凪の日々
■引きこもり専業主婦の子育て愚痴日記■
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夏になるとミシンを引っ張り出す。 手芸品店で買った安い布を引っ張り出し、子供の服を縫う。 簡単なウエストゴムのスカートとか、ファスナー無しのゴムだらけのワンピースとか、そんなのしか縫えないけれど。 頭を空っぽにしてただ手順どおりに作業をしていけば、時間さえあればいつかは出来上がる。
ミシンを動かす時の空っぽの頭がいい。 「何縫ってるの?」とアイが嬉しそうに聞いてくる。 「アイのスカートよ」と言えばもうご機嫌だ。 ミシンを動かしている間はアイも近寄らない。 邪魔しないように大人しく自分で遊んでくれている。
でも別にアイの為に縫っているわけじゃない。 この、ミシンを使っている間は家事放棄。 母業はやりませんよ、という意思表示。 だって私は今「子供の為に服を縫っている」んですもの。 忙しくて他の事までできませんワ。 そういう正当な理由を振りかざして、自分の殻に篭もっているだけ。 空っぽの頭と空っぽの心でただ手を動かしているだけ。
出来上がったスカートを、アイは嬉しそうに着てみせる。 ピンクのそれを「お姫様のスカートみたい」と喜ぶ。
私は空っぽの心でその姿を眺める。
私の心がどうであれ、アイの心が喜びで満ちればそれでいい。 「子供の頃、お母さんがよく服を縫ってくれた」と暖かい思い出になって残ってくれたら良いと思う。 私の空っぽの心なんか気付かないままで。
暁
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