのかもわかっていなかったという。そういう明らかに「認知症」の老人がクルマを運転してるのである。おそらくこのような状況は日本中で発生していて、こうして事故が起きて初めて明らかになるのだろう。
自分が何をしてるのかわからない精神状態の人がクルマという凶器を動かしていることは明らかに「危険運転」だ。しかし日本の裁判はこれをなかなか「危険運転」にはしてくれないのである。その老人は高速道路に入ったり降りたりしている。またセルフ式のガソリンスタンドを二回利用している。つまり「高速料金を払ったり、自分でセルフスタンドで給油できる程度の認識能力はあった」ということで、「直前までは正常に運転できていた」と判断され、「危険運転」であるとは認められないのである。事故を起こしたから「危険だった」というのではなくて、事故を起こしていてさえ「危険ではない」とむりやりに裁判所は判定しようとするのだ。
ただ、それを無理に「厳罰化」して、認知症の高齢者を刑務所に入れたところで、それは受刑者介護の問題が発生するだけのことである。ここで大切なのは「厳罰化」ではなくて「事故防止」なのだ。若者の危険運転は厳罰化で防げるかも知れないが、認知症運転は厳罰化では防げないし、そもそも罰を受ける意味さえわかってないような人たちが運転してるのである。
日本の自動車メーカーは競うようにさまざまな事故防止機能を取り入れて、わずかなオプション金額でそうした安全装備がつけられる様になった。こうした装備は、一定年齢以上の人の車にはすべて義務づける様にしたらどうだろうか。たとえば70歳を過ぎればそうした安全装備を装着したクルマ以外には乗れない様にするといった対策である。それによってかなりの割合でこうした高齢者の事故は防げるはずである。
高齢ドライバーが踏切から線路に侵入するとか、高速道路を逆走するとかいう事故はこれまでもかなり起きている。逆走は事故に至らないものを含めるとかなり発生しているらしい。なんとかしてそうした事態が起きないように工夫する必要がある。そのためにはどうしたらいいのか。運転しない方がいい人たちが運転しなくてもよいような社会体制を作り出すしかないわけで、そのためには交通の不便なところでの交通手段の整備である。もっとも地方のローカル線をJR各社がどんどん廃止していることはそれに逆行することである。
それともう一つはやはり「歩車分離」の徹底である。多くの児童生徒が行き交う通学路はその時間帯だけでもいいから原則自動車通行禁止にするとかの対策が欲しい。通学路がラッシュ時の抜け道として通学時間帯に交通量が増えるなんてことは言語道断である。通学の子どもたちの列にクルマが突っ込むという痛ましい事故は毎年数多く起きている。なぜ繰り返されるのか。もしも完全に交通を分離していれば絶対にそうしたことは起きないのである。
日本の少子高齢化はますます進んでいく。このまま放置すれば今に街を走るドライバーの一割は認知症などというとんでもない危険な状況が起きるかも知れない。もちろんそれはオレ自身の可能性でもある。このオレ自身が「次に車を買い換えるときは安全装備がしっかりとついてるクルマにしよう」と心に決めている。60代で今と同じ反射神経や判断能力が備わってるとは思えないからである。
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