::聖剣LOM連載・・・戸惑い・3 2002年05月25日(土)

昼食をとりながら、耳を傾ける。



『帝国船沈没の真相は一体何だ?』



それに答えられる者は誰もおらず、ただ彼を落胆させるだけだった。
ただ、一つの光明。


『ザル魚ってのが持つ何かが、海で起こった出来事を映し出んだってよ!』


駆け足でレストランを後にするトーマを目で見送ったすぐ後、パスタを食べ終えたフォークを皿に置いた。

「も一回、ザル魚のトコに行ってみる?」
「ああ、そうだな。」







「有力な情報をつかみましてな?
 沈没した帝国船と、ホテルの幽霊にまつわる事です。」

ホテルの入り口にさしかかった所で聞こえてきた声は、
良く聞き慣れていて、それでいて、どこかヘンな違和感があった。

「帝国船と・・・幽霊?」

二つの単語に反応し、そのまま警部の“協力”の申し出にトーマさんは素直に首を縦に振り、
二人そろってホテルに入っていく。
あたしは、首をよこに傾けたけど。

「どうしたんだ?」
「うーん・・・。警部ってさ、幽霊とか帝国船には無関心だったよね?」
「どっかで何かを耳にしたんじゃないか?」
「でもあの言葉遣いは・・・」

でも瑠璃はうんうん唸るあたしと、ホテルの入り口を交互に見てじれったそうに言った。

「考えるンなら一人で考えてろ。
 オレは先に行く。」

なんたる冷たいお言葉・・・
しょおがないなぁ、と独りつぶやいて、さっさと歩く彼の背中を追った。






「俺は帝国兵士トーマだ。帝国船沈没の原因を調べてる。
 なにか知らんか?」

ラウンジではすでに会話が始まっていた。
間に合ったみたい、と言えば、誰のせいだ、と冷たい眼差し。
そ、そんなに怒んなくたって・・・
考え込むのはクセなんだから、しかたないじゃんか!!

とりあえず邪魔にならないよう、あたし達は隅っこの方へ移動した。

「ボクは何も知らないノね。なれなれしくしないでなノね。」

(やっぱムカツク、アイツ!一体何様なんだっての!!)

「君、君!大金持ちなんだってね。すごいねぇ。」
「・・・・・・」

(・・・やっぱヘンだよ・・・)
(・・・またその話か?)
(だって、警部って普段ヒトをおだてたりなんかしないんだよ!?)
(聞き込みだからだろ?)

「ふふんっち。」
「なんでも、ものすごい宝石を相続したんでしょ?見せてくれないかなぁ?」

(やーっぱヘン!警部、どんなときでもヒトを“君”なんて呼ばないよ!)
(・・・・・)
(・・・ちょっと瑠璃、人の話聞いてる?)

「ど?しよっかな??」
「『青い瞳』っていうんでしょ?海で起きた出来事を全て映し出す、不思議な宝石・・・」

(もっしもーし、るーりくーん?)
(・・・『青い瞳』、不思議な宝石・・・まさか・・・)
(へ?)

「その宝石、見せてくれ!ひょっとしたら、帝国船が沈没した原因が・・・。」
「ヤだ。」

傍で聞いていたルヴァーンシュさんが、ため息をつく。

「私も見たいわ!『青い瞳』。」
「いいよv」

(この魚・・・/怒)


誇らしげに取り出されたその宝石は、蒼く美しく、誇り高く煌めいた。

「すごーいv」

と、同時に瑠璃の核もそれに共鳴するかのように煌めいた。

「やはり珠魅の核!」
「あ、瑠璃!!」

宝石の方へ無我夢中で走っていく。
あたしもいつものように彼の後を追う。
ただ、追いついてしまわないよう、常に彼の後を。

宝石に近づくと、それは今までにない煌めきを見せた。
なにかに、引き込まれていく。


『今回の我々の使命は、最強の火気兵器の入手である・・・』


誰の声・・・?
トーマさん・・・にしては、いくらか声が若い。
ふ、と目を開けると、そこには身近にいた人の姿がない。
もちろん、瑠璃の姿も。
そして自分の身体すらも見えない。

あるのは意識だけだった。


目の前で織りなす悲しい出来事。
帝国船沈没の原因。
だけど、それは故意のものではないことぐらい、言われなくたってわかる。
だって、あれは・・・
『海の魔女』なんかじゃない、ただの心優しい鳥乙女・・・エレだもん。


「そうか、海の魔女にやられたのか・・・」

だから違う・・・と言おうとしたその言葉を飲み込んだ。
いつの間にか現実に戻ってきている。

「なんだかかわいそう・・・」





突然、場の雰囲気が変わった。
今までとは違う、しかしどこか見知った気配・・・。

「ぎょぎょっ!!」

そこにいたのは、甲冑をまとったヒト・・・いや、人ではない。

「我々の死の真相を・・・青い瞳を・・・渡せっ!!」

すかざず瑠璃は反応し、剣を構える。
あたしは・・・

「帝国船の幽霊か!?・・・おい、リタ?」
「わ、わ・・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぅわ!!?」

全く思考回路が回っていなかった。
この目で幽霊にお目にかかるとは、思ってもいなかった。
怖い怖い怖い!!!
もう見たくなんかない!!!
ああ、涙出てきた・・・

気配は消えた。
青い瞳と共に。

そして、あたしの頭に何か、暖かいモノが触れた。

「オイ、もうダイジョウブだ。幽霊はいなくなった。」






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