女房様とお呼びっ!
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「・・・あーーーっ、やめてやめてやめてやめてぇーッ・・(絶叫)」
◇
妻と浮気相手に自分の不能をなじられる物語に、彼は激しく反応し、叫び続ける。 ヤメテと言われて、私が止めるはずもなく。ヤメテと身悶える声に更に煽られる。 彼もまた、ヤメテと訴えつつ、止めて欲しい訳でなく。更なる責めを求め続ける。 絶叫の間に間にねじ込むように、彼を貶める語句をねじ込んでいく。凄い緊迫感。
やがて、絶叫尽きたかのように彼に静寂が訪れ、様相を一転させた彼の声が続く。
◇
「・・・オ・・オマエなんかに、ボクの気持ちがわかってたまるかっっ!」
『あはは、わかんないわよ、そんなもん 』
「・・・そうだよな・・・オマエはオンナだからな・・くくっ・・」
『えぇそうよ。女だわ・・・だから?』
「・・・くくく・・・オンナは馬鹿なんだよっっ・・・あはははは・・・」
『うんそうね。女は馬鹿かもしんないね 』
「・・・そうだよっ!オンナなんて、みんな馬鹿で淫乱なんだよっっ・・・(高笑)」
『あはは、淫乱ねぇ・・・確かに、女は馬鹿で淫乱だわ 』
「・・・いつでも、男のちんこハメたがってんだろっっ・・・はぁはぁ・・」
『そうよ。女なんて、馬鹿で淫乱でいつでも男のちんこハメたがってるわ 』
◇
以下、延々とこうした応酬を重ねる。彼の罵詈雑言を、正確になぞって返すのだ。 とは言え、機械的に答えてはダメだ。電話であっても、気は伝わってしまうから。 傷口から噴き出す血を拭うように、丁寧に手当する。痛みをそのまま受け止める。 実際罵られるごと、体が痛くなったっけ。言葉って、それ程の力を持ってるのね。
息詰まるような時間が流れ、彼の血も出尽くしたのか、徐々に言葉が間遠になる。
◇
『もう終わり?(笑)』
「・・・うっ・・・」
『わかってるのよ(笑)』
「・・・な、なにが?・・・」
『今まで、アタシに言ってくれたこと、ホントはアナタのことだって』
「・・・ひっっ・・・」
『オトコなんて、みんな馬鹿だ・・・(くすくす)』
「・・・あぁぁ・・・」
『オトコなんて、みんな馬鹿で淫乱だ・・・(くすくすくす)』
「・・・あっ・・あぁっ・・・」
『オトコなんて、みんな馬鹿で淫乱で女とヤリたがってる・・・(高笑)』
「・・・や・・や、やめてっ・・・」
◇
さっきと同じ時間をかけて、彼が望む痛みを投げ返す。彼は望み通り壊れていく。 壊されたがる者を壊す事に躊躇はない。思う存分壊れてしまえ。私に激情が走る。 彼は再び狂ったように喘ぎ始め、煽られる私に熱が籠もる。境界が薄らいでいく。 ただ、頭だけは恐ろしい程クリアで、冷静に状況を見ている。我ながら不思議だ。
そして、とどめを刺す時がやってくる。受話器を持つ手が汗ばみ、全身が震える。
◇
『オトコなんて(中略)だよね・・・ね?センセイ?』
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