女房様とお呼びっ!
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イリコが乱心した日のことを順を追って書き記すうちに、 あの日見た不思議な情景が思い出された。
それを見た途端、私は驚き呆れた。不機嫌にさえなった。 後日、それは愚痴のネタとなり、それを聞いて友人は「可愛い〜」と笑った。 その時は「可愛いくないッ」と反論したけれど、今は思い出すだに笑える。 可愛い気も、しなくはない(笑。
・・・・・。
それを見たのは、イベントに出向く前、これから装束を施そうという時だった。 私の前に膝立ちになった奴の体を点検する。 奴には胴の前面、陰部から上の剃毛を義務づけていた。これは今も続くお約束だ。 ただ最初のうちは、腋毛の処理だけは免除していた。 たぶん、仕事上人前で着替えることがあると聞いてたからだと思う。
ところが、奴の性感帯を拓くにつれ、この腋毛がどうにも邪魔になってきた。 というか、私が相手に求める理想のカラダは、頭髪以外完全無毛(笑。 毛があると痛いのよッ、べろが。荒れるのよッ、ほっぺが。 それ以前にあると萎えるのよッ、タチ魂がぁぁ。 てなワケで、その最中に殆どキレる感じで「剃って頂戴ッ」と命じてたのね。
で、その日。ちゃんと剃ってきたかなと腕を上げて腋を晒させた。 おずおずと無防備になる奴の腋の下、そこは私の理想に近く、つるつるになってるはずだった。 疑いなくそのつもりで見た。 見たところが、嗚呼っ・・・私は一瞬絶句して、次にむっとして言った。「ナニコレ?」 可笑しくも何ともなかった。寧ろ腹立たしかった。
・・・・・。
そこには、ひと束の腋毛がちょび髭のように残されていたのだ!(※参照) 他の部分は確かに剃刀をあてたのだろう。ぼつぼつとした剃り跡になっている。 「なんでここだけ残したの?」私は怒ったように訊いた。 その間抜けな光景に正直落胆していた。 奴の性格からすると、絶対ジョークなんかじゃない。本気で馬鹿じゃないかと思った。
「ここだけ、どうしても剃れなかったんです」 私の反応に怖じたのだろう、奴は消え入りそうな声で答える。 バカジャナイノ?ああたぶん、私はそう声に出しまで言ったはずだ。 「こんなの初めて見た」いやホント、そうだもの。 「腋毛処理する女って多いけど、そんなみっともない腋見たことある?」 私だって見たことないやぃ。溜息が出る。
その後は、例によって説教だ。 「どうしてもって、本当にどうしてもなの?やる気がなかったんじゃないの? 自分で見てオカシイと思わなかったの?それで私がイイヨって言うと思ったの? キミはいつもそうだ。適当なところで諦めて。 腋の窪みを剃るのはそりゃ難しいよ。私だってそう。誰だってそう。 でも誰でもやってるッ」
・・・・・。
その日奴に施そうとしていた装束は、上半身をボンデージテープで巻くというもので。 首から巻き下ろしたテープを袈裟懸けにとって、片腕だけを手先まで巻いて、 もう片方の肩と腕は剥き出しにしようと考えていた。 つまり、片方だけにしても腋まるみえ。 「どうすんのよッ」となじりながら、結局そのままで巻いてしまった(笑。
そん時はすっかり不機嫌になってたので、思いつきもしなかったけど、 会場でそれをネタに笑いをとればヨカッタ。くそー。 だって、普通の体勢じゃ腋の下って見えないもんね。 しかも、脇の窪にちんまりおさまったちょび髭腋毛なんてさ。 今更ながらに悔やまれて、かつとっても口惜しいので記事にした次第。 悪しからず、ごめん。
※参照図↓
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