サッカー観戦日記

2012年10月28日(日) 高校女子選手権関西大会準々決勝(全試合観戦記)

高校女子選手権は昨年度まで夏場に開催されていた。今年度から高校総体の種目になって、この大会は冬場に移行された。当初の発表だと、以前の32校参加から16校参加に変更されたように見えたが、無事今年度も32校参加する。関西は本来3枠だが、日ノ本が高校総体で優勝したために4枠に増える。関西大会は8校参加でシード校4校とその他4校の対戦となる。関西で高校女子サッカーを強化している高校は少ないので、点差がつくであろうかとは予想していた。シードは日ノ本、大阪桐蔭、大商学園、精華女子の4校である。

会場は久しぶりの希望が丘。野洲駅からバスが出ていて、普段は歩く距離だけど、4試合観戦なので行きはバスを使う。スタンド(といっても椅子はない)が開放されておらず、交渉してあけてもらう。かといってバックスタンドの芝生席はきつい雨の中座るわけにはいかない。つまりこの時点で4試合立ち見観戦が決まったことになる。試合は35分ハーフ。


高校女性選手権関西予選 
大商学園高校−有馬高校
9時30分 希望が丘陸 ピッチ並み 雨


大商           有馬
−−−十四−−二五−−− −−−十番−−二十−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−十七−−−−−
十三−七番−−十番−九番 九番−八番−−十九−七番
二三−二番−−十七−三番 −−三番−二番−五番−−
−−−−−二一−−−−− −−−−−一番−−−−−

立ち上がりから大商学園が両足を駆使したパスワークで圧倒。どちらの足に出すが意識して最適の足でキック。ミドルパスもぶれず、レベルの違いを感じる。対する有馬がまんマーク気味にがちがちに守る体勢だ。8分、大商、右CKに13番がヘッド、決まって1−0。大商は利き足が分からないくらい、両足を多用する。12分、10番が左足で展開、13番が快速で突破も逸機。19分、大商・7番のスルーパスに14番がGKの脇を抜く。2−0。更に右サイドバックの3番が左足で逆サイド裏のスペースへロングスルーパス、通らず。3番が右利きのはずだが、左足のキック精度ありすぎだろう。14番がドリブルで簡単にちぎる。小技も上手いし圧倒的な存在感。結局前半は2−0で終了。有馬は組織だった守備が光ったが、キックやトラップのミスが目立ち、全く攻め込めない。あきらめない守備は見事だが、攻め手がなくては勝てない。

ハーフタイムで有馬20番→4番。そのままFW。37分、大商左スローインから13番が中に切れ込みカーブをかけて右上に叩き込む。3−0。40分、大商25番→5番。46分、有馬7番→13番。大商14番、足の裏を使ったドリブルが見事。50分、14番、17番、23番→18番、19番、24番。18番がLB、19番がFW、24番がFW。61分、大商ミドルを有馬GKがはじき、9番が押し込む。4−0。5番はスペースへ流れてボールを呼び込むのが上手い。7番は素晴らしいキック力。中盤のキーマンですな。19番のドリブルもいい。69分、13番みどるをGKセーブするが、19番蹴りこむ。5−0。結局5−0で終了。

全国トップレベルに5点差以内負けなら、高い競技力を持っていると私は見ている。関西で言えば日ノ本に5点差以内負けなら全国でも戦えるし将来が楽しみだ。大商は日ノ本に準じるレベル。だから5点差負けは問題ない。ただ有馬は決定機を奪えなかったし、GKの好セーブがなければ、もっと失点していた。戦い方も守備的過ぎた。先制点を奪われるまでは当然の策として、失点してからも攻め手がないのは、ただ大量失点を恐れているだけに見えた。こういう5点差負けなら厳しい。大商は全国行き。ベスト8は狙えるだろう。



高校女子選手権
和歌山北−大阪桐蔭
11時20分 希望が丘陸 ピッチ並 雨


和北           桐蔭
−−−五番−−十番−−− −−−七番−−十番−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
七番−四番−−十一−九番 十五−六番−−八番−十一
二番−六番−−八番−三番 四番−三番−−二番−五番
−−−−−一番−−−−− −−−−−一番−−−−−

0分、桐蔭6番右FKを10番が決める。0−1。10番が10番が少ないタッチでセンスあるプレーをする。8番、和北、中盤でカット、8番から右スペースに飛び出した11番がGKの位置を見て強烈ロングを右上隅に決める。1−1。和北はフラットな3ラインを敷き、ゴール前で常に数的優位を作り、1対1の守備も良く練習しているようで、弱いけど無抵抗に抜かれるということはなく、2人目が良くカバー。カウンターの形も持っていて、桐蔭ゴール前に良く運ぶ。10番はなかなかの好タレント。簡単なパスをつなぐ技術もあるので、簡単に奪われて攻められっぱなしということもない。監督の指導力の高さを感じる。一方でサッカー経験が少なそうな選手が多く、限界も感じる。カテゴリーは違うが、山形大女子サッカー部に似ている。3番の守備はまずまず。一方桐蔭はなめて入った感がある。23分、4番→23番。5番がLB、23番がRB。和北11番は自陣で危険なスペースを突っ込んで守る等、サッカーセンス抜群。30分、イライラしていたであろう桐蔭ベンチが怒鳴り始める。5分間怒鳴りっぱなしである。34分、桐蔭9番の左クロスに10番ワントラップで切り返し左足シュート、1−2。34分、桐蔭8番ミドル、右上に決まる。桐蔭ベンチ「5秒で奪え」。ガンガン前から行き。和北は動揺したかのようにプレーが消極的に。37分、右パスを10番がとめて右隅に決める。1−4。前半終了。

残りわずかで大量失点なんて精神的に脆すぎる。苦戦から建て直してこてこそのサッカーではないか。山形大は粘りがあったが、高校生と大学生の精神力の違いか。

後半開始。桐蔭ベンチはおとなしく戻っている。37分、桐蔭左パスに10番左足シュート、決まって1−5。39分、10番、左で受けて中に切れ込み決める。1−6。桐蔭15番→9番。11番の突破力は見事。和北がゾーンが崩れてきた。つまり攻撃に行きたい前線と、守備的に行きたい守備陣との間で意識のズレが出てきて、ブロックが空き、守備で数的優位を作れなくなってきた。鍛えられているとはいえ、1対1で守れるほどの守備能力はない。ラインを上げるだけの組織力もない。個人能力勝負となれば桐蔭である。43分、左クロスに大外の11番がコントロール、遅れ気味に飛び込むDFをかわし決める。1−7。45分、23番の右クロスを大外で9番ボレー。1−8。7番→16番。47分、左クロスに10番中フリーで決める。1−9。10番は恐ろしく冷静で周りが見えている選手。53分、ラインの裏を取って11番が決める。1−10。60分、右CKを誰かが決める。1−11。26分、5番→14番。63分、右CKに8番ヘッド。1−12。69分、6番の左CKが直接ゴールイン?1−13。70分、11番ループ。1−14。結局桐蔭が大勝。結局和北は切れてしまった。前半34分以降の落胆と集中力の欠如が無ければ、と思うが、これは和歌山の中学生年代の育成の課題だろう。チームとしてはめいいっぱい戦ったとおもいますよ。




第三試合だが、空が暗いため、キックオフ時間が早まった。予定の13時10分にスタンド入りしたときには既に5分以上経過して日ノ本が3点取っていた。夏の高校総体日ノ本は勝利が固い。したがって登美が丘がいかに健闘するかが鍵だったが、どうも経験者が少なそうで(近畿大会プログラムによると4人だけ)、しかも和歌山北のようなしっかりした指導も行なわれていないようだ。引いて守るだけで、しかも数多くあったキックオフ時には2トップ以外は20m後方にいてボールに関わる意思すら見せず、2トップが敵陣深く蹴り込むだけ。引いて守る守備もボール保持者に激しく寄せることもなく、担当ゾーンにたたずんでいるだけ、という感じである。これでは守れるものでもない。

高校女子選手権
日ノ本−登美が丘
13時10分 希望が丘陸 ピッチ並 雨

日ノ本          登美が丘
−−−十四−−十二−−− −−−十四−−九番−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
八番−六番−−二一−十一 十一−十番−−七番−五番
十八−二番−−二四−十七 二番−六番−−八番−三番
−−−−−二十−−−−− −−−−−一番−−−−−

時計計時は到着後からの時間とする。7分、12番ミドル。4−0。12分、12番左シュート、5−0。13分、18番のロングループ、6−0。14分、左クロスに11番ヒールで決める。7−0。ここで11番、21番→25番、12番。15分、15番フリーシュート、8−0。18分、スルーパスに14番、左隅へ。9−0。19分、8番右クロス中にこぼれ8番自ら決めて10−0。22分左CK、ファーで14番度フリーヘッド。11−0。23分、6番ミドル、12−0。

日ノ本では14番が素晴らしい。体格があって俊敏性もそこそこあり、足元に収まる。登美が丘の守備が甘いこともあって何人に囲まれてもキープできる。

さてーハーフタイムで23番、13番、19番イン。2番、6番、8番アウト。3−4−3に組みかえる。

−二三−−十四−−十二− 
−−−−−−−−−−−− 
十三−十九−−十五−二五 
−−十八−二四−十七−− 
−−−−−−−−−−−− 

41分、23番シュート、こぼれ14番蹴りこむ。13−0。後半日ノ本はあまり機能せず。こういうゲームは負けている方が体力も集中力も尽きて前半以上に点が入るものだ。恐らく日ノ本ベンチもハーフタイムに20点以上取るといった指示を出している。しかし中で繋げるのにサイドに出していては大回りだ。一直線に中から崩した方が早かろう。日ノ本は本来男性監督だが女性スタッフがベンチから指示を出している。しかし修正ならず。50分、ポストプレーから14番シュート。14−0。23分、登美が丘14番→4番。
68分、ミスを奪い13番ミドル、15−0。70+2分、15番、ミスを奪い決める。16−0。結局試合終了。

登美が丘はキックオフ直後以外はほとんど敵陣に入れなかった。これでは勝負にならない。奈良はクラブチームでプレーする選手が多い状況なので、高校サッカー部はこれからということなのだろう。




第四試合はこの日一番の好カード。精華女子は付属中学が今年クラブ勢をなぎ倒し関西女王に輝いたチームで、丸ごと持ち上がれば、関西はおろか全国でも屈指の強豪になるのではないかと期待している。春の段階ではまだ力不足だったが、全国を経験することで化けることはよくある。対する八幡商(八商)も伝統校なのできっちり計算のできるサッカーをする。

八商           精華
−−−二三−−十番−−− −−−−−十七−−−−−
−−−−−−−−−−−− 十番−−−八番−−−九番
六番−十五−−二二−八番 −−−二十−−十四−−−
十八−十一−−五番−十四 十八−二一−−十九−三番
−−−−−一番−−−−− −−−−−誰々−−−−−

7分、精華、ループパスに20番が3列目から飛び込み、好トラップから決める。0−1。八商はラインコントロールして精華の自由が奪おうとするが、3列目からの飛び込みは捕まえ切れなかった。14番は確実なキープ力、20番は左利きで展開力がある。精華はショートパスとロングパス、パスとドリブル、インサイドとアウトサイド、足元とスペース、緩と急とバランスが良く、絶えず変化をつけるレベルの高いサッカー。突出した選手だとか身体能力とかはないが、非常に理想の高いサッカーで観ていて楽しい。八商も良く鍛えられていて、ラインを押し上げ、攻め気を失わない。しかしここの技術差はいかんともしがたい。13分、精華、8番から3番がオーバーラップ、クロスに20番突っ込むがDFカバー。精華10番はいいシュート持っている。28分、3番から20番が裏をとり1対1、右へ決めて0−2。またもラインの裏を3列目。しかしラインを上げずに前線を自由にしたらもっと失点しただろうし、やむをえないところだ。八商の10番はファンタジスタで、浮き球をダイレクトヒールなどトリッキーなプレーを見せる。前半は0−2で終了。

40分、八商10番はファンタジックなパスを見せる。41分、精華左クロス、17番?ボレー、決まって0−3。45分、左クロスをポストプレーから17番シュート、0−4。精華は2列目が次々にポジションチェンジ、かく乱を図る。精華9番、8番→7番、11番。7番は右ハーフ。更に10番がCBに入り19番がボランチに上がる等色々試している。58分、18番、左シュートが右隅に決まる。0−5。19番再びCBへ。17番トップの2列目が7番、11番、20番、ボランチに10番、14番。62分、3番→13番。67分、20番、17番→22番、16番。結局0−5で終了。

精華は今年は全国では厳しいかもしれないが、魅せる事はできるはずだ。実力的には関西4番手だが、要求レベルは高い。常盤木のトータルなサッカーともメニーナの技巧的サッカーとも違う。身体能力は並だが、戦術眼を極限に高めたパスサッカーを期待できそう。守備は甘いが、全国で揉まれているうちに、激しい守備もできるようになるでしょう。


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T.K. [MAIL]