〜 女房の呟き 〜
■□■



 姫君は崇高にして憂う

 
もう欲しいものはなにもないのに
誰もがこぞって何が欲しいかと言い募る
あぁ、うるさい…

それでも心優しい姫君は
ほぅと溜息ひとつで、その憂いを誤魔化して
あれを頂戴、これが欲しいわと言い下す

そのお言葉に狂奔する下々は幸いだ
世界のありとあらゆるものを捧げもつ
しかし、姫はけっして首を縦に振らない


深遠なる慈悲のこころ
狂える民は知るや


月を仰いで、姫は憂う
崇高な魂だけが、かの地に還ってゆく



2004年06月13日(日)
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