2025年03月22日(土) |
イギョラカップ第3日 東京朝高ー星稜 FC東京−日体大柏 鹿島学園−長崎 |
男子高校生の以前の年間スケジュールは公式戦が4月に始まるので、その前の春休みシーズンに非公式戦の「春の高校フェスティバル」が入るというもので、現在は3月にリーグ戦が開幕するようになっても「春フェス」のスケジュールに配慮したものになっている。 そして今回この点が重要なのだが、以前は高体連の大会に参加できる学校は限られていた。これをざっくり説明しよう。
細かい点は調べてないし、法律用語も使わない。要するに全日制高校、これしか参加できなかった。県立・市立・私学だろうが、進学科、体育科、工業科だろうが、商業高校・工業高校だろうが、単位制高校だろうが、男子校だろうが、要するに全日制高校、一般的に認知されている高校なのだ。
例えば定時制や通信制高校はいわゆる「高校サッカー」とは別に定時制・通信制大会がある。定時制は4年制だったりするし、そもそも学生の年齢もまちまちだ。いわゆる「高校サッカー」は19歳までしか参加できない。なぜならもっと年上の肉体的に成熟した学生のほうが有利だが、まだ未熟なユース年代の大会としての性質を持つ「高校サッカー」には同じ「高校生」というだけで出場資格を認めるのは異論があろう。
現在広域通信制高校というものがある。わかりやすく言えば通常の授業を行わずにプリント学習で学び、たまに通学(スクーリング)する高校だ。自学自習が基本だが、一般に勉強が苦手な生徒が高卒資格を得るために在学することが多い。ここに寮を作って生徒を一か所に集め、サッカーの練習に没頭させるケースがある。高体連加盟の条件には通常の学習数をこなしている、というものがあるが、体育科など、スポーツの練習を授業にカウントしており、今の時代議論が分かれるだろう。このケースでは長野県の地球環境高校が全国に出たが、部内の治安が悪く、やがて高体連を脱退した。茨城の第一学院も同様に全国に出た。なお、第一学院はOBにJリーガー多数だが、サッカー部OBというわけではなく、Jユースの所属した選手がトップチームの練習に参加するようになったとき、Jクラブは昼間に練習するからそれまで通っていた高校は無理になり、第一学院に転学してプリント学習して、そのままプロ契約すれば、第一学院卒業生Jリーガーの誕生というわけである。
高等専門学校(高専)というものがある。中学卒業後入学できる5年制の技術者育成学校である。高偏差値。サッカーよりもロボコンで有名かもしれない。この学校も高専大会というのが実施されているが、3年生までは「高校サッカー」にエントリー可能である。鹿児島高専と近大高専が少し前までの2強だった。近大高専は三重県大会で決勝リーグに進出し、格下に引き分けてしまったために勝ち点が同じで得失点差1の差で全国を逃してしまったことがある。
中等教育学校というものがある。要するに6年制のカリキュラムを組んだ中高一貫校である。高校生年代にあたる学年は4年生5年生6年生と呼ぶ。この高校生年代にあたる学年は「高校サッカー」にエントリーできる。今治東中等教育学校は全国経験がある。意識の低いプログラム類では「3年生」と表記したり、「今治東中学」出身になっていたりする。
さて、ここからが本題に近くなる。戦前、大日本帝国は朝鮮半島や台湾を植民地支配した。韓国や北朝鮮と台湾は日本領だったのだ。こうなると高校サッカー(当時は中学サッカー)にも各都道府県代表校と同じく朝鮮代表や台湾代表を参加させねばならない。朝鮮代表は強く、2回「全国制覇」、つまり大日本帝国の大会を制した。 で、戦中に日本に強制移住させられ、そのまま生活の基盤が日本になった朝鮮人と華人が大勢いた。そのため、日本政府は定住権を認め、彼らのための私立学校が朝鮮高級学校や中華学校である。彼らはいわゆる「高校」に通学していたわけではなかったので「高校サッカー」には参加できなかったが、東京朝鮮高は幻の最強チームと言われ、練習試合で最強だった帝京や習志野と互角の勝負を繰り広げた。また公式戦に出られないため、東京朝鮮高は独自の「春の高校フェスティバル」、イギョラ杯を主宰し強さを見せた。私は見ていないし実際に力があったのかは知らない。観る目があり、なおかつフェアな人はなかなかいないのだ。しかし日本の高校と同等のカリキュラムをこなす彼らが高体連の大会に出られないのはおかしい、という意見が主流派になり、やがて「高校サッカー」参加が可能になった。だが残念ながら東京朝鮮高は全国に出ていない。大阪朝鮮高なら、野洲が全国制覇した時に準々決勝で当たり引き分けてPK戦で敗退するなど強さを見せたが、東京朝鮮高は昔の監督が凄かっただけ、という話もある。なお、朝鮮高同様にエントリーできるはずの中華学校は高校サッカーにエントリーしていない。
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長くなった。そういうわけで歴史的にも意義があり、現在でも東京都最大の高校フェスティバルであるイギョラカップを観戦した。現在東京都3部リーグの東京朝鮮高の現状も見たかった。相手は全国制覇経験もある星稜である。ちなみにイギョラ杯はグループリーグプラス決勝トーナメント。その敗者トーナメントである。
イギョラカップ 敗者トーナメント 東京朝鮮中高級学校−星稜高校 3月22日 東京朝鮮中高級学校グラウンド 人工芝 晴
東京朝高 十二 十一八番二十九番 六番 誰々四番三番二番 二五
星稜 七番十一 十番二三六番十六 二番三番五番四番 誰々
星稜は大柄なセンターフォワード11番を軸に小さな7番がちょこまかと動き下がってボールに絡むが、前線では身体をこじ入れられずに脅威にならない。一つにはそれだけ東京朝高のマークの受け渡しがしっかりしているということだ。23番は展開したいし見えてはいるのだがキック精度が足りない。6番もそう。10番はテクニックを見せたいタイプだが効いてない。セットプレーの精度はある。
試合は星稜が圧倒的に回す。しかし星稜もおそらくツエーゲン金沢ユース相手には厳しい。数年前の直接対決を観たときには差が大きく、何より当の星稜の選手から「支配されるのは分かっていただろう」と声が上がるくらいだったのだ。たぶん今では差が広がっている。これに対し東京朝鮮高が引いて守るしかないが、強度も足りず、きれいな人口芝ピッチを持っているのに、パスを走らせられない。前半0−0で済んだのは東京朝鮮高の力の証と言える。しかし星稜との差は明らかだった。
後半立ち上がり、星稜が右クロスから4番がニアでヘッドで逸らして先制。15分、左クロスを8番ボレーで2点目。さらに3点目も入り、東京朝高は後方でミスして4点目。結局0−4で星稜の圧勝だった。
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第2試合はイギョラカップの準々決勝、つまりグループリーグを突破したチームだ。レベルは第1試合よりも高い。
イギョラカップ準々決勝 FC東京U−18−日本体育大学柏高校 3月22日 12時 東京朝鮮中高級学校 人工芝 晴
FC東京 七番誰々 九番五番十二十番 三番十五二二二番 誰々
日体大柏 十一七番二十 五番二五 誰々二二十七十五十八 誰々
東京は大柄。右センターバック22番も大きいが、左サイドバック3番はもっと大きい。2番はガンガン上がる3.5バック。両サイドはどんどん仕掛ける。対する日体大柏は5−2−3。私が知る限り高校サッカーでこれをやり始めたのは近江だが、がっちり5バックで相手の攻撃を受けてじっくり攻める。一定の技術のあるチームに向いている。日体大柏もしっかり繋げるチーム。互角とは言わないが、いい勝負になっていた。すぐピッチを去ったので観ている間は得点がなかったが、結局日体大柏が勝った。
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イギョラカップ 鹿島学園高校−V・ファーレン長崎U−18 3月22日 13時半 東京朝鮮中高級学校グラウンド 人工芝 晴
鹿島学園 四七九五 三九百三百四百十五 百六百十八百十六九三 誰々
長崎 十一 十四七番八番 誰々二番五番三番六番
こちらも準々決勝。つまりグループリーグ突破の両チーム。 前半途中から見て、長崎は退場者でも出しているのでは?と思うほど守勢だった。 後半は長崎がよい。
後半のフォメ 十四十一 十八八番 二二七番六番 二四五番三番 誰々
過激な1ボランチの3−5−2。バックラインは体格に欠けるがそれ以外は抜群に良い。特に5番は相手を見て一発で仕留め、競り方もうまく、身体能力もリーダーシップもある。180センチ無いように見えたのでプロは厳しいかもしれないが、大学サッカーなら十分やれる。というか関西学生リーグにぜひ来てほしい。長崎3バックは最高級の指導を受けて育てられた才能だ。交代した選手含めてコメント。10番、鋭いパスを出してFWに当てて飛び出す現代のトップ下。9番13番、ムービング系FW。流れながら体を生かしてポストプレー。何でもやってくれる。3番。素晴らしいフィードがある。24番。下級生?レフティ。ミスを連発して5番の信頼を失いパスが来なくなったが、守備力自体はある。18番。レフティでパスがいい。7番。丁寧なビルドアップが光るが、カウンター時の素早い判断もいい。 鹿島学園は守勢だが秩序を保ち、崩れない当たり強豪の高体連である。
結局1−1でPK戦で長崎が準決勝に進んだ。
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