キナコと遊ぶ。
バイクでおそらく最後の遠出になるだろう
紅葉を見に行く。 田舎の道の駅で食事する。 家族にお土産を買う。 お茶の名産地で一面の茶畑を見せてあげる。
喜んでる。
その茶畑でできたお茶を飲む。
僕の仕事用の服を買う。 地味な来年のスケジュール帳のカバーに貼る ステッカーを買いに行く。 二人で車でマックを食べる。
散歩する。
家に帰ってゴロゴロする。
久々に濃厚なデート。 こんな色々やったり行ったのは初めてかもしれない。
彼女も楽しそうだった。
彼女を見ていると、 僕は大人ってやつになったのかなと想う。
てんとう虫を見つけて喜んでいる。 てんとう虫がお寺の床を歩いてて、 小石を見つける。 それで方向転換する。
「あ、てんとう虫や! それは石やに!食べ物ちゃうよ! あ、方向転換した。 あはは。気づくのおそーい!
あ、飛んだ。 あたし五月蝿かった? ごめんねー」
「・・・てんとう虫って耳あるん?」
「あ、どうなんやろ。」
彼女は僕にはない発見をする。
バイクで後ろに乗ってても色々発見しては、 叫んでる。 ギャーギャーいちいち五月蝿い。 カーブでは魔女の宅急便のキキばりに、 僕はトンボばりに、バイクをググッと曲げる。 彼女もググッとする。
「あぶねぇ!」
「あははは!」
喜んでいる。
今日は休みだったからバイクのツアラーが多い。 10台くらい走ると、喜んで、
「見て見て!」
と叫んでる。
「そうだね。すごいね。」
俺はお父さんか(笑
紅葉やイチョウを見つけては喜んでる。 そして、僕にぶつかってくる。
「ねーねー!(ドン)」
「ぐはっ」
すぐに靴紐とける。 すぐに顔が赤くなる。 すぐにすねる。
ガキかほんとに。 でも、愛しく想ってしまう。
地元だから色々説明する。
「へーへー!」 「ほー!!!」 「それで?それで?」
興味を持って聞いてくれる。
・・・嬉しい。
嬉しい。楽しい。
帰り際三十分前から、黙る。 お前はアホか! もう会えやんわけやないやろ!
「だって寂しいんやもん」
車を僕は運転してて、外ばかり見てる。
お互い黙って運転。
ほっぺたを触ると、濡れてる。
「こいつ・・・泣いてるな」
隠そうとしてる。
でも、鼻をずずー!って音は消えない。
寂しい寂しいと連呼。 泣く。 ビェービェー!
また黙る。
俺を修学旅行だと想ってくれている。 俺との時間をかけがえないものだと想ってくれている。
彼女は彼女なりの表現方法でしっかり僕に気持ちを伝えてくれている。
それが嬉しい。
こどもっぽいから 若いから かわいいから
そういうのを越えて、 彼女だからと想える。
きっとアイツなら、俺は何をしてもそう想うのだ。 笑うと僕も笑ってしまうのだ。 僕も元気になれるのだ。 何かが必要なわけではない。 ただ、愛しくて仕方ないのだ。
そういう相手に出会えたのだ。
僕の太ももを枕に泣いたから、 僕のジーパンは涙で染みができた。
「鼻水?」
「ちがうもん!抑えたもん!」
「なら何・・・?」
「よだれ?」
「何故疑問系!!!!」
「あははははは」
お前さっきまで泣いてただろ。 全く。
すぐに僕の手をとろうとしてくれる。 僕がいなきゃダメなんじゃないんだな。実は。
僕はキミがいなきゃだめなんだ。
その「だめ」ってのは、きっとなんつうか、 そういうもので、大事なものだ。
無邪気な彼女。 愛しい彼女。
それでいいのだ。
俺は幸せ者だと想う。
果報者である。
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