dust box
akane



 あんなこと言わなきゃよかった

あんなこと言わなきゃよかった

雨あがりの濡れたアスファルトを
じんわりと踏みしめて
私の背中は街灯と車のライトに照らし出される
カサの軸が定期的なリズムを打って
月があとからついてくる

あんなこと言わなきゃよかった

後悔の家路は
水分の多い空気の中で
ゆっくりとすすむ

あんなことを言う自分がいやで
どうしようもなくなって
このまま「ただいま」を言わずに
消えてしまえたらいいのにと
思いながら
それでも歩みを止めない

ありふれた日常の帰り道が
とてつもなく優しいことを知っている

ありふれた優しさを
どうして私は持てないのだろうと
自己嫌悪は少しずつ胸に蓄積されていくばかり

あんなこと言わなきゃよかった

そればかりで
玄関にたどりつく



2003年10月31日(金)
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