江草 乗の言いたい放題
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2014年04月20日(日) ハドソン川の奇跡とセウォル号の悲劇        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 2009年1月15日、USエアウェイズ1549便は離陸直後にバードストライクによって両エンジンが停止するというアクシデントに見舞われた。150人の乗客と5人の乗員は絶体絶命の危機に陥ったのである。機長と相談の末、空港管制は、進行方向の延長上にあるテターボロ空港への着陸をアドバイスしたが、高度と速度が低すぎるため機長はキャンセルを伝え、ハドソン川緊急着水を宣言した。市街地を避けてハドソン川に不時着水するしかしか手段が無いと判断した機長のチェズレイ・サレンバーガーは操縦を副操縦士から自分に交代すると、乗客には「衝撃に備えて下さい」とのみ伝えた。不時着まで数分の出来事のため客室に詳細を伝える猶予はなかった。

 異常発生から約3分後、1549便はハドソン川へ時速270kmほどで滑走路着陸時と同様の滑るような着水をした。機体の姿勢が水面に対し水平に近かったため片側主翼着水による機体分解も避けられた。スムーズな着水により機体損傷は尻餅による後部壁下部の一部だけで、乗客ら全員が迅速に機内から脱出シューター(着水時には救命ボートになる構造)および両主翼に避難することが可能となった。

 サレンバーガー機長は川へ着水させて市街地への墜落を防いだだけでなく、その際に目視で船着き場がある場所を選んだ。真冬であり、救助が早急に行われることを期待してのことである。実際にすぐに周囲の通勤フェリーが次々に救助にやってきたという。その際は子供と女性の救助が優先された。乗務員は着水後まもなく浸水が始まっていた機体後方のドアを開けないなど、エンジン停止と不時着水という非常事態にきわめて冷静に対処した。機長とアテンダントらは決められた手順に沿い不時着水後の機体内を見回り、既に浸水が始まっていた機体後方まで機内に残っている乗客がいないか2度確認に向かっている。その後、乗員乗客全員が脱出したのを確認してから自身も脱出した。その際に機内の毛布や救命胴衣を回収しつつ客に配る等、手順通り冷静に事態の対処にあたったという。

 乗員乗客155名は一人の犠牲者も無く全員無事に生還した。この事故はハドソン川の奇跡として今も語り継がれ、乗客全員を救ったサレンバーガー機長は英雄としてアメリカ国民の称賛を受け、オバマ大統領の就任式にも招かれたのである。

 2014年4月16日午前8時58分頃、韓国仁川の仁川港から済州島へ向かっていた、清海鎮(チョンヘジン)海運所属の大型旅客船セウォル号が、全羅南道珍島郡の観梅島(クヮンメド)沖海上で転覆し、沈没した。事故が発生したセウォル号には、修学旅行中の安山市の檀園高等学校生徒325人と教員14人の他、一般客107人、乗務員29人の計475名が乗船し、車両150台余りが積載されていた。

 転覆、沈没の原因は船長が仮眠を取っていて、はじめてその海域を航行することになった26歳の女性の三等航海士が操船していたこと、急旋回したために積み荷が一方に片寄ってバランスを崩して一気に船が傾いたことであるとされる。現場周辺の水深は27〜50mで目立った暗礁はなく、視界も良好だったという。

 朝鮮日報の報道によると、船長は座礁の通報から40分後には船外に出て、約50人の乗客とともに最初の警察警備艇に救助されていたほか、機関士や操舵手ら6人もこの最初の救助船にいたという。船長も他の乗務員も、乗客を全力で避難させるのではなく真っ先に自分が助かろうとしたのである。大韓民国船員法では、『船長は緊急時に際しては人命救助に必要な措置を尽くし、旅客が全員降りるまで船を離れてはならない』旨規定しており]、4月18日、韓国政府の合同捜査本部は、船長について特定犯罪加重処罰法違反など、3等航海士と操舵師については業務上過失致死傷の疑いでそれぞれ逮捕状を請求し、4月19日未明、3人は逮捕された。

 船長と乗組員は、最後まで船内放送を続け遺体で発見された1人を除いて、事故発生後間もなく脱出し、海洋警察の警備艇に救助された。救助された乗客は、乗組員による避難誘導が行われなかったと証言している。「救命胴衣を着用して待機してください」という船内放送が流れたのみで「動かないでください」などと繰り返していたという声もある。そのため、4階にいた多くの高校生たちのほとんどは船内放送に従って待機したままで逃げ遅れてしまったのである。多くの乗員が脱出できないまま船は完全に転覆し、完全に水没した。逃げ遅れた268名は船内に閉じ込められた状況にあると考えられる。事故発生から72時間が経過しても救援活動は困難を極め、潜水師が船内に突入することもできていないのだが、韓国政府は日本政府や米軍からの支援要請を断っている。なお現場にはクレーン船が3隻派遣されてるが、潮流が激しくただ傍観しているだけの状況である。

 日本には「海猿」と呼ばれる海難事故の際に人命救助のために働くエキスパートたちがいる。韓国にはそうした組織はあるのだろうか。傍観したまま手が出せないということは、救助するための技量が足りないということなのだろう。

 ウィキの記載などをもとにして二つの事故について簡単にまとめてみたが。一つだけ明らかにわかることがある。それはこのような事故の際に現場指揮官がどのように最善を尽くすかということである。サレンバーガー機長の英雄的行動と、セウォル号の船長の情けない行動がそれぞれの乗客乗員の運命を決したのである。

地球上では常に多くの列車、航空機、船舶が行き交っている。さまざまなアクシデントが起きる可能性が常に存在する。事故を100%防ぐことは難しい。問題はそのときに現場指揮官の役目を果たす者がどのように冷静に行動して犠牲を出さないようにするかということである。

 あの「タイタニック」という映画を韓国の高校生は観たことがなかったのだろうか。あの映画を観ていれば、沈没しようとしている船の船室で待機しているということがどれだけ間違った選択であるかがすぐにわかったはずである。船がどれだけ危険な状態なのかがもっともよくわかっていたからこそ船長は真っ先に逃げ出したのである。

 セウォル号の船内で最後まで救命胴衣を配り続け、避難を呼びかけて殉職された女性乗務員の方の冥福を祈りたい。そして、もしも乗務員全員が彼女と同じ気持ちでこの事故に対処していれば、今回の悲劇は防げたかも知れないのである。


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