女房様とお呼びっ!
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それは、私がテレクラにハマリ始めた頃の話だから一昔以上前ってことになる。 当時はまだNTTから借りた電話機だったのよ。凄くレトロな感じでしょ?(笑) 留守番電話機やページャーや移動電話を個人が持つなんて考えられない時代。 だから、電話で知り合った人との連絡も自宅の電話を使うしかなかったんだよね。 やっぱ時代のせいかな?加入電話番号を他人に明かす危機感は相当薄かった。
もちろんテレクラ遊びをしてれば、それなりに電話を介した不気味さには出会う。 イタズラ電話も当然掛かってくる。NTTの黒電話だとそりゃぁ容赦がない(笑) 着信拒否も呼び出し音をオフにすることも、まるで出来なかったんだから。 外線との接続もモジュラージャックじゃなくって、壁に直に繋がってる状態で、 まさかチョン切る訳にもいかず、変な電話が掛かるのには甘んじるしかなかった。
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その男とは、直に会う以前から電話番号を交換して、何度かやり取りがあった。 声が良くって語り口もソフトで頭もイイ感じで、好感触を得て、会うことにした。 男はクラウンに乗ってくるらしい。しかも、彼は自称「政治家の秘書(!)」 っと凄い取り合わせでしょ?あはは。あ、クラウンも昔のごっつい形の奴さ(笑) んー、このニュアンス!・・・でも当時の小娘には、まるで想像の外だったのよぅ。
所定の場所に停まった車に前方から近づいて、私はまさに仰天した。 だって、あの広めの運転席にぎっちぎちに詰まった巨漢が見えたんだもの・・・。 そのまま知らん振りしたかったけど、そうもいかず、私は助手席に乗り込んだ。 そうそう、私のテレクラ遊びが長続きしたのは、この向こう見ずな性格のせいだ。 そして訓練された笑顔。「コンバンワー」教訓。こんな時には明るく振る舞え!
どこに行こうかと問われたので、「次の信号を左に・・・」と交差点毎に言い続け、 遂に、クラウンは元の場所に舞い戻ることになる。当然の結果だけどね(笑) そして私はドアから外へ滑り出て、地面に足をつけてから、笑顔で暇請いをする。 「またお目に掛かりましょう。あなたって危険な感じで、少し緊張しちゃったわ」 苦肉の策でそう言った。だってさ、手がクリームパンみたいなのよ?怖いヨ(笑)
その後、彼から電話を貰うことはなかった。ま、ご縁がなかったのね。あっはは。 やれやれと安心して、出来事の記憶自体が薄れた頃、その電話は掛かってきた。 「○○です」ときちんと名乗る。うへー、あの政治家の秘書ぢゃないですかっ。 当たり障りのない返答を述べる。彼も礼儀良く応答する。っと、突然彼が言う。 「どうしてもキミを忘れられないんだ。今夜、10万でどうだろう?」
はぁぁぁ?言葉をなくす私。けれど柔らかな物腰で応答せねばっ。鉄壁の防御。 「あら、一度しかお目に掛かってないのに、忘れられないと仰るの・・・?」 「キミはボクのことを、危険だって言ったでしょう?それが忘れられない・・・」 ナンダソリャ?ただ、彼はあくまでも礼儀正しいので助かる。礼を尽くして断る。 「うんわかった。突然変なこと言って悪かった」潔く諦める彼。ホッとする私。
「ところで、キミの住んでるとこ、『サンライズマンション』って名前?」 交渉を断念して話題を変えざま、彼が言った。ウッ、何故ソレを知っているッ? 私は吃驚して、本当に受話器を持ったままひっくり返ってしまった。漫画の様に。 心臓がバクバク鼓動する。今すぐに大声で笑ってしまいたい。必死に堪える。 「いいえ、違いますけどドウシテ?」努めて冷静な声音で答えるしかない。
だって『サンライズマンション』ってば、最近頻繁に掛かるイタ電に辟易して、 適当に応答する会話の中で使った、架空の名称だったから・・・あー、脱力。 そのイタ電男の会話の冒頭はいつも「これから行くよ」だったんだ。ひーっ。 だから、ある日「じゃ、おいでよ、知ってるでしょ?アタシんち」と返して、 それに「何てマンションだったっけ?」と男が言うので、適当に返事した訳さ。
因みに、当時私は小さなアパート住まいだった。 『サンライズマンション』なんて洒落た所には住めやしないの。お生憎さま(笑)
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