女房様とお呼びっ!
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2002年02月20日(水) オコゼがキレた日 #1

オコゼの主だった頃の私は、今にして思えば、恥ずかしい程にリキみまくってた。
先に、「犬」との挫折で失った、支配側としての自信を取り戻したかったからかな。
徹底した隷属を望む奴との縁を結ぶ自体、その気持ちが招いたのかもしれない。
結果、私は「厳しい主」として振る舞い、奴にそう認識されるのが心地よかった。

実質的に、奴を侍らせとけば、私は絵に描いたような女王様気分を満喫出来た。
奴の所作は、まさに奴が理想とする「完璧な奴隷」のソレだった。見事なほどに。
それでも、再々私が奴を叱咤したのは、その粗野な性向や身勝手さを見かねてだ。
その度、手や足が飛ぶ・・・ま、これも奴の理想としては、望んだ事だったろう(笑

しかし、奴が予定調和的に納得できる「お仕置き」以上の「お仕置き」を課した時、
奴は、キレた。そこに「奴隷」の姿はなく、失望と怒りに震える男が出現したのだ。
それを見て、私ははっきりと恐怖した。けれど、逃げ出したいとは思わなかった。
腹の底から熱い塊が噴き上がり、全身を巡った。凄いエネルギーに身震いがした。

・・・・・。

オコゼに初めて会った日。その幸運に舞い上がりつつ、S女な友達に電話をした。
奴のことをひけらかしたくて、思い入れたっぷりに報告する。凄いの見つけたワ。
一通り話を終えた頃、彼女が問う。「その子、**くんじゃない?」あら、ご存じ?
巷を回遊しているフリーのM魚の情報が、こうして交換されるのは、珍しくない。

「実は、彼、ウチにいたのよ…」彼女が笑う。「結局、逃げ出したんだけどね…」
私は途端に恥ずかしくなり、慌ててしまう。だって、随分自慢げに話しちゃった。
「でも、誰にも仕えたことないって言ったのよ?彼」言い訳がましく、言い募る。
「あぁ、彼、嘘つきなのよ」彼女が再び笑い、同時に、私は邪な決意を胸に抱いた。

「暫く彼の出方を待つけど、決着つける時には協力してくれない?」彼女に願う。
「いいわよ。私も逃げられてるんだし」即座に快諾をもらい、少しだけ気が晴れた。
嘘をつかれた事実が、一転、私の優位を約束する。その事だけで、期待が高まる。
・・・結局、それからふた月ほど、奴の嘘は綻びることなく、無事に過ぎていった。

・・・・・。

さて、奴の本性が「嘘つき」であっても、別段、私には関係のないことだと思う。
私に直接関わりのないところで、幾ら嘘をつかれても構わないものね。しかしだ。
己を信用して貰おうと、「戸籍謄本、お持ちしますッ」とまで息巻いたのだ。奴は。
流石にそれは退けたが、その言の一方で、私の問に嘘を並べたのが腹立たしい。

勿論、SMなんて特殊な関係だから、色々と明らかにしたくない気持ちはわかる。
それでも立場的に、訊かれれば、嘘でも何でも返答せねばと焦る気持ちもわかる。
実際、当初奴が語った身上は、ことごとく嘘だった(笑)まぁ、仕方ないだろう。
だから、私が拘った嘘は、ただひとつ。奴が、SM的な身の上を偽ったことだけだ。

だって、この手の嘘は、回り回って私が困ってしまうんだよね。先の電話みたく。
まぁ、この辺は、実に特殊な斯界の事情だろうな。SMな世間って、結構狭いから。
普通の出会いなら、誰とつきあったかなんて明かさなくていいもの。厄介だねぇ。
その意味で気の毒とは思うけど、奴の嘘は「お仕置き」に値する罪と決めつけた。

・・・・・。

いつ尻尾出すだろう?いつ嘘を暴いてやろう?と、邪な期待を抱いて日が過ぎる。
そんな折、私に3時間もの待ち呆けを喰らわすてな失態を、奴は犯してしまった。
奴としては、当然いつも以上の叱責を覚悟したのだろう。謝罪の言葉さえ失った。
・・・そして私は、この機に乗じて、嘘の分まで「お仕置き」する決意を固めていた。


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