2007年07月05日(木) |
あなたの本が書店に並びます! |
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7月4日のきっこの日記さまからのリンクをたどっておいでになった方は、ぜひ7月1日の日記(久間章生罵倒の日記)をごらんになってください。
新風舎と言えば自費出版の大手である。そして自費出版というのはそれによって本が売れて儲かることを期待するのではなくて、自分が研究したり趣味で書いたものを知人に配ったりすることが目的であると思っていた。本を売って稼ぎたいと思っても、そのためにはかなり高いハードルをこえないといけない。以下のトラブルに関してオレはどちらかというと出版社の側を擁護したい。
元教授ら自費出版「新風舎」提訴、一部書店しか本出回らず
「出版された書籍は全国800の書店で販売される」などのうたい文句で自著の出版を勧誘され、出版費用をだまし取られたとして、元大学教授らが4日、大手自費出版社「新風舎」(東京都港区)に、計約763万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。
訴えたのは、滋賀県長浜市の元大学教授、吉田龍恵さん(77)ら3人と1法人。
訴状によると、吉田さんらは2002年10月から今年2月、自著の出版契約を同社と結び、約195万円〜約99万円を支払ったが、実際には一部の書店でしか販売されなかった。同社は書店への営業活動をほとんど行わず、原告側は「書店に陳列されない可能性を故意に告げず、詐欺にあたる」と主張している。
同社は、本の出版費用をすべて著者が負担する「自費出版」ではなく、同社も負担する「共同出版」事業を展開。06年の新刊書籍発行点数は2788点で出版業界トップという。
新風舎の話「訴状が届いていないのでコメントできないが、著者との良好な関係が絶たれてしまうとしたら大変、残念だ」(2007年7月4日21時3分 読売新聞)
本を売るためにはどうすればいいのか。書店で地道に営業活動をして、自分の本を目立つ場所に置いてもらって・・・と頑張れば必ず本は売れるのだろうか。そんな単純なことではないはずだ。もしもこの著者が「200万円も払ったんだからちゃんと売ってくれ!」と思ってるとすれば、オレはその金額は安すぎると思う。全国の書店で売るために必要な営業活動の費用というのはそんな甘いものではない。広告というのは費用に対する効果がなかなか現れにくいのである。例えばオレの日記のアクセス数は多い日で1万をこえるようになったが、それだけ多くの人が読んでいても購入という行動を起こす方はわずかである。過去にオレは日記で本を紹介したことがあるが、それを読んで本文中に貼り付けたリンクをたどって本を買ってくれた方というのは約10名だ。率から言えば1/1000程度なのである。まずそうした事実を理解すべきではないか。
「全国800の書店で販売」と銘打ちながら実際は地元の一部の書店でしか販売されなかったと訴えてるが、いったいその本は何冊出版したんだろうか。もしも出版費用を1000万円くらいはずんで初版は1万部くらい刷ったのだとしたら、全国800の書店に行き渡らせることが可能だが、例えば100部しかなかったとして、どうやって全国の書店に置けるのか。
自費出版屋が、著者を口説いて自費出版させるのは当たり前だ。そうやって売り上げを伸ばす必要があるからだ。リスクを説明しなかったとあるが、売れないというリスクは当然想定されるリスクじゃないか。良い本でも必ず売れるとは限らない。クソみたいな本でも芸能人が書いていれば売れる。出版とはそういうものである。
それともう一つ忘れてはならないのは、新風舎が自費出版を手がけているのは「良い本を世に出したい」という善意100%の気持ちからではなく、あくまで営利事業としてそれを行ってるわけで、極端な話中味がクソであっても出してくれればもうかるわけである。単なる自費出版よりも共同出版という形の方がゼニがもうかるとなれば、そちらをプッシュするのは至極当然のことであり、商売とはそういうものなのだ。マンションを売る奴が少しでも高い部屋を売りつけようとするように、ブティックの店員が少しでも高い服を売ろうとするように、新風舎が少しでももうかるように客にセールストークをぶちかましたとして、それが詐欺であるかどうかの判断は微妙である。
コンテストに落選した客に対して無差別に連絡を出し、「あなたの作品を埋もれさせるのは惜しい」と言われれば、誰だって自分の書いたものに対して思い入れがあるから「そうか」という気持ちになるだろう。そこで共同出版の話を持ちかけて高額の契約をさせるのである。この場合契約するかしないかはあくまで書き手に最終的な判断が委ねられているのであり、そこでNOと言えばゼニは出さなくてもいいわけだ。新風舎のやり方はある意味姑息だが、出版という事業はそんなに儲かる商売ではない。そういう意味で卑怯ではあるがこれはなかなか見事な戦略であるとオレは思う。売れるかどうかわからない本を出すよりも、本を出したい人からゼニをぼったくる方が確実だ。それはたとえばコンビニチェーンの本部が、個々のコンビニがもうかろうとつぶれようと無関係に儲かるようになってる仕組みを考えればよくわかるだろう。
と書いたものの、オレだってだまされるかも知れないからなあ。「江草乗の言いたい放題」を出版したい、と言ってこられて、「共同出版という形を取りたいので出版費用の半額の500万を払ってください」と提案されたとして、オレはそれを「チャンスだ!」とばかりに500万出すかも知れないからである。500万出しても本が売れて2000万入ってくるのを期待しよう・・・と思っていたら「出版社が倒産しました」ということも現に起きているからだ。
わざわざゼニを使って自費出版なんかしなくてもいい。書きたいことがあるのならネット上で書けばいいじゃないか。オレはそうとらえているのである。どうしても自費出版した売りたいのならば、その本の宣伝のためのWEBサイトを構築して、そこでしっかりと自著を宣伝すればいいじゃないか。オレもいずれはこの日記を役立てるつもりだ。あなたは読んでもらいたいのか、ゼニが欲しいのか。オレは本音はゼニが欲しいのだが、今は「みんなに読んでもらう」という方を選んでこうして毎日日記を書いている。ゼニはあとからついてくると思いたいのだ。
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