2010年10月25日(月) |
雑文・サルベージ計画「大穴熊戦法」 |
以下の分は02年11月に書いたものです。今後しばらく、その時期に書いた観戦記等をサルベージしていこうと思います。タイトルに「サルベージ」と入れるので、サイト内検索をしていただければ、分かるようにします。当時のネタは分かりにくくなっているので、注釈をつけました。大熊U−19代表が奮戦している時期の話です。ではどうぞ!
戦いにおいて人は派手な攻撃にばかり目が奪われるものだ。しかし古来より守備の重要性を説く逸話は数知れない。「孫子」には「戦いに秀でた者は、まず守りを整えてから勝機を待つ」とある。サッカーとは攻撃である、と主張したクライフはサッカーとは守備である、と主張するクレメンテを凌ぐ実績を築けず、圧倒的な自軍の戦力とレアルの長期低迷とライバルの自滅により辛うじて結果を残すにとどまった。(*1)「ザックとは違うのだよ、ザックとは!」(T.K.訳)(*2)という勇ましい攻撃サッカー宣言をしたテリム(*3)は守備的な前任者(*4)ほどの結果を出せないままあえなく解任された。
「ヒカルの碁」人気でちょっとしたブームになった囲碁に押され気味?の将棋。海外でサッカーはよくチェスに例えられるが、(*5)同種のゲームである将棋もまたサッカーと共通点はそれなりにある。将棋は自分の王を守りつつ相手の王を取るゲームで、様々な守備陣形があるが、もっとも硬い形が「穴熊」と呼ばれる陣形である。王を自陣の隅に置き、その周囲に駒を固める。素人目にも硬い守りであることが薄々わかるだろう。時間をかけてじっくり守り、それから攻撃に移ろうという、いわばカウンター狙いの戦法である。多少形を変えているが下の例では強力な大駒である角までもが守備に効いている。
|歩|歩|歩|歩 |香|銀|金|角 |王|桂|金|
さて先頃革新的な穴熊戦法が考案された。仮に「大穴熊戦法」と呼ぶことにしよう。
―――FW――FW――― ―――――MF――――― CB――CB――CB――CB ――角――CB――CB― ―――――王――――― (*6) 穴熊戦法は守りが堅い分思い切った攻撃に移れる、という特徴があるが、改良発展型の大穴熊戦法では組織的な攻撃の大半を放棄し、一発のスルーパス、偶発的なクロス、超強力なFWの単独攻撃、といった斬新な発想を取り入れたものである。クライフの超攻撃的サッカーには圧倒的な戦力が必要であるように、超守備的サッカーにも圧倒的な戦力が必要である、との噂もあるが、「よく吠える犬は噛まない」(*7)というインドの諺もある。考案者は無責任な周囲の声に惑わされず常識を超えた新戦法の更なる追求に邁進してほしい。
*1 私はクライフをあまり評価していない。娯楽性はともかく、バルサの圧倒的な戦力で、ラ・コルーニャと互角の優勝争いに持ち込まれた程度の指揮官で、、クレメンテとは比較にならない、と思っている。
*2 もちろん『機動戦士ガンダム』のランバ・ラルの「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」から。新監督が就任する際は前任者との違いを強調するものである。
*3 ファティ・テリム。ザッケローニの後任としてミランを率いた。超攻撃的サッカーで有名。
*4 異論あるかもしれない。ザッケローニはウディネーゼで攻撃的なスタイルの構築に成功したが、ミランで成功したとは思わない。ウェアを筆頭に前線からの守備を怠り、戦力の割には守備的だったと思う。
*5 サッカーの形容として「芝の上のチェス」という表現がある。
*6 穴熊戦法と大熊監督のサッカーをかけている。大熊監督はCBの選手を何人も並べる超守備的スタイルをU−19代表に浸透させた。フォーメーション図の「角」は角田誠を示している。
*7 当時聞いていた大阪のFM局COCOLOの番組にインド人パーソナリティー、サニー・フランシスの、「サニーどんぶり」?というものがあり、そこで紹介された諺。無責任な発言をよくする人には、得てして何の権限もない、という意味。
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