江草 乗の言いたい放題
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2007年08月28日(火) 野球に誤審は付きものである        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

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 佐賀北の優勝で幕を閉じた夏の高校野球だが、敗れた広陵高校の監督はあの逆転満塁ホームランの前の押し出し四球となった一球を「あれはストライクだった」と抗議したという。試合を見ていた多くの人が、その一球が実はストライクであったことを認めているし、その場面の動画はネット上にいくらでもUPされていてオレも確認した。あれは紛れもなくストライクだと思う。試合の流れを左右したあの押し出し四球は、実は主審の誤審だったのである。

 きわどいコースどころか、明らかなストライクでさえもボールにされてしまう。そうなるともう投げるところはど真ん中しかない・・・広陵の野村投手がそういうあきらめの境地になったかどうかはオレにはわからない。しかし、直前の誤審が彼の精神状態に大きなプレッシャーを与え、その結果絶好球を投じてしまったためにホームランを打たれてしまったとすれば、まさにその誤審は勝敗を決める一球だったわけだ。

 しかし、そもそも野球というスポーツに完璧なジャッジなどあるのか。人間が判定する以上そこには正確さなどを求めてはならないのではないか。オレはそんなことも思うのである。過去にどれほど多くのドラマがミスジャッジによって生まれてきただろうか。オレはいくらでもそうした場面を思い出すことができる。

 まだ広沢が巨人のレフトを守っていた頃だから1990年代半ばだろうか。レフトフライで3塁ランナーの桧山進次郎がタッチアップしてホームを踏んだ後、広沢のへろへろ玉の返球がミットに入ってタッチ、明らかなセーフだったが主審はアウトを宣告した。ベースを踏んで一呼吸あってからタッチ、それでアウトである。間一髪のプレーでもないのにアウトなので、オレは桧山が本塁ベースを踏み忘れたか離塁が早かったかどちらかだったのかと思ったくらいだ、そんなひどいジャッジがこれまで無数に繰り返され、それでもアウトセーフの判定やストライクボールの判定には決して文句を言えない、それが野球の世界の絶対の掟として君臨してきたのだ。あのとき怒った桧山は審判を突いて退場させられたのじゃなかったかな。

なぜ王・長島を擁した巨人がV9を達成できたのか。オレはその理由の一つとして、あの頃のプロ野球が審判と読売が組んだイカサマショーだったからだと思っている。長嶋が豪快にスイングしていてもなぜか空振りではなかったり、王が見逃すくらいだからボールに違いないという「王ボール」があったりしたのだ。阪神のエースだった村山実が審判のボールの判定に涙ながらに抗議したことがある。「オレは命を賭けて野球をやってる!」彼の怒りはその命を賭けて投げたストライクをボールと判定されたことから来る怒りだった。巨人びいきの判定を下す審判は「ジャンパイア」と呼ばれ、時代はかなり下るが渡田審判が主審をした巨人戦で巨人の勝率8割というみごとなまでのゲームコントロールを行ったという話まである。(いくらなんでもそれは誇張のような気もするが)

 ビデオ撮影が可能な今ならいくらでもそうした機材を用いて正確な判定をすることが可能である。大相撲のような伝統芸能までもが微妙な判定にビデオを導入しているのである。相撲なんかよりもはるかに近代的なスポーツのはずの野球でなぜそうしたハイテクが導入されないのか。ジャッジの機械的な公平さを求めないのか。それは野球という競技が誤審も含めて野球だからである。人間が判定するということによって起きるさまざまなまちがいや不条理、それによって勝敗が左右されることの面白さこそが野球の醍醐味の一つなのだ。

 かつて阪急ブレーブスに山口高志という伝説の速球王がいた。彼はおそらく藤川球児よりもクルーンよりもはるかに速い球を投げたはずである。全盛期の王や長島でさえも「速すぎてボールが見えない」とあきれたという。しかし彼にはカーブが全然曲がらないことととんでもなくコントロールが悪いという欠点があった。きわどいところに投げられるようなコントロールなどないからど真ん中に速球をただ投げ込むしかなかったのだ。日本シリーズで先発した山口高志は一試合14四死球という記録を残している。しかし、彼は本当にそんなにコントロールが悪かったのだろうか。あまりに球が速すぎて見えなかったから主審はボールにしたのではないのか。「この投手はコントロールが悪い」という先入観がジャッジに影響しなかっただろうか。速すぎて打者に見えないほどの豪速球は主審にもちゃんと見えなかったのじゃないかとオレは思うのである。

 あの高校野球の決勝戦、広陵高校は毎回のように走者を出して塁上を賑わせ、終始押し気味で試合を戦った。佐賀北にとってチャンスはあの8回裏だけしかなかった。そのワンチャンスで点が入りそうになったとき、「このまま0点で負けるのも可哀想だしこの球をボールと判定して佐賀北にも1点入れてやるか」という演出を審判が行ったなんてことなら広陵高校の監督が怒るのも当たり前だが、その誤審が発生したときにもしも「こんなことは野球にはよくあることさ」という余裕があればまた違った展開になったかも知れないと思うのである。

「この主審の判定はめちゃくちゃじゃ!」
「まあそう怒らずにまだ1点じゃ、そんなもんくれてやりゃあいいのじゃ」


 捕手が投手をそうなだめる余裕があれば、落ち着いて次打者を打ち取ったかも知れないのである。その一球の判定にショックを受けて野村投手が平常心をなくしてしまったことが広陵高校の最大の敗因かも知れない。

 野球をしている人なら誰でも、審判の技術に大きなばらつきがあることを知っている。中にはおまえの目は節穴かと怒鳴りつけたくなるようなひどいレベルの者までいる。プロ野球の世界でさえそうなのだ。それならもっと審判技術を磨けと言いたくなるわけだが、人間の能力に個人差がある以上それにも限界がある。大事なのは「誤審は野球に付きもの、それも含めて野球なのだ」という真理をちゃんと理解していることだ。

 選手たちの言葉に出来ない思いを代弁してその誤審の抗議をした広陵高校の監督に対して高野連は厳重注意を行ったという。どうせなら高野連には「ええ、あれは誤審ですけど何か文句ありますか?」と開き直って欲しかったのである。


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