2006年09月26日(火) |
3353億円のゼニはどこへ行った? |
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総工費3353億円をかけた「徳山ダム」の試験湛水が始まった。総貯水量は約6億6000万トンと国内最大である。これがどれくらいの水量かというと浜名湖の2倍ということだからその大きさが想像できるだろう。この無用の長物は1957年に計画が持ち上がり、当初は発電目的だったが、1973年には治水、利水を加えた多目的ダムに変更された。木曽川水系の水資源開発基本計画(フルプラン)が策定されて1976年には事業実施計画が国から認可されたのだが、旧村民の移転補償交渉の長期化などで着工は2000年まで遅れたのである。
この移転交渉の時には派手にゼニがばらまかれたらしい。原野を田という名目で10倍の値段で買い取ってもらった者もいたりして、買収交渉を有利に進めるためにどんどんゼニが使われたのである。どの家にも数千万のゼニが入ったのだ。その後水没した旧徳山村は1987年に廃村になったのだが、全466世帯、約1500人が離村したのである。もっとも離村したはずの村人の中には水没しない高台に家を建てて再び村に戻って来た人もいる。その家を建てるための電気や水道のインフラ整備にも莫大なゼニがかかっている。ダム建設でゼニがばらまかれてウハウハというイナカモンドリームはここでもしっかりと実現したのだ。再び村に戻ってきた村民の中には、再度補償金がもらえることを期待する人もいるという。そこまで行くともうただの物乞いと同じである。
なんでこんなものを作ったのか、どうして貴重な税金をそんな無駄な事業のために使うのかとオレはあきれるのだが、どうしてもそこにゼニをばらまいてゼネコンにも儲けさせないといけない深い事情が存在したのだろう。
さて、そうやってゼニをばらまいて建設したこのダムだが、今のところ使い道が本当に決まっていないのである。利水目的のはずだったが下流の自治体はみんないらないと言っている。水需要がそもそも存在しないからである。考えたら下流には長良川河口堰というやはり利水目的で作られた堰があるのだが、そっちの水もほとんど利用されていない。河口堰も別に必要だから作ったのではない。ただ工事がしたかっただけなのである。なんの意味もないコンクリートの巨大なオブジェのために数百億、数千億という税金を使うのがこの日本という国の公共事業のお約束である。官僚が5億円のお小遣いを手に入れるために500億の無駄な工事をさせるくらいならば、最初からそのお小遣いの5億円だけ官僚に与えて工事なんかやらせない方がマシである。政府は1%の支出で済むからだ。
なんとかこの馬鹿工事をやめさせようとして立ち上がった市民団体は国を相手取って事業認定の取り消しを求めて訴訟を起こしたのだが、今年7月の名古屋高裁は1審に引き続いて住民側敗訴の判決を下した。この馬鹿工事をやめさせることができる唯一の存在が我が国の司法制度だったのである。しかし、馬鹿裁判官どもは自分たちがそんな貴重な役割を果たしていることなど思いもよらない。それも馬鹿だから仕方がないのだが、連中の頭の中にあるのは正義を実現することではなくて「判例」の文字だけだ。
さて、できあがってしまった徳山ダム。使いたくてもそのいずれにもゼニが掛かるのだがそのあてがない。水利目的のはずなのに取水口がまだ一つも作られていない。水力発電用に使う予定も今のところはない。ダムが計画された50年前と今とでは世の中の仕組みがガラリと変わったのである。水はしっかりと余ってるのだ。もしも何か役立つとすれば50年に一度の大雨に襲われたとき、下流を洪水から守るためにダム本体がしっかりと水を貯えてくれることくらいだ。このムダのカタマリである徳山ダム、今から50年後くらいにはどのように評価されているのだろうか。たぶんオレはそれを見届けるよりも前に寿命が尽きるだろう。オレのような根っからの野次馬にはとても残念なことであるのだが。
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