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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2004年02月13日(金)
無言の地響き


 九州行きプランを立てていて、思い出したことがある。

 1995年のセンバツを友人と2人で見に行った。九州出身の友人に配慮して、三塁側熊本工業高校のスタンドへ行った。シートの色はオレンジ。ノックが終わってプレイボールを待つばかりというとき、シートの3つほど向こうにユニフォーム姿の男性がドカッと腰掛けた。胸には、「熊工」と書いてある。「あの人、コーチかな?」友人にささやく声も知らずに小さくなる。

 試合は、熊本工業が負けた。普段の私なら、「どうしたんやろね、熊工」とか、「ピッチャー、調子悪いのかな?」とか言うのだけど、この日は口が動かなかった。シート二つ分離れた向こうにいる人が気になって仕方なかった。第一線でチームに接している人を側にしたら、私の言うことなんて戯言でしかない。当時でも、それくらいのことはわかっていた。それにしてもあの威圧感は何だろう。きっと厳しいコーチで、選手も存分に絞られているんだろう。そして、手にした、ここ大舞台…。

 ゲームセットの瞬間、コーチは、黙ったまま、手にしていた竹刀のような杖で、ドンと地面を突いた。その地響きが私の足の下からも伝わってきた。何か私まで怒られているような気がした。コーチは、グランドの中にいる選手たちを睨みつけるように見つめたあと、静かに立ち上がり、スタンドを後にした。

 怖かった。とにかく怖かった。