2006年08月03日(木) |
ゼニを払わない人たち2 |
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前作「ゼニを払わない人たち」もついでに読んでみてください。また、過去日記一覧←をクリックすると、過去の全日記が題名から選べます。
オレには理解できない人種だが、この世には「ゼニを払わない人たち」というのが存在する。例えば学校の給食費を踏み倒す。PTA会費を払わない。せっかくもらった奨学金を返さない。ETCゲートを強行突破して高速道路の通行料金を踏み倒す。コンビニで万引きする。そういう連中が無数にいるのである。
もちろん、昔からゼニを払わないヤツらはいた。たとえばオレが通った京都大学の生協食堂は、10円単位で切り離すことの出来る食券を購入し、おかずと引き換えるときにその金額分の食券をそこに置くという仕組みだった。自分のトレイにだし巻き玉子を取れば、引き換えに50円分の食券を置き、豆腐をとれば30円分を置くという仕組みだった。しかし、置かれている食券と実際に持ち去られる食品の金額は一致せず、常に食券は1割ほど足りなかったそうである。京都大学の生協食堂では常に10%のただ食いをするヤツがいたということである。「きちっとお金を払いましょう」というポスターが貼られていたことをオレは記憶している。
京都大学でさえもそんな調子だったのである。もっとも他の大学に比べて京大生のモラルが高かったとはオレには思えない。大学構内ではよく暴力事件が発生していて、オレは目の前でヘルメットをかぶった過激派の学生たちが殴り合う光景をよく目にした。おそらく、当時は日本一校内暴力のはびこった大学であったと思われる。そうした過激派の内ゲバ事件で手足を折られるなんて凄惨なリンチもあった。もちろん大多数はオレのような善良な学生だったわけだが。
さすがにその時代よりもはるかにモラルの低下した現在の京都大学では、そんなふうに学生の良心に依存するシステムでは通用しないので、ちゃんとレジ方式になって取りっぱぐれのないようになっているらしい。それはともかく、確かに昔からゼニを払わないヤツはいたのである。合コンの時に突然財布を忘れる女、大学の授業料を滞納するヤツ、さまざまな理由をつけてNHKの受信料を払わないヤツは今も昔も変わりなく存在する。
報道によれば2004年度に発生した医療費の未払いが、少なくとも全国の3058の病院で発生し、未払い額の合計が218億円もあったらしい。例えば沖縄県内の40病院の未払い額は6億2000万円、一病院あたり716万円だ。その中には「払いたくても払えない」低所得者ももちろんいるだろう。しかし、「払えるけど払わない」という人も確実に増えてるのである。まさにモラルの低下である。
救急車で運ばれてきて、治ったらそのまま払わずに逃亡するというパターンも多く、ゼニを持ってないからと放置するわけにもいかず多くの病院は困り果てているのだ。そこで「ゼニのない患者お断り」と追い出せば、今度は「患者を見殺しにした」「金儲けのことしか考えてない」と世間から責められてしまう。しかし、その回収できない医療費はいったい誰が最終的に負担するのか。その損失額の穴埋めが医療費に上乗せされるならば、結局はまっとうに支払う人たちが代わりに負担させられることになるのである。だったら治療しないで死んでもらえばいいのか。そういうわけにもいかないのである。日本では、「ゼニがないから入院できずに死ぬ」という現象は起きないという建前になっており、どんな人でも助けないといけないのである。もしも貧乏人お断りと病院が宣言したら、マスコミは格好のネタができたとばかりにその病院を攻撃するだろう。
しかし、病院経営にはゼニがかかるのである。何も慈善事業でやってるのではない。借金があるのならそれを返さないといけないのである。なかなか大変なのである。入院患者の中には、入院日数に応じて保険からもらえる給付目当てに病気でもないのに入院してるヤツも多い。大阪は特に多い。オレの母が一時入院した病院もそんな元気でガラの悪い入院患者たちがうじゃうじゃいた。病室でタバコを吸い、大声で騒ぐ牢名主のようなオバハンがいてあまりにひどかったのでオレはすぐに母を退院させた。(その病院が患者数を水増しして補助金を受け取るためにホームレス狩りをしていたというのは周辺住民はみんな知っている公然の事実らしい)
そんなどうしようもない連中を相手に病院を運営するのも本当に大変なのである。芦原病院が大阪市から多くの融資を引き出しながら踏み倒したと話題になってるが、実際に芦原病院を経営する側としてはゼニを払わない患者が多くて大変だったような気がするのである。大阪というのはそんな情けない土地柄なのだ。
先日、オレはクルマの修理代を払いに行った。当て逃げされたバンパーの修理には6万円も掛かったのである。クルマを受け取るときに財布にたまたまそれだけの持ち合わせがなかったので後日払いに行ったのだが、もしかしたら世の中には「後で払います」といいながらそのまま払わない人たちもいるような気がするのである。だったらクルマを引き渡さなかったらいいわけだが、店としてはそういうわけにもいかないだろう。病院もゼニを払わないヤツは退院させなかったらいいわけだが、たいていそういう患者というのは看護師にセクハラしたり病室で酒を飲んで暴れたりという困ったチャンであることが多く、どちらかというと出て行ってくれる方がありがたいというクソ患者なのである。
かくして入院費は踏み倒されることとなる。今、未収になってる医療費は全体の0.1%だという。(これは統計上の数字なので実際はもっと多く、その10倍くらいはあるだろう)モラルの崩壊が進行しつつある今、この状況はさらに悪化しても、よくなるということはなさそうだ。
阪神高速のETCゲートをゼニを払わずに突破するクルマが年間に20万台あるという。一日に600台はあるわけだ。通行料金は700円だからこれだけで1億4000万円である。もしも監視体制を強化して踏み倒しを防ぐシステムを構築したいならたぶん20億円くらいはかかってしまうだろう。一私企業となった道路公団として、投資対効果を考えるならそんなシステムにゼニを掛けるのは無駄だということになる。かくして社会はますますモラルが崩壊し、不心得者が堂々と開き直る住みにくい世の中になっていく。強行突破された時、後ろからカラーボールを発射してクルマにぶち当てるという単純な仕組みならさほどゼニもかからないと思うのだが。いかがなものだろうか。
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